
謎めいた「フェアリーサークル」は、 なぜかそこだけ植物が生えないため、地面に無数の円形パターンが現れる現象のことだ。
これまで、アフリカのナミビアとオーストラリアの乾燥地帯でしか見つかっていなかったが、実は、世界中に膨大な数が出現していることが明らかになった。
スペインの研究チームがAIにフェアリーサークルを探させてみたところ、3大陸15カ国、263カ所でそれとよく似たパターンが見つかったと、『PNAS』(2023年9月25日付)で報告している。
【画像】 謎めいた乾燥地帯の円形パターン「フェアリーサークル」
フェアリーサークルとは、乾燥地帯の砂漠や草原に生えている草が、円形にハゲ上がってできる不思議なパターンのことだ。
ナミビアの「ナミブ砂漠」に出現するものが最も有名だが、 2017年に西オーストラリアのアウトバック(内陸に広がる砂漠を中心とした地域)でも発見されている。
これができる原因はよくわかっていないが、 主に2つの仮説が提唱されている。一つは、シロアリが原因であるとする「シロアリ説」、 もう一つは植物が自分の力で円形に生えるとする「植物自己組織化説」だ。
・合わせて読みたい→地面を覆いつくすほどの無数の輪。西オーストラリアで、フェアリー・サークル(妖精の輪)が発見される。※トライポフォビア注意
AIで調査したところ、3大陸15カ国で似たパターンを発見
今回のスペイン、アリカンテ大学をはじめとする研究チームによる新しい調査では、人工知能(AI)にナミビアとオーストラリアのフェアリーサークルを観察させ、同じようなパターンが他の地域にもないか探させた。
AIが数カ月にわたって世界中の画像を精査したところ、意外にもフェアリーサークルはかなり広い範囲に出現しているらしいことが明らかになったのだ。
それが見つかった場所は3大陸15カ国、じつに263カ所にもおよんでいた。
新たにフェアリーサークルが見つかった地域は、西サハラ砂漠、サヘル地域(サハラ砂漠南部の半乾燥地域)、アフリカの角(アフリカ東部にある、紅海に向かって角のように突き出た地域)、マダガスカル島、中央・西アジア、中央オーストラリアなどだ。

フェアリーサークル出現地域の共通点
別のAIによって、こうしたフェアリーサークルが出現する地域の環境や生態を分析させてみたところ、いくつか共通点があることが明らかになっている。
それによると、フェアリーサークルが出現する地域は、地面が主に砂でできており、栄養が乏しい。また気候的には高温で、ある季節になると雨が集中してふるという特徴がある。
さらに、いくつかの地域ではシロアリの巣があるという共通点も見つかっている。
だが研究チームによれば、世界的に見れば、シロアリがこのフェアリーサークルを作った可能性は低いと考えられるそうだ。
確かにナミビアのような地域では、 シロアリが重要な役割を果たしている可能性はあるが、フェアリーサークルの形成にはもっと重要な要因があるとのこと。
実際、昨年には、シロアリ説よりもむしろ自己組織仮説の方が有力であるという研究が発表されている。
まだ確定には至らないが、今後の研究でその謎が明らかになるかもしれない。
References:CSIC contributes to deciphering the enigmatic | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo

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