公益財団法人旭硝子財団(理事長 島村琢哉、所在地 東京都千代田区)は、今年で32回目を迎える、ブループラネット賞(地球環境国際賞)の2023年の受賞者記者会見を10月3日(火)に経団連会館カンファレンスにて開催いたしました。

会見当日は、本年度の受賞者である、海洋のマイクロプラスチック汚染を発見し、その生態系への影響を解明した英国の3人のグループからリチャード・トンプソン教授、ペネロープ・リンデキュー教授と、もう1件の受賞者、世界の大規模災害に関するデータインフラを構築したベルギーのルーヴァン・カトリック大学のデバラティ・グハ=サピール教授から受賞のご挨拶をいただきました。なお、英国のタマラ・ギャロウェイ教授は都合により欠席となりました。

受賞への想いや自身の研究について、英国の3人のグループのリチャード・トンプソン教授は「私がプラスチック問題に関心を持ったのは海洋生物学を学んでいた学生時代であり、この研究はまさに私の人生を賭けた30年以上のジャーニーになります。国連が海洋プラスチック問題に取組む初の国際枠組み形成に合意した今、プラスチックをサステナブルな形で利用していくためには、グローバルレベルでの協力が不可欠ですが、同時に私たちひとりひとりの行動がとても重要です」、ペネロープ・リンデキュー教授は「好奇心から始まった私の研究が、このような賞を受賞することになりとても嬉しく思っています。深海から高山、また国境を越えて地球環境全てに影響を与えるプラスチックの汚染をどう止めて行けばいいのか、とても大きな課題ですが、地球の将来を担う私たちの世代の責任を果たしていかなければならないと考えています」と述べました。もう1件の受賞者のデバラティ・グハ=サピール教授は「受賞の連絡をもらった時にはとても驚きました。これまで取り組んできた研究がこのような形で評価をされ、私の研究は世界を変えることができるのだ、という気持ちになりました。これまでの研究で蓄積してきたデータが今、様々な国や国際会議の場で政策や提言に影響を与えています。今後は衛星からのデータ収集を確立し、世界中の異常気象、自然災害の予測の精度を上げることで、引き続き気候変動対策に貢献していきます」と受賞への喜びを語りました。

ブループラネット賞を受賞した(左から)デバラティ・グハ=サピール教授、リチャード・トンプソン教授、ペネロープ・リンデキュー教授

環境学を学ぶ日本の学生や研究者に対し、リチャード・トンプソン教授は「環境問題がより複雑化している現在、その対策もスピード感を高める必要があります。特に、学術的なエビデンスと変革を起こすタイミングのバランスを取りながら動いていくことが大切だと考えています。学生の皆さんはぜひ好奇心を追求し、新たなことへチャレンジしてください」、ペネロープ・リンデキュー教授は「私の好奇心からのスタートがこのようなインパクトを生んだように、みなさんの好奇心も変革をもたらす可能性があるということを信じてください。美しい地球を次世代に渡していきましょう」と語り、デバラティ・グハ=サピール教授は「環境問題は全ての学問と繋がっているので、どのような学術分野であってもその分野を追求し、ぜひ環境問題に応用してください。そして、他の国でどのようなことが起こっているのか、ぜひ現地に足を運んで状況を理解し、ソリューションを考えてみてください。そのような経験を通じて、みなさんの人生を学び多く、より豊かなものにしてください」と応援のメッセージを残しました。

今後は、表彰式典を10月4日(水)に東京會舘(東京都千代田区)で、受賞者による記念講演会を10月5日(木)に東京大学10月7日(土)に京都大学で開催いたします。

<受賞者プロフィール>

1.リチャード・トンプソン教授(英国)  1963年7月15日 英国生まれ

プリマス大学教授、プリマス大学海洋研究所所長

タマラ・ギャロウェイ教授(英国)  1963年2月6日 英国生まれ

エクセター大学教授、エクセター大学生態毒性学研究グループ長

ペネロープ・リンデキュー教授(英国)  1971年9月7日 英国生まれ

プリマス海洋研究所 海洋生態学・生物多様性 科学部門長

海洋中にマイクロプラスチックを発見し、その深海から高山にまでに及ぶ分布を示した。また、動物プランクトンを含む海洋生物がマイクロプラスチックを摂取していることを明らかにし、マイクロプラスチックの海洋生物や生態系プロセスへの影響に関する理解が大きく進展した。この研究は世界中での法制定と行動に影響し、深刻化した海洋のプラスチック汚染の問題に対処すべく解決策を講じるよう国際社会に対して求めた。

2.デバラティ・グハ=サピール教授(ベルギー)  1953年11月11日 インド生まれ

ルーヴァン・カトリック大学教授、災害疫学研究センター所長、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院 人道的健康センター上級研究員

気候変動に起因する嵐などの巨大災害、地震などの地球物理学的災害、パンデミックなどの生物学的災害、紛争などの人道的災害を含む世界の大規模災害に関する初めてのデータインフラである災害データベースEmergency Events Database, EM-DAT)を創始、その開発を主導した。EM-DATと30年以上にわたる研究成果は、エビデンスに基づいた政策形成に不可欠な科学的データの基礎となるもので、多くの国際機関、各国政府・研究機関などが気候変動緩和策・適応策や防災・減災に取組むにあたり用いている。

ブループラネット賞について

人類が解決を求められているグローバルな諸問題の中で、最も重要な課題の一つが地球環境の保全です。地球温暖化、酸性雨、オゾン層の破壊、熱帯雨林の減少、河川・海洋汚染などの地球環境の悪化は、 いずれも私達人間の経済活動や生活が大自然に影響を及ぼした結果です。

旭硝子財団は、地球環境の修復を願い、地球サミットが開催された1992年平成4年)に、地球環境問題の解決に向けて著しい貢献をした個人または組織に対して、その業績を称える地球環境国際賞「ブループラネット賞」を創設いたしました。

賞の名称 ブループラネットは人類として初めて宇宙から地球を眺めた宇宙飛行士ガガーリン氏の言葉「地球は青かった」にちなんで名付けました。この青い地球が未来にわたり、人類の共有財産として存在しつづけるように、との祈りがこめられています。

配信元企業:公益財団法人旭硝子財団

企業プレスリリース詳細へ

PR TIMESトップへ