2016年に日本テレビ系で放送された連続ドラマ「ゆとりですがなにか」が、6年の時を経て映画化。「ゆとりですがなにか インターナショナル」として10月13日(金)より全国公開される。本作は、「野心がない」「競争意識がない」「協調性がない」と揶揄される“ゆとり世代”の男子3人、岡田将生演じる坂間正和、松坂桃李演じる山路一豊、柳楽優弥演じる道上まりぶを中心としたストーリー。3人と同じ“ゆとり世代”の視聴者を中心に人気を集めていた作品だ。WEBザテレビジョンでは、スペシャルドラマから6年ぶりに坂間正和を演じることになった岡田にインタビュー。「続編をやれるのは、作品が愛されている証拠なのでうれしい」と話す岡田に本作への思いを聞いた。

【写真】照れた表情がかわいい…岡田将生の横顔ショット

■「ゆとりですがなにか」の映画化には“驚いた”

――ドラマから6年越しの映画化ですね。

うれしいですね。連続ドラマ、スペシャルドラマをやったあとに、みんなで「もう1回やりたいね」って話をしていたので、この話が決まった時は「映画化になったね」「やったね」って連絡を取り合いました。

ただ「ゆとり(ですがなにか)」は、個人的にはドラマ向きの作品だと思っていたので、まさか映画になるとは驚きでした。大きなスクリーンで見ていただけると言うのは、やっぱりうれしいですね。

――正直、6年越しに続編が見れるなんて思っていませんでした。1ファンとしては「もう会えないかな」と諦めていたと言うか…。

そうですよね!(笑)。桃李さんとか、柳楽の優ちゃんとは定期的に連絡をとっていたのですが、2人はもちろん、皆さんお忙しい方なのでスケジュールが合わないだろうなって思っていました。

でも、続編をやれるのは、ほんとに作品が愛されている証拠ですし、いざ発表した時の皆さんの反応を見るとそれが直に伝わってきたので、本当にうれしかったです。だからこそ、中途半端なものにしたくないなっていう気持ちで、数年ぶりに会ったみんなと頑張りました。待ってくださっていた方に、きっと満足していただける作品になったと思います。

■「僕が好きな作品だ」と再確認

――岡田さん演じる坂間正和はどんな人物か、改めて教えてください。

正和は、ダメな部分がたくさんあって、いろんな失敗をしちゃうキャラクターなのですが、そこから這いあがろうとしている姿が僕はすごく好きです。人に対しても仕事に対しても諦めないところが、人間っぽくっていいなって。演じていて「羨ましいな」と思うことが多々あります。

――そんな正和を6年ぶりに演じたわけですが、ブランクを経て演じるのって、どういう感覚なのでしょうか?

最初は、ものすごく不安でした。今の自分とあのときの自分は違うので、監督にも衣装合わせの時に「ちゃんと演じられるか、ちょっと怖いです」という話をしたくらい。撮影に入る前に連ドラを全部見返しましたし、台本のセリフを口に出して言ってみたりもしました。

――いざ撮影が始まってからは、苦戦しましたか? 意外とすっと入れましたか?

いざ現場に行ったらスタッフの方々が「待ってました!」という雰囲気で迎え入れてくれたんです。衣装もセットも全部残っていました。それを見た時に「またあのチームでできるんだ」ってグッときて、監督が「安心して現場に来てくれ」と言った意味がわかりましたし、一言目を言った瞬間に完璧に正和に戻れました。あの感覚はめちゃくちゃうれしかったですね。「戻ってきた」「僕が好きだった作品だ」って。

■2人とは意識し合いながら、俳優を続けていく

――先日の完成報告会見でも楽しそうなチームワークで印象的でした。3人の関係性を教えてください。

会見でも話しましたが、家族みたいであり、友達で、ライバル。厳しい世界でお互いを尊重し合える、高め合える友ですね。今後こういう友人はたぶんできないんだろうなと、30代になって改めて実感しました。「頑張ろう」と言う気にさせてくれるし、何かあったときには全力で助けたい存在です。

僕自身、桃李さんとか柳楽の優ちゃんのことは「こういう仕事をしているんだな」とか「次、こういう役やるんだ」って常にチェックしていましたからね。2人がいるから自分も頑張らないとって思えていたんです。きっとこれからも2人とは意識し合いながら、俳優という仕事を続けていくんじゃないかなと思います。

――そこに今回は新キャストの方も加わりました。現場の雰囲気を教えてください。

これは、言いづらいことなのですが、僕はすでに出来上がっているチームに途中から入るのが苦手なんです。だからこそ「ちゃんと迎えて、やりやすい環境でやりたい」って思っていたので、積極的にコミュニケーションをとって「こんな感じだった」「あんな感じだった」と伝えました。僕自身、自分がやりやすい環境で仕事がしたいですし、相手の方もきっとそうだと思っています。嘘なく、率先してそういう環境づくりはしたいなと。

ただ、そういう心がけ以前に皆さん『ゆとり』のファンだったので、「もう自由にやってください」と監督が言ったら、自然と『ゆとり』の空気感になっていましたね。

――一方で、新キャストが加わったことで「ちゃんとあの時の空気感を出さなくては」とプレッシャーを感じたのではないかなと想像します。

プレッシャーもたぶんあったとは思うんですけど、それ以上にみんなで集まって演じられることがうれしかったです。だからこそ、気負わずに自然とできました。正直ドラマが終わってからも、みなさんとコミュニケーションを取り合っていましたし、違う仕事でお会いしたこともありましたから。常にどこかに「ゆとり」のことがあった気がしていて。それもあって自然に作品に入っていけたのかなと。

■「ゆとり」は僕にとっての“代表作”

――6年経ってもファンが待っていてくれると言うのは並大抵のことではない気がしています。そこまでファンを熱くさせる理由、作品の魅力ってなんでしょうか?

宮藤官九郎さんの脚本って、セリフも含めて知らぬ間に突き刺さってくるんですよ。連続ドラマのときは特にそうでした。日常を描いている作品だけど、ちょっと社会派な一面もあるし、コメディもあるし…。でも、僕はただ全力でやっているだけなので。改めて聞かれると難しいですね。

――それほど、あの世界に当事者として入り込んでるんですね。

本当はダメなんですけどね。この作品は特にそうなっちゃうんです。

――20代の頃に、この作品に参加したことで、岡田さん自身が影響を受けたことはありますか?

僕の代表作であることは間違いないと思います。悔いのないようにできたという意味でもそうですし、自分の中でもこの作品をやりきれたことは誇りになっているんです。これをやれたおかげで、僕はこの仕事を辞めずに済んだし、キャストさんやスタッフさんのおかげもあって、お芝居を好きにさせてくれた作品だったなと。だからこそ、今でも大切な作品だと思っています。

◆取材・文=於ありさ

映画「ゆとりですがなにか インターナショナル」で主演を務める岡田将生/撮影=友野雄