サザンオールスターズが、2023年9月27日、28日、30日、10月1日の4日間、神奈川茅ヶ崎公園野球場で【茅ヶ崎ライブ2023】を行い、連日全国から集まった大勢のファンたちとデビュー45周年と10年ぶりの【茅ヶ崎ライブ】の喜びを分かち合った。このレポートでは、最終日である10月1日公演の模様をお届けする。

 サザンの【茅ヶ崎ライブ】が行われるのは、2000年の【サザンオールスターズ 茅ヶ崎ライブ】と、2013年の【SUPER SUMMER LIVE 2013】以来、10年ぶり3回目となる。また、有観客ライブも2019年に行われた全国ツアー以来とあって、茅ヶ崎公園野球場には開演の2時間ほど前から、サザンとの再会を待ちわびる大勢のファンが詰めかけていた。この日の天気は秋の気配も感じる程よい涼しさで、会場には心地良い海風が吹いており、ライブを待つ間も快適に感じられた。

 開演時間の17時になると、サポートメンバーに続き、茅ヶ崎市出身の大先輩=加山雄三の「君といつまでも」をBGMに、ウクレレを持った桑田佳祐(Vo. / Gt.)を先頭に原 由子(Key. / Vo.)、関口和之(Ba.)、野沢秀行(Per.)、松田弘(Dr.)が、仲良く肩に手を置いて一列で入場。両手を繋いで客席に挨拶し、サポートメンバーの斎藤 誠(Gt.)、片山敦夫(Key.)、山本拓夫(Sax.)、吉田 治(Sax.)、菅坡雅彦(Tp.)、TIGERCho.)と共にスタンバイすると、1979年の5thシングル「C調言葉に御用心」からライブがスタートした。サザンビーチちがさきのモニュメント「茅ヶ崎サザンC」にかけたのであろうオープニング曲だ。〈砂の浜辺でなにするわけじゃないの 恋などするもどかしや〉と、地元の海を連想させるフレーズも飛び出す。続いては、原のブギウギ・ピアノから始まる「女呼んでブギ」。アマチュア時代に出場したコンテストで披露された、デビューのきっかけになったともいえる原点的な曲だ。途中、「みなさん、お元気でいらっしゃいますか?」と呼び掛ける桑田に「イェー!」と元気いっぱいに応えるオーディエンス。さらに〈帰ってきたよー!〉と歌詞を変えて告げると大歓声。桑田、関口、斎藤がセンターで後ろを向きお尻をフリフリして、ユーモラスに曲を締めくくった。

 「どうもこんにちは! 愛と浪漫を歌うサザンオールスターズでございます! 私、里帰りさせていただきました茅ヶ崎へようこそ! ようこそここへ、クッククック」とボケると、すかさず「クッククック~」と返してくるファンたち。「最高! というわけで、このステージに10年振りに、すっかり高齢者になって帰ってまいりました」と笑わせた。また、9月30日および10月1日の2公演は、全国47都道府県270館の映画館でライブ・ビューイングも実施されており、各日10万人が集まっているというスクリーンの向こうへも語りかける。「我々、“目立ちたがり屋の芸人”でございます!」とデビュー当時のテレビ出演で残した名台詞を再現すると、「今日はファイナル! 熱いご声援とパワーをいっぱいください!」とライブを再開させた。

 「YOU」「My Foreplay Music」と80~90年代のアルバム曲を披露した後は、シングル・ヒット曲「涙のキッス」へ。スタッカートする桑田の歌い回しの妙が味わえる楽曲だ。「夏をあきらめて」では江ノ島がスクリーンに映し出され、日が暮れていく様子が茅ヶ崎夕暮れと重なった。映像はそのまま満月が浮かぶ夜空へと続き、「Moon Light Lover」でしっとりと聴かせる。メロディーメイカー=桑田佳祐メロウな曲の魅力を満喫できるセクションとなっていた。対照的に、都会のビル街が映し出された「栄光の男」ではシリアスな歌詞に自分の人生を重ねた人も多いはず。野沢のコンガが活躍する「OH!! SUMMER QUEEN ~夏の女王様~」は、桑田お得意のスライド・ギターが熱く炸裂して興奮させられた。続いて飛び出したギターのイントロは、原がメインボーカルを務める「そんなヒロシに騙されて」。グループサウンズや往年のギターインストバンドを思わせる曲調、アレンジが湘南に良く似合う。転調してのギターソロも艶めかしく響いた曲の後半は、原がハンドマイクを手に、野沢がタンバリンを手に前へ出て、サザンの4人がセンターに勢揃いしてのパフォーマンス。原と桑田が並んで歌うシーンは、今年3月に鎌倉で行われた原のソロライブを思い起こさせた。冒頭のコーラスワークにどよめきにも似た歓声が上がったのが、「いとしのエリー」。初期サザンの代名詞的な名バラードにジッと聴き入る観客たち。ラストの桑田のシャウトは震えるほどの迫力で、デビュー当時の歌声と遜色ない桑田のボーカリストとしての凄みを見せつけられたシーンだった。

 「茅ヶ崎おかえりなさい」と関口から桑田に花束が贈呈されたメンバー紹介を挟んで、「ここで生まれて良かったな、という新曲を歌わせてください」との言葉から、3か月連続配信リリース第2弾として発表された「歌えニッポンの空」へ。ラテン調のリズムに乗せて、カラフルなドレスを着たダンサーたちが舞い踊り、〈ここは茅ヶ崎〉と歌詞を変えて歌うと客席がドッと沸き立った。「東京VICTORY」では、入場時に配布された光るリストバンド“烏帽子ライト”が一斉に点灯して、一面が眩い光に包まれる。落ち葉が舞うような映像の演出の中で歌われた「栞(しおり)のテーマ」、弾むような王道モータウン・サウンドが心地良い「太陽は罪な奴」と、緩急をつけた選曲で、いろんな角度からサザンの楽曲を楽しめるセットリストだ。世間的にも人気の高いバラード「真夏の果実」は、紗のかかった映像も相まって思わずグッとこみ上げるほどの名演。曲の最後には、スクリーン全体をオレンジ色の電飾が“果実”となって彩った。

