今オフ、フリーエージェント(FA)移籍が確実視されているエンゼルス大谷翔平の獲得有力候補にレッドソックスが浮上していると、現地10月5日付のニューヨーク・ポスト」紙が報じた。大谷獲得を狙う別の球団幹部がレッドソックスについて「争奪戦のライバルとして脅威の存在」と話したという。

 レッドソックスは主軸だったムーキー・ベッツ外野手を2020年2月にドジャースへトレードで放出して以降、チーム成績は低迷。かつて初代二刀流ベーブ・ルースの呪い」に苦しんだ名門球団が大谷獲りに名乗りをあげたのは当然だろう。

 ルースは1914年、19歳でレッドソックスに入団。翌1916年に23勝を挙げ、リーグ最優秀防御率もマークして、チームのワールドシリーズ2連覇に貢献した。

 1918年には13勝、11本塁打の「投手として2ケタ勝利、打者として2ケタ本塁打」を人類史上初めて達成。翌19年も当時のシーズン最多記録となる29本塁打を放って2年連続の本塁打王を獲得したが、投手成績は9勝にとどまり、2年連続の「1シーズンでの2桁勝利、2桁本塁打」は逃していた。

 大谷は今年、右ヒジの故障があったものの、この偉業を105年ぶりに更新した。今年8月9日(日本時間10日)、本拠地でのジャイアンツ戦に「2番・投手兼指名打者」で先発出場して今季10勝目(5敗)を挙げ、メジャー史上初の2年連続「1シーズンでの2桁勝利、2桁本塁打」の栄誉とア・リーグ本塁打王を手にしている。

 しかも球聖ルースも大谷も、球団オーナーとフロントに恵まれなかったところまで、残念な一致。1919年オフ、レッドソックスオーナーハリーフレイジーは当時入れ込んでいた映画製作費を捻出するためにルースの年俸をケチり、交渉は決裂。ライバル球団のニューヨーク・ヤンキースにトレードで放出した。結果、ルースはヤンキースでは二刀流を諦め、打者に専念することになる。

 これが1818年に優勝して以降、2004年までの86年間、名門チームをワールドシリーズ制覇から遠ざけていた「バンビーノ(ルースの愛称)の呪い」だ。

 1世紀前の猛省から、レッドソックスが大谷と契約すれば、バンビーノの呪いを完全に祓うべく、全力で大谷の二刀流をサポートするだろう。「ニューヨーク・ポスト」は大谷獲得の根拠として、大谷がレッドソックスの本拠地ボストンに本社があるスポーツ用品メーカーの「ニューバランス」と長期契約を結んでいることを挙げている。

 ただし、大谷の右ヒジ手術をした故フランク・ジョーブ博士の後継者、ニール・エラトロッシュ医師は、ロサンゼルス・ドジャースのチームドクター。大谷の近影を見ると左腕にも大きな治療痕があることから、靱帯断裂した右肘に人工靱帯と左腕の腱を自家移植した「ハイブリッド手術」とみられる。

 右ヒジの完全回復と大谷の選手生命を考えれば、大谷の右肘の状態を熟知するエラトロッシュ医師の全面サポートを受けられるドジャース入りが賢明だろう。赤いソックスとドジャーブルー、大谷に似合うのはどっち?

(那須優子)

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