ユニティ州のベンティウで、洪水により浸水した道を歩く男の子たち。(南スーダン、2023年2月撮影) (C) UNICEF_UNI424882_Naftalin

【2023年10月6日 ニューヨーク発】

本日発表されたユニセフ(国連児童基金)の新しい調査報告書によると、気象に関連した災害により、44カ国で6年間に4,310万人の子どもが避難生活を余儀なくされています。これは1日に約2万人の子どもが避難していることになります。

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「気候変動で家を追われた子どもたち(原題:Children Displaced in a Changing Climate)」は、2016年から2021年の間に、洪水、暴風雨、干ばつ、山火事が原因で家を追われた子どもの数を初めて国際的に調査・分析したものであり、今後30年間の予測についても考察しています。

この分析によると、中国とフィリピンは、避難する子どもの絶対数が最も多かった国々です。これは、異常気象に見舞われていること、子どもの人口が多いこと、早期警報と避難能力の向上が進んでいることが要因に挙げられています。しかし、対子ども人口比で見れば、ドミニカバヌアツのような小さな島国に住む子どもが最も暴風雨の被害を受け、ソマリア南スーダンの子どもが最も洪水の被害を受けました。

干ばつから逃れ、国内避難民キャンプで生活する子どもたち。(ソマリア、2023年2月撮影) (C) UNICEF_UN0782205_Sewunet

ユニセフ事務局長のキャサリンラッセルは次のように述べています。「猛烈な山火事暴風雨、洪水が自分たちのコミュニティに押し寄せてくるのは、どの子どもにとっても恐ろしいことです。避難を余儀なくされた子どもたちにとって、その恐怖と衝撃は特にすさまじいもので、彼らには、家に戻れるのか、学校は再開するのか、あるいはまた移動しなければならないのか、といった不安がつきまといます。移動は彼らの命を守ったかもしれませんが、同時に大きな混乱を引き起こしています。気候変動の影響が深刻になるにつれ、気候変動に起因する移動も激しくなります。私たちは、子どもにとってのこの高まる課題に対応するための手段も知識も持っていますが、行動が遅すぎます。私たちは、地域社会に準備を整えさせ、避難のリスクがある子どもたちを保護し、すでに住む場所を追われている子どもたちを支援するための取り組みを強化する必要があります」

2016年から2021年の間に記録された子どもの避難者数のうち、洪水と暴風雨が主要因であったのは、95%に相当する4,090万人でした。これは、一つには、報告がより適切に行われ先行避難がより多く実施されたことが理由にありました。一方、干ばつは130万人以上の子どもの国内避難の引き金となり、最も大きな影響を受けたのは、またもやソマリアでした。また山火事により81万人の子どもが避難を余儀なくされ、その3分の1は2020年のみで占められています。なかでも、カナダイスラエル、米国は、データ分析システムを基に早期の警報発令や防災計画が整っていることを背景に最多の人数を記録し、その多くが先行的な避難でした。

災害に直面した際や、先行的な避難行動を取る際、人々は強制的かつ突然に移動しなければなりません。こうした場合、命は守られるかもしれませんが、それでも多くの子どもが、しばしば長期間、家を追われることに伴う危険や困難に向き合うことになります。

紛争や貧困など、すでに重複する危機と闘っている国々では、新たに避難する子どもたちへの現地の対応が難しくなっているため、子どもたちは特に避難のリスクにさらされています。

テクナフ郡で、サイクロン「モカ」により破壊された自宅前に立つ女の子。(バングラデシュ、2023年5月撮影) (C) UNICEF_UN0842861_Himu

たとえばハイチは、災害による子どもの避難のリスクがすでに高いなか、暴力と貧困にも苦しんでおり、リスク軽減と防災への資金投入も限られています。モザンビークでは、都市部を含む最貧困層のコミュ ニティが、異常気象の影響を不釣り合いに大きく受けています。このような国々は、将来的な移動のリスクにさらされている脆弱な立場の子どもの数が最も多く、対処能力や資金が限られているため、リスクの軽減およびリスクへの適応と備えのための取り組みと資金調達が最も急務なのです。

本報告書は、国内避難モニタリングセンター(IDMC)が開発した災害避難リスクモデルを用い、現在の気候データに基づいて、河川の洪水は今後30年間に約9,600万人の子どもを避難させる可能性があり、サイクロンなどの熱帯低気圧と高潮は、同じ期間にそれぞれ1,030万人と720万人の子どもを避難させる可能性があると予測しています*。気候変動の結果、より深刻な気象現象がより頻繁に起こるため、実際の数字はほぼ間違いなくそれ以上となると考えられます。(*予測での災害の定義が過去の分析と異なるため、両者を直接比較することはできず、また予測には先行避難は含まれていません)

ユニセフは、最もリスクの高い国々の政府と協力して、避難リスクへの備えを強化し、そのリスクを最小限に抑えるとともに、子どもに対応した災害リスク軽減・気候変動適応戦略を策定・実施しています。また、災害発生前、発生中、発生後に子どもたちを保護し、支援の手を差し伸べるための、災害に強く持ち運び可能なサービスを設計し、状況ごとに異なる脆弱性に対応した解決策の提供にも取り組んでいます。

11月にドバイで開催されるCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)に向け、各国首脳が準備を進めるなか、ユニセフは各国政府、ドナー、開発パートナー、そして民間セクターに対し、将来的な移動のリスクにさらされている子どもや若者を保護し、彼らや彼らのコミュニティが準備を整えられるよう、以下の行動を取ることを強く求めます。

  • 「PROTECT(保護する)」:すでに家を追われている子どもや若者も含め、気候変動により悪化した災害や避難の影響から子どもと若者を守る。教育、保健、栄養、社会的保護、子どもの保護など、子どもにとって必要不可欠な支援を、危機に対応でき、どこででも実施可能でインクルーシブなものにすることで、実現する。

  • 「PREPARE(備える)」:子どもと若者の適応力と回復力を向上させ、彼らをインクルーシブな解決策探求に参画させることで、彼らが気候変動の世界で生きていくための準備を進める。

  • 「PRIORITIZE(優先する)」:すでに始まっている未来の危機に備えるため、災害や気候変動への対応行動、資金調達、人道・開発政策および投資において、すでに家を追われている子どもや若者も含め、子どもと若者を優先させる。

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注記

ユニセフは、国内避難モニタリングセンター(IDMC) のデータを分析し、気象による災害に関連した過去の子どもの避難を明らかにするとともに、IDMCのリスクモデルを用いて、将来の子どもの避難の推定リスクを予測しました。この分析は、パトリック・J・マクガバン財団の支援を受けて行われました。

ユニセフについて

ユニセフUNICEF国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

配信元企業:公益財団法人日本ユニセフ協会

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