結婚を考えている相手に借金が発覚したら、少なからずショックを受ける人がほとんどでしょう。結婚式や婚約指輪の費用、将来子供ができたときの教育費など、結婚にはさまざまなお金が必要になることを考えると、「このまま結婚してもよいのだろうか」と不安を覚えたり、結婚を両親に反対されたりするなど、困難が生じるかもしれません。本記事では、Aさんの事例をもとに、婚約者に借金が発覚した場合の解決方法について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。

マッチングアプリで出会った婚約者に多額の借金が発覚…

相談者Aさん:26歳 正社員

Aさんの婚約者:26歳 正社員

相談内容

先日、プロポーズを受け婚約したのですが、彼のお金のことで問題があり、相談に来ました。彼とは2年前にマッチングアプリを通じて出会い、付き合い始めました。住んでいるところが近かったので、半同棲のような形でお互いの住まいを行き来していました。

プロポーズから数日後、婚約指輪を買おうと、彼と2人でジュエリーショップへ行きました。しかし、私が指輪を選んでいても、彼はなんとなく上の空なのです。結局その場では決めず、店を出ると彼はこう言いました。

「ごめん。指輪買えないかも」

てっきり私が気に入ったデザインの指輪が高かったという意味かと思い、

「あ、婚約指輪ってあんなに高いんだね。ちょっと背伸びしすぎなお店だったよね。違うお店にも行ってみよう」そう返しました。しかし、彼はこう続けます。

「いやそうじゃなくて。実は、いまいろいろと借りてて……」

私はショックを受けました。彼から詳しく話を聞くと、300万円の借金があるそうです。普段からお金の使い方が荒い感じはしていましたが、まさか借金をしているとは思ってもみませんでした。自分でもどうしていいかわからず、混乱してしまったため、両親に相談したところ、結婚に猛反対されました。私自身も、正直不安です。

でも、彼のことは大好きなので、この話を聞いても結婚したい気持ちに変わりはありませんでした。これからどうすればいいでしょうか?

Aさんと婚約者の収支

Aさんの収支

手取り収入 22万円

生活費 10万円

家賃 8万円

貯蓄 4万円

婚約者の収支

手取り収入 20万円

生活費 不明

家賃 7万円

返済額 約4万円

Aさんが婚約者に確認した借入れの内訳は下記のとおりでした。

借金の内訳

複数の消費者金融からの借入れ:100万円

クレジットカードのリボ払い:100万円

両親からの借入れ:残額100万円

複数の消費者金融とクレジットカードのリボ払いの返済、両親にもお金を借りていました。彼は借金の内容は把握していましたが、それ以外の支出は毎月どのくらいなのか把握していません。

Aさん曰く、「お金については話しにくい部分もあり、これまでお互いに自分の状況を話すことはできていませんでした。なんだかんだできちんと管理できているんだろうなと。でも、この状態を見ると、このままで大丈夫なのかと不安になります」と言います。

総額300万円の借金…借入れのきっかけは?

「多重債務者対策を巡る現状及び施策の動向」レポート内の[地方自治体に寄せられた「多重債務」に関する相談の概況]によると、相談者の借金をしたきっかけは低収入・収入の減少等が一番多く、次いで商品・サービスの購入となっています。

婚約者の手取り月収はおよそ20万円ですが、高級ブランドの洋服や装飾品に目がなく、つい欲しいものがあるとその都度借入れをして購入を繰り返し、借金を増やしてしまったのでした。

それでも結婚したいと考えるなら…CFPからのアドバイス

1. まずはAさん両親を説得するために借金を完済する

Aさんのご両親は、婚約者に借金があることを不安に思い、結婚に反対されています。また、お金に対する考え方についても疑問を抱かれていることでしょう。まずは借金の返済を目指しましょう。完済することでご両親の不安を取り除くことが最優先です。

借金にもいろいろな理由があります。たとえば資格取得等、スキルアップの費用のためにお金を借り入れるのか、ギャンブルなどの浪費による借入れなのか……。婚約者の借入れの理由は、どちらかというと後者のような浪費に近い理由です。浪費のための借金は、早急に返済に着手すると同時に、本人の意識も変える必要があります。

「意識を変える」とは、「お金に対する価値観を変える」ということです。借入れを繰り返すと、次第と借り入れることのできる限度額が自分の貯金額のように思え、限度額のあいだなら借入れを繰り返しても大丈夫という感覚に陥りがちです。これでは、いくら借金を返済することができても、欲しいものが出てきたら同じことを繰り返してしまいます。完済をすると同時に、借入れに対する意識を変えることが重要でしょう。

2. 借金の内容を把握する

現在の借入れに対する返済額は、これからいつまで、いくらかかるでしょうか。返済計画をしっかりと立て、目的意識を持って返済に取り組みましょう。

返済期間中にかかる支払い利息にも注意すべきです。婚約者の返済額のうち消費者金融とリボ払いの返済金額に対する利息を計算したところ、定められた期間、毎月返済を行なった場合にはおよそ150万円となりました。

このままではかなりの利息を支払うことになります。できることなら、返済を繰り上げて行うことで支払利息を抑えながら返済を行なっていきたいところです。

3. 借金によって今後の結婚生活にどのような支障が生じるか考える

婚約者の場合、現在の生活費に加え、毎月およそ4万円の返済を行い、ときには繰り上げ返済と両親への返済をしながら新婚生活を送ることになります。返済中は、返済資金をつくるために多少の制約が出てくることも考えられます。

・結婚式を挙げない

・新婚旅行は近場にする

・新居への引越しを考えず、現在のどちらかの住まいに2人で住む

・外食を控える

・子供の計画があるなら、借金を返済しながら教育費を十分に払えるかどうか考える

・住宅購入を検討するなら完済後(住宅ローン審査が厳しくなる)

上記はあくまでも一例ですが、お金を節約するとなると、さまざまなイベントや生活環境に影響をおよぼすこととなります。ときにはAさんのイメージしている結婚生活とかけ離れてしまうこともあるかもしれません。節約は、生活水準に大きな影響を与えることを認識しておきましょう。

まずは借金完済が最優先…しかし肩代わりはNG

結婚したあとにお金の価値観が合わないことがわかると大変です。そういう意味では、Aさんは結婚前に相手のお金に対する意識を知ることができました。

ただ、返済が最優先だからといって、婚約者の借金を肩代わりするといった行動は控えなければなりません。ここは心を鬼にして、婚約者の努力を見守りましょう。借金を完済したあとに入籍することを検討してもいいかもしれません。

少々時間はかかるかもしれませんが、これからの結婚生活のほうが何十年と続きます。お金の意識をいまのうちに変えることで、将来の暮らしをよりよいものにしていただきたいと思います。

参考金融庁/消費者庁/厚生労働省/自殺対策推進室/法務省多重債務者対策を巡る現状及び施策の動向

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表

(※写真はイメージです/PIXTA)