ベトナムの元結合双生児ドクちゃんとして知られるグエン・ドクさんの壮絶な人生を描く長編ドキュメンタリー映画『ドクちゃん』(仮)の撮影が完了した。2024年春以降の劇場公開を予定している。分離手術から35周年目を迎える10月4日より、クラウドファンディングが行われる。

【写真】長編ドキュメンタリー映画『ドクちゃん』(仮)場面カット

 本作は、日越外交関係樹立50周年と分離手術35年を記念し、ドクさんの人生を長編ドキュメンタリーで初の映画化。ドクさんがベトナム戦争で使用された枯葉剤の影響で結合双生児として生まれた運命から、今も深刻な健康問題を抱えながら平和のアンバサダーとしての使命と共に生きる姿を捉えた作品で、日本人にもなじみ深い彼の実像を通じて平和の大切さを伝えることに挑戦している。

 プロデューサーはドクさんと平和活動を長年続けているリントン貴絵ルース(Kingyo Films Pte. Ltd.、シンガポール)、監督はドキュメンタリー作家の川畑耕平(Ruff Films LLC, 日本)。

 完成発表は本年度内に行う予定。製作費のギャップファイナンシングのため、支援をクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で10月4日から11月18日まで募集する。

 ドクさんは夫として、父として、今年で42歳を迎え、結婚17年目を迎える妻のトゥエンさんと、双子の子供であるサクラちゃんとフジくん、そしてステージ4のがんを患う義母を介護しながら、自身も体調を崩して入退院を繰り返しながら、一家の唯一の稼ぎ手として暮らしている。

 日本とベトナムの「友好の絆」を象徴するドクさんの軌跡を伝え、現在を刻み未来の命の輝きを共に見つめるこの映画は、日越外交関係樹立50周年記念事業として認定され、記念の2023年度に制作している。

 文部科学省のトビタテ!留学JAPANアルムナイの有志の力も借り、この映画を、これからの未来を切り拓いていく若い世代へ届けるため特化したプロモーションも予定している。

 ドクさんは「この映画では、幼少期から現在までの私の人生と本質を皆さんにお見せし、語るつもりです。これは私にとって非常に大切な財産であり、人生の軌跡となるでしょう。私の双子の子供たちや、これからの世代を担う多くの若者に、前向きに生きる力を与えられることを願っています。それがこの映画を通じて伝われば幸いです。映画の完成を楽しみにしています」とコメントしている。

 長編ドキュメンタリー映画『ドクちゃん』(仮)は、2024年春以降公開予定。

 プロデューサー・リントン貴絵ルースのコメントは以下の通り。

<プロデューサー・リントン貴絵ルース コメント>

 10年以上前、音楽を通じた平和活動の場でグエン・ドクさんに出会った際に、思い切って彼に聞いた質問があります。

 「(枯葉剤を撒いた)アメリカのことは嫌いですか?」

 彼の答えは、「アメリカ人も、僕と同じように平和を愛してる」でした。

 それ以来、彼から「生きる」ことの困難さと逆境に立ち向かう人間の本質的な強さを学びました。

 彼は分離手術を受けた結合双生児として広く知られています。しかし、その存在が多くの人にとって「過去の人」として捉えられ、一見、終わったドラマのように見えてしまっていることに私は危機感を感じています。それではまた残念なことにも悲惨な歴史は時を超え場所を変え、繰り返されてしまうのではないでしょうか。

 SDGs持続可能な開発目標)が掲げる「持続可能な」平和の必要性を、ドクさんはよく知っていて、「これまで戦争の犠牲になった人の命が無駄になっている」と言っています。この混沌とした時代において、彼だからこそ伝えられる「平和」のメッセージがあります。日本人とベトナム人が、あらゆる知識と技術を結集しヒューマニズムにあふれた協力でベトちゃんドクちゃんを救った経緯からも、日本とベトナムが外交関係樹立50周年を迎えるこの年に、彼の現在の姿を映画にすることは必然でした。

 彼の体調は極めて悪いです。足は一本、骨盤は一つ、そして一つしかない腎臓は悲鳴をあげています。42年前から人々を引き寄せ続ける彼の明るい性格のおかげで、その事実を忘れそうにもなりますが、彼は重度の障がい者です。

 彼は「あと5年生きれるかわからない」と言っていましたが、映画制作が進むにつれて、「この映画が完成したら、何十年も健康でいて、映画と一緒に平和活動に引き続き励もう」という気持ちであふれています。

 このドクさんの命をかけた真実のストーリーこそが人類に「平和」の意味を説き、「平和」への思いを呼び覚ますきっかけを生み出すと信じ、映画の制作に全身全霊で取り組んでいます。

 この映画の使命を支えるためには皆様の協力が不可欠です。どうぞご支援をよろしくお願い申し上げます。

映画『ドクちゃん』(仮)より (C)Kingyo Films 2023