 【茅ヶ崎ライブ】ということもあり、夏や海を連想させる選曲も多く、曲が始まる前に波の音などSE音が聴こえるところも特徴だった。船の音が聴こえると、「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」 からライブは後半へ。〈ボウリング場でカッコつけて〉と歌うサビでは、桑田がボウリングのポーズをカッコよく決めた。曲が終わるとすかさず始まったシンセのリフに沸き立つオーディエンス。「ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)」だ。ギターのフレーズに「Hey! Hey!」と拳が上がり、コンピューター・グラフィックが疾走する映像も興奮を煽る。1984年に発表された楽曲にも関わらず、現代にも通じるシニカルな歌詞は、サザンがいつの時代も音楽で社会にメッセージを送ってきたことの証明だ。

 炎が揺らめくステージにダンサーが現れると、新曲「盆ギリ恋歌」でライブは不思議な世界へと誘われる。人魂(ひとだま)が浮かぶスクリーンの中、妖艶にダンサーと絡み、〈江ノ島が見えてきた 俺の家も近い〉とお経のように唱える桑田。曲が終わると、ピアノの伴奏に合わせて、「古臭い恋の歌やスケベな歌も みなさんの前で歌うのが好きです 世の中いろいろあるけれど 水に流すのはどうだい?」と口ずさみつつ放水を予告して「みんなのうた」に突入、ホースを手に盛大に放水しながら歌い上げた。「もっとやるか茅ヶ崎ー!? Rock 'n' Roll!!」と叫び、「マンピーのG★SPOT」でライブはクライマックスへ。「爺」と描かれたヅラに「相模」ナンバーのプレートまで付けて、闘魂タオルを首にぶら下げた桑田の雄姿。大観衆を前にこんな姿でロックンロールを歌えるスーパースターはこの人しかいないだろう。ワンピース姿のセクシーなダンサーとともに挑発的なパフォーマンスを見せる桑田、息のあったバンドの演奏が生み出すグルーヴ。ステージからは次々と火花が上がり、茅ヶ崎公園野球場はまさに狂乱の宴と化した。最後はビデオカメラ片手にダンサーのお尻に迫る桑田が周囲に咎められた末、「なにがいけねえんだよ? これが俺の生きざまだよ!」と開き直るオチがついて爆笑となった。

 アンコールでは、4日間のライブでは初披露となる「ロックンロールスーパーマンRock'n Roll Superman~」が演奏され、最終日ならではのサプライズでファンを喜ばせた。バラード曲「Ya Ya (あの時代(とき)を忘れない)」の曲中には、デビュー当時のメンバーの姿が映像で重なる感動的な場面も。

 「本当にたくさんの方のご理解とご協力があって、10年ぶりの茅ヶ崎ライブができました。若いスタッフが中心となってステージを作って舞台を演出してくれて、こうしてみなさんに来ていただいて会えるというのが、本当に幸せです。また楽しい逢瀬が叶いますように、サザンオールスターズ、次なる計画を練りまして、みなさまにご報告することをお約束致します! 今日は本当にありがとうございました!」との桑田のMCに、大きな拍手が送られた。終了かと思いきや、「もっとやりますかー!?」と、「希望の轍」へ。力強い歌と演奏、観客の手拍子で一体になり、「茅ヶ崎、もっと来ーい!」とライブの最後を飾ったのはデビュー曲「勝手にシンドバッド」。ステージから金テープが放たれ、サンバダンサー、祭りの神輿も登場。「45周年本当にありがとう!!」と描かれた横断幕をバックに、「フレー!フレー!茅ヶ崎!」とコール&レスポンスして、大盛り上がりの中で終了となった。

 デビュー45周年、決して奢ることなく最高のエンターテイメントで人々を楽しませてくれるサザンオールスターズ。まだまだこの先も、感動と興奮を届けてくれるに違いないと、改めて感じた素晴らしいライブだった。


Text:岡本貴之
Photo:西槇太一

◎公演情報
茅ヶ崎ライブ2023】
2023年10月1日(日)神奈川茅ヶ崎公園野球場

セットリスト
1. C調言葉に御用心
2. 女呼んでブギ
3. YOU
4. My Foreplay Music
5. 涙のキッス
6. 夏をあきらめて
7. Moon Light Lover
8. 栄光の男
9. OH!! SUMMER QUEEN ~夏の女王様
10. そんなヒロシに騙されて
11. いとしのエリー
12. 歌えニッポンの空
13. 君だけに夢をもう一度
14. 東京VICTORY
15. 栞(しおり)のテーマ
16. 太陽は罪な奴
17. 真夏の果実
18. LOVE AFFAIR~秘密のデート~
19. ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)
20. 盆ギリ恋歌
21. みんなのうた
22. マンピーのG★SPOT
En1. ロックンロールスーパーマンRock'n Roll Superman~
En2. Ya Ya (あの時代(とき)を忘れない)
En3. 希望の轍
En4. 勝手にシンドバッド

<ライブレポート>サザンオールスターズ、10年ぶり【茅ヶ崎ライブ】でファンと再会した歓喜と狂乱の宴