DeNAのエースとして君臨する今永。そんな左腕に対する米球界への評価は?(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 オリックス山本由伸がレギュラーシーズン最終登板を終え、空前絶後の「3年連続投手4冠」を決定的なものとした。10月2日日本ハム戦に先発し、7回3安打無失点、11三振と危なげなくフィニッシュ。これで16勝、防御率1.21、勝率.727、169奪三振のいずれも、リーグトップで終えるのが確実に。昨季成し遂げた「2年連続投手4冠」でさえ史上初めての快挙だったが、それをさらに上回る成績となり、3年連続となる沢村賞受賞も確実とみられている。

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 今オフにはポスティングシステムを利用してメジャー挑戦することが、すでに規定路線として報じられている。米メディアも有力なFA選手の一人として計算しており、今オフのFA選手のランキングではエンゼルス大谷翔平に次いで2位に入ることも多い。

 注目の契約総額について、多くの米メディアでは「総額2億ドル(約300億円)前後」での攻防と読んでいる。これは日本選手ではヤンキース田中将大が2014年から結んだ6年総額1億5500万ドル(当時約161億円)を上回り、日本選手最高総額となる。同じく今オフにFAとなる大谷は米球界でも歴代最高となる「総額5億ドル(約750億円)」とも予想されており、さすがにそこには及ばないが、海を渡る1年目の日本人メジャーリーガーとしては破格の契約となることは間違いない。

 同時に一部で注目を集めているのは、オリックスに支払われる譲渡金の額だ。

 ポスティングシステムは以前は獲得希望球団が譲渡金額を設定して入札。最高額を設定していた球団に独占交渉権が与えられた。その後、譲渡金の高騰を問題視したMLB側からの要求でルールが大幅に変更。2013年オフからは日本球団が上限2000万ドルとして譲渡金を設定し、それを支払う意思のある球団は自由に交渉できる「FA型」に移行した。その後、米労使協定の改訂に伴い、さらに譲渡金の上限を抑えるような現在のシステムへと変遷してきた。

 過去最高額は2011年オフにレンジャーズダルビッシュ有を落札した5170万3411ドル。次いで2006年オフにレッドソックス松坂大輔を落札した5111万1111ドル。入札方式時代のこの2人が抜けていて、制度改正にもつながった。

 上限2000万ドル時代は、田中将大前田健太大谷翔平がその2000万ドルの譲渡金で移籍した。

 その後、現在のシステムでは契約総額の2500万ドル以下は20%、2500万ドル~5000万ドルの部分は17.5%、5000万ドルを超えた部分には15%がかかるというルールに改められた。

 昨オフに5年総額9000万ドルで吉田正尚を獲得したレッドソックスは、オリックスへ前記計算式を元に1537万5000ドルの譲渡金を支払った。広島から5年総額8500万ドルで鈴木誠也を獲得したカブスが広島に支払った譲渡金は1462万5000ドルだった。入札時代や、2000万ドル上限時代に比べて、MLB側の思惑通りに譲渡金額が抑えられてきたのだ。

 ところが、仮に山本が総額2億ドルの契約を結ぶことになると、譲渡金額は前記計算式では3187万5000ドル(約48億円)にも上る。ダルビッシュと松坂には及ばないまでも、入札時代を除けば断トツの最高額。譲渡金を抑えるために設定された計算式でも、制御しきれない分母の大きさとなるためだ。

 争奪戦ではどこの球団が山本のハートを射止めるかと同時に、いくらまで契約総額と譲渡金額が積み上げられるかにも大きな注目が集まりそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

譲渡金額はいくらに?骨抜きにされたポスティング計算式を覆すオリックス山本由伸のポテンシャル