温厚な性格で知られるジンベエザメは、小さな魚の大群と一緒に泳いでいる姿がよく目撃されている。
これまでそうした小魚たちは、ジンベイザメと一緒にいることで身を守ってもらっているのだと考えられてきたが、実はそうでもないらしいことが判明したそうだ。
オーストラリア、マードック大学の海洋生物学者が撮影した映像には、ジンベエザメと一緒に泳ぐ小魚が、自分よりもっと大きな魚たちにガツガツとむさぼり食われる決定的瞬間がとらえられている。
ジンベエザメの近くが安全ではないのだとしたら、小さな魚は一体何のためにジンベエザメに群がっているのか?
最新の研究によれば、どうやら彼らはジンベイザメをヒッチハイクし、タクシー代わりにしている可能性があるそうだ。
西オーストラリア北西沿岸にある世界遺産「ニンガルーリーフ」では、地球上最大の雑食動物とされる巨大な「ジンベエザメ(Rhincodon typus)」が、小さな魚の群れと一緒に泳いでいる姿が目撃されてきた。
そうした魚たちは、体長20mにもなるジンベイザメと一緒にいることで外敵から身を守っているのだと考えられてきた。
その代わりに小魚たちは、ジンベエザメの体についている寄生虫などを食べて大きな体をきれいにしてくれる。まさにWin-Winの関係を築いていると。
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ジンベイザメに群がる小魚 / image credit:Ollie Clarke Photography
ジンベイザメのそばにいても安全ではなかった
ところがこのほどオーストラリア、マードック大学の研究チームは、こうした定説がじつは間違いであるかもしれない証拠を目撃している。
若いジンベエザメに取り付けられたカメラやダイバーによって撮影された映像では、200匹もの「コガネシマアジ(Gnathanodon speciosus)」の大群が、突然ジンベエザメに群がり熱狂的に何かをやり始めるのがとらえられている。
コガネシマアジは肉食性で、成長すると自然界では120cmもの大きさになる。
なんとコガネシマアジの群れは、ジンベエザメと一緒に泳いでいた自分たちより小さな魚(こちらもアジの仲間)をむさぼり食うために集まってきたのだ。
Trevally gorging on baitfish swimming with whale sharks at Ningaloo Reef in WA
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その間45秒。コガネシマアジは存分に小魚を味わったことだろう。
つまりジンベエザメのそばにいるからといって、小魚たちは決して安全ではないらしいということだ。これまでの定説を覆すような発見だ。
小魚はジンベイザメを移動手段に利用している可能性
ではなぜ小魚は、襲われる危険性があるジンベエザメに群がり一緒に泳ぎたがるのだろうか?
海洋生態学者のクリスティン・バリー氏の説明によれば、小魚はジンベエザメをタクシー代わりにしている可能性が高いという。
「船首波(船首が作る逆V字の波のこと)に乗ることで、貴重なエネルギーを節約しているのです。ジンベエザメをタクシーにして泳いでるんです」
それだけではない。ジンベイザメは巨大な体に似合わず、主に小さなプランクトンを大量に食べて生きている。そしてそれは小魚にとっても大好物なのだ。
つまり小魚はジンベイザメと一緒にいることで、ご馳走にまでありつけると考えられるという。
おっとりで巨大なジンベイザメは自分の意志とは関係なく、その大きな体を様々な思惑を持った魚たちに利用されているようだ。
この研究は『Marine Biology』(2023年9月12日付)に掲載された。
追記(2023/10/06)この記事は解釈に誤りがあったため、すべて書き直したものです。
References:Hungry trevally devour entire schools of whale shark baitfishes / Watch: Trevally swarm to baitfish around whale shark / written by hiroching / edited by / parumo
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