サラリーマンを続けるか続けないかは人それぞれですが、間違いなく定年はひとつの区切りとなる転換点。そのタイミングで「今日までおつかれさまでした!」と退職金を手にできれば、それまでの苦労がさっと流れていくでしょう。しかし退職金の金額を聞かれて、思わずムッとするサラリーマンも。なぜなのでしょうか。みていきましょう。

大学卒業して以来、勤続38年・サラリーマンの定年退職金

長年、会社に尽くしてきたご褒美としてもらえる退職金。「退職手当」「退職慰労金」など、会社によって呼び方は異なり、また定年退職時だけではなく、中途退職した場合や解雇の場合でももらえるケースもあったりとさまざま。

そもそも「退職した人に払いなさい」と法律で決まっているわけでなく、会社ごとに規定されている退職金。企業によって退職金の計算方法も異なりますが、多くが退職時の基本給に勤続年数に応じた支給率を乗じて算出します。

では、退職金はいったい「いくら」もらえるものなのでしょうか? 人事院『令和3年民間企業の勤務条件制度等調査』でみていきましょう。

定年退職の場合、勤続年数20年で600万円強。勤続25年を超えると1,000万円を超え、勤続34年になると2,000万円台に。現役で大学に進学し、浪人せずに4年で企業に就職したら、60歳定年で勤続38年。退職金は2,166.3万円になります。

【勤続年数別「会社員の退職金の平均値」】

20年:617.8万円

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25年:1,043.6万円

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34年:2,269.9万円

35年:2,331.8万円

36年:2,437.2万円

37年:2,381.8万円

38年:2,353.2万円

39年:2,166.3万円

40年:2,157.4万円

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45年以上:2,368.6万円

出所:人事院『令和3年民間企業の勤務条件制度等調査』

前述のとおり、退職金は基本給をもとに算出していることが多いことから、同じ勤続年数でも企業規模によってその額は変わってきます。

たとえば大学新卒から一途に尽くしてきた38年のサラリーマン。たとえば従業員1,000人以上企業の定年退職金は、2663.5万円。従業員500~1,000人未満企業で1,864.5万円、従業員100~500人未満企業で1735.2万円、従業員50~100人未満企業で1,692.3万円。従業員規模1,000人以上企業と、従業員100人未満企業では、定年退職金、1,000万円近い差となります。

「退職金額」を聞かれ、なぜ不機嫌になったのか?

ーー退職金、いくらもらいましたか?

定年退職を迎えた(元)サラリーマンに聞いてみると、さまざまな回答がありそうですが、なかには、

ーーころころ仕事を変えてきたからもらってねーよ

という人も。退職金を受け取るための勤続年数に明確な基準はありませんが、厚生労働省の調査では「勤続3年以上」からとする企業が多かったとか。勤めても3年ももたない、という人は、一度も退職金を手にしたことがない人生を歩んでいる可能性も。さらに、

ーーはあっ、退職金⁉

少々、不機嫌なサラリーマン。どういうことなのでしょうか。同調査によると、退職給付制度がない企業は6.9%。従業員1,000人以上企業で2.5%に対し、従業員50~100人未満企業で121.1%と、企業規模が小さいほど、「退職金がない企業」の割合は増えていきます。

退職金がない理由はさまざまですが、「従業員の流動性が高いことや設立から間がないことなどから従業員の在職期間が短い」が36.6%、「年俸制、出来高払い制など従業員の短期的な実績を重視した賃金体系の中で処遇をしている」18.4%、「そもそも定年制がない」が6.2%でした。

ーー退職金がないなんて……

「退職金が当たり前にある」と考えている人にとって、思わず絶句をしてしまうような回答かもしれませんが、退職金の支払い要件にあたらなかったり、そもそも退職金制度がなかったり。定年を迎えたサラリーマン、意外と退職金をもらっていない人は多いのが現実です。

サラリーマンを一喜一憂させる退職金。しかし「退職金を全額投資、でも大失敗!」などの悲劇は枚挙にいとまがありません。一方、退職金がないなら、ないなりの人生設計を考えるもの。不幸をひとつ回避できたと思えば、退職金がないことも良いことかもしれません。

(※写真はイメージです/PIXTA)