9月21~24日にかけて、千葉・幕張メッセで「東京ゲームショウ 2023」(以下、TGS2023)が開催された。

【写真】良リメイクの予感! 『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』試遊の様子

 スクウェア・エニックスのブースには、2023年11月2日に発売を予定している『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』(以下、『SO2R』)の試遊台が設置されていた。

 本稿では、同タイトルの試遊から受け取ったインプレッションをお届けする。

1990年代のRPGの金字塔が再びよみがえる

 『SO2R』は、1998年にPlayStationで発売されたアクションRPG『STAR OCEAN THE SECOND STORY』(以下、『SO2』)のリメイクタイトルだ。プレイヤーは、クロードとレナの2人の主人公のうちから1人を選択し、それぞれの視点から星を巡る物語を追体験していく。

 オリジナル版は、スクウェア・エニックスが発売を手掛ける人気RPG「スターオーシャン」シリーズのナンバリング2作目にあたる。魅力的なキャラクターの存在や、スピード感のあるバトル、多彩なフィールドスキルなどから、同作をシリーズの出世作とする声は少なくない。そのような評価もあり、2008年には、PlayStation Portableにて1度目のリメイク『STAR OCEAN2 Second Evolution』(以下、『SO2SE』)が発売となっている。オリジナルの良い部分を残しつつ、不評だった点に改善をくわえた同作もまた、多くのシリーズファンから高評価を獲得した。

 『SO2SE』以来、15年ぶりに再びリメイクされる『SO2R』は、オリジナルの時代を意識させる2Dドットのキャラクターと、3Dによるフィールドを融合させたグラフィックを特徴とする。そのほかにも、バトル/フィールドシステムにアクション性・利便性の高い現代的な要素を盛り込んだ。

 2023年11月2日発売予定で、PlayStation 5PlayStation 4Nintendo Switch、PC(Steam)に対応する。価格は、通常版が税込6,478円、コレクターズ・エディション版が税込22,222円(※)となっている。

※コレクターズ・エディション版は数量限定。特製スリーブケースに収められた特別仕様の4枚組オリジナル・サウンドトラックと、梶本ユキヒロ氏による新たなキャラクターイラストなどを収録したアートブック、本編の音声収録に使用された台本、仲間キャラクターと十賢者などがセットになった24種のミニアクリルスタンドなどが同梱される。

■新要素「ブレイク」がもたらすバトルの爽快感

 TGS2023における試遊では、クリア難易度の違う2つのモードが用意されていた。ひとつは、アシュトンに取り憑いた双頭の龍を祓うべく、寄り道的に訪れるラスガス山脈の攻略部分。もうひとつは、メインストーリーのなかで誰もが立ち寄ることになるホフマン遺跡の攻略部分だ。今回は20分という長くない試遊時間を考慮し、比較的易しいと考えられる前者のプレイを選択した。

 試遊をスタートし、まず目に留まったのは、フィールド移動時のグラフィックだ。操作するキャラクターは、HD-2Dのようなドット絵である一方で、背景はリアリティに富んだ現代的な表現となっていた。おそらく『SO2』の発売当時を知るプレイヤーに懐かしく遊んでもらうための計らいなのだろう。「新しく生まれ変わった『SO2』をプレイしているんだ……
」という感情が、その思惑どおりに湧き上がってきた。

 パーティーは、主人公であるクロード、レナに、アシュトン、セリーヌ、プリシスをくわえた構成。最初は用意されたとおり、クロード、レナ、セリーヌ、アシュトンの4人で攻略を進めていたが、途中でプリシスがいることに気づき、(本来は主役であるはずの)アシュトンと交代させた。

 バトルもフィールドのグラフィック同様、懐かしさと新しさが融合したデザインとなっていた。オリジナル版や1度目のリメイク版で体験していたような『SO2』らしいバトルが味わえる一方で、「ジャストカウンター」や「ブレイク」、「アサルトアクション」といった新要素がリメイク版ならではのエッセンスとなり、同タイトルの長所をさらに高次元なものへと進化させていた。

 『SO2R』には、過去のバージョンにはない「リーダーエネミー」という要素がある。「リーダーエネミー」とは、そのバトルで対峙している敵のなかで中心的な役割を担う存在だ。敵全体を強化したりと、プレイヤーにとってマイナスとなる効果を持つ。バトルでは一部の例外(考慮しなくてもすべての敵をすぐに倒せる状況など)を除き、彼らを優先して倒さなければならない。

 一方で、「リーダーエネミー」は、プレイヤーにプラスの効果も持っている。彼らを「ブレイク」(あらかじめ用意されたシールドゲージを削り、一時的に気絶させること)することで、その影響が周囲に波及し、ほかの敵もブレイク状態になるというものだ。だからこそ、優先的に倒すことにも意味が生まれる。多くの敵に囲まれているときほど、リーダーエネミーをいかに早く倒すかが戦略的に重要となってくる。

 この「ブレイク」の波及は、『SO2R』のバトルにこれ以上ない爽快感をもたらしている。次々と敵が気絶していくさまは圧巻のひとこと。私が「同タイトルの長所(であるバトル)をさらに高次元なものへと進化させていた」と表現したのは、この要素によるところが大きい。購入しプレイした際には、ぜひこの気持ちよさを体感してほしい。

 また、オリジナル版では紋章術の発動時に、当時の技術を結集させた迫力のある演出が挟まれていた。これはこれでプレイヤーを「特別な力を使っているんだ…」という気持ちにさせてくれたものだったが、強力な紋章術ほど演出が長くなりやすい仕様が、バトルのテンポ感を悪くしていた面もあった。

 『SO2R』では、こうした過去の反省を生かし、省時間的な設計にも力を入れている。ランダムエンカウントからシンボルエンカウントに変更となったことも、こうした影響によるものだろう。例として挙げた紋章術の詠唱では、演出を減らす設定項目が存在している。注目すべきは、演出のカットが映像的に違和感を生まないよう、キャラクターのモーションなどが調整されている点。細かなUI/UXに、『SO2R』の作り込みを感じることができた。

 山頂に到達し、ボス・ジーネを倒すと、ラスガス山脈編の試遊は終了。短い時間ながら、気づく点の多いプレイ体験となった。

 今回の試遊では、どちらのモードも、ノーマルにあたる難易度の「GALAXY」がデフォルトの設定となっていた。担当者の話によると、難易度はプレイ開始時点に選ぶことになるが、途中で変更も可能とのこと。どれを選ぶか悩んでいる方も、安心してプレイできる設計となっているようだ。

 試遊全体を通じて感じたのは、「親切なUIが光る、丁寧なリメイクである」という点。随所にRPG史における金字塔である原作へのリスペクトを感じられた。当時を知っている人にも、はじめて『SO2』をプレイする人にも、等しく勧められるタイトルが『SO2R』だったように思う。

 開発を担当したジェムドロップ・北尾雄一郎氏は、過去のインタビューで「『SO2』と『SO2SE』をプレイした経験を持つ全員に、『初めて遊んだ時の記憶』をきちんとお返ししたい(想いのもとで開発に向かった)」と語っている。近年でも稀に見る良リメイクと期待していいだろう。注目しているフリークは、ぜひ手にとってみてほしい。

(文=結木千尋)

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