総務省9月29日に公表した「労働力調査」によると、23年8月の完全失業率は2.7%となり、前月から横ばいの結果となりました。本稿では、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏が、今回公表された「労働力調査」の内容を分析し、失業率・雇用率の今後の見通しについて解説します。

1.失業率は前月から横ばいの2.7%

完全失業率と就業者の推移総務省9月29日に公表した労働力調査によると、23年8月の完全失業率は前月から横ばいの2.7%(QUICK集計・事前予想:2.6%、当社予想も2.6%)となった。

労働力人口が前月から5万人の増加となる中、就業者が前月から5万人増加し、失業者は前月から1万人増の185万人(いずれも季節調整値)となった。

就業者数は前年差22万人増(7月:同17万人増)と13ヵ月連続で増加した。

産業別には、生活関連サービス・娯楽業が前年差▲1万人減(7月:同▲9万人減)と3ヵ月連続で減少し、製造業が前年差▲3万人減(7月:同12万人増)と7ヵ月ぶりに減少に転じたが、医療・福祉が前年差6万人増(7月:同31万人増)と3ヵ月連続で増加したほか、宿泊・飲食サービス業が前年差16万人増(7月:同15万人増)と14ヵ月連続で増加した。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ41万人増(7月:同37万人増)と18ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差48万人増(7月:▲1万人減)と2ヵ月ぶりに増加する一方、非正規の職員・従業員数が前年差▲7万人減(7月:同38万人増)と3ヵ月ぶりに減少した。

2.宿泊・飲食サービスの新規求人数が大幅増加

厚生労働省9月29日に公表した一般職業紹介状況によると、23年8月の有効求人倍率は前月から横ばいの1.29倍(QUICK集計・事前予想:1.29倍、当社予想も1.29倍)となった。

有効求人数が前月比0.1%、有効求職者数が同▲0.2%といずれも前月からほぼ横ばいとなった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.06ポイント上昇の2.33倍となった。

新規求人数は前月比0.9%の増加となったが、新規求職申込件数(同2.9%)の増加幅がそれを上回った。新規求人数は前年比1.0%(7月:同▲2.5%)と3ヵ月ぶりに増加した。

産業別には、製造業(同▲7.5%)、建設業(同▲3.8%)が6ヵ月連続、卸売・小売業(同▲0.4%)、生活関連サービス・娯楽業(同▲3.1%)が3ヵ月連続で減少したが、宿泊・飲食サービス業が前年比9.6%と23ヵ月連続で増加し、前月(同2.1%)から伸びを大きく高めた。

23年8月は失業率、有効求人倍率ともに前月から横ばいにとどまったが、宿泊・飲食サービス業は、新型コロナウイルス感染症の5類移行や水際対策の終了を受けた需要の急回復を反映し、就業者数、新規求人数の大幅増加が続いている。

一方、厚生労働省の「毎月勤労統計」によれば、23年7月の現金給与総額は前年比▲0.2%の減少となった。

就業形態別には、一般労働者(前年比5.8%)、パートタイム労働者(同3.4%)ともに高めの伸びとなっているが、パートタイム比率の上昇が平均賃金を押し下げた。

宿泊・飲食サービス業では人手不足の状態が続いており、このことが平均賃金の上昇につながるかが注目される。

(写真はイメージです/PIXTA)