自分の子どもの写真がSNS等をはじめインターネット上に掲載されることには、大きな「リスク」が潜んでいます。第三者による場合のみならず、自らわが子の写真等を掲載するのも慎重でなければなりません。その法的な問題点や、実際に起きてしまった場合の対処法等について、1児の母であり、子育てに関わる法律問題に詳しい弁護士・高橋麻理氏の著書『子育て六法』(日東書院本社)より、一部抜粋してご紹介します。

子どもの顔写真や名前が「無断」で園のホームページに掲載されたら?

子どもの顔写真や名前が無断で園のホームページに載っていて、掲載をやめさせたい…そういった相談を受けることがあります。

保育施設等が無断で子どもの名前や顔写真等をSNSを含むネット上に掲載することは、プライバシー権、肖像権の侵害になり得る行為です。また、人権の侵害という以上に、子どもの名前や顔写真等をだれもが見られる場に公開することは、子どもを危険にさらす行為にもなり、見過ごすわけにはいきません。

もしも、無断で名前や顔写真等を掲載されてしまったら、ただちに公開をやめるように求めるべきだと考えます。

最近は、保育施設のホームページ等でも、個人を特定できる画像や情報の公開には厳重に注意していることが多いようです。写真の閲覧ページにはパスワードが必要だったり、顔がわからないように加工して公開されていたりします。入園時に、顔等がわからない状態にすることを前提に、掲載を了承するかどうかを保護者に書面で確認する運用が行われていることもあります。

しかし、保育施設等において、子どもの名前や顔写真等の取扱いについて、それぞれの職員の規範意識が不十分である可能性もあります。職員が、保育施設の子どもたちの顔写真等を個人のSNSに投稿してしまうなどの不安もぬぐえません。

そのようなことがないように、保育施設全体で子どもたちのプライバシー権、肖像権を守る重要性をしっかり定着させるよう求めるのがよいと思います。保育施設において改めて全職員による研修の場を設けるなどして、ルールの確認、周知を図るよう求めましょう。

なお、お友達の保護者が、わが子も写っている写真をSNS等に無断で投稿してしまうといったこともあるでしょう。家庭により考え方は様々ですし、悪意はないでしょうから、トラブル防止のために「うちは子どもの写真は公開しない方針だから、お互い限りで共有して、SNS等には投稿しないようにしましょうね」「SNSに投稿する場合は、顔にスタンプをつけるなど加工をした上で、一言お知らせしてください」などと事前に伝えておくとよいかもしれません。

「わが子の写真」や「子育てエピソード」のSNS投稿にもリスクが…

前項でお伝えしたのは、「他者」が子どもの写真等をネット上に公開する行為に関することです。しかし、自分の子どもの写真や育児エピソード等の情報をSNS等に投稿する場合についても、注意が必要です。

たしかに、保護者自身の意思であれば他人との間でトラブルは生じないのかもしれません。また、ふだん会うことのない知人や親戚などに子どもの近況を知らせることができるという利点もありそうです。SNSに投稿された育児エピソードに元気づけられた経験をおもちの方もいるかもしれません。

しかし、子どもに関わる情報をSNS等で公開することについては、いろいろなリスクが考えられます。

たとえば、子どもの写真が誹謗中傷の対象になったり、性的な目で見られたりすることが考えられます。その写真が第三者のSNS等に投稿され、心ないコメントとともに拡散される可能性もあります。写真に写る背景や他の投稿と合わせ、自宅や通っている保育施設などが特定されて危険な目に遭うおそれもあります。

また、仮に今は子ども本人が顔写真等を公開されることについて確たる意思をもっていなくとも、成長とともに意思が形成され、あとあと「自分の顔写真をSNSに公開されたくなかった」と考えるかもしれません。

匿名で、写真などもつけないエピソードの投稿なら個人が特定されることはないから問題ないと考えるかもしれません。しかし、子どもは親と別人格で、独立した人権があります。ですから、子どものことを勝手に投稿するのは、内容によってはプライバシー権の観点から問題があります。仮に「エピソード」だけであっても、見る人が見れば個人を特定でき、それによって子どもがいじめ等の被害に遭うことも想定されます。

子どものことをSNS等に投稿することでどんなリスクがあり得るかを検討し、慎重に考える必要があると思います。投稿の公開範囲を限定したり、顔や背景がわからないように編集したりする方法も選択肢に入れながら、子どもにリスクが及んだり、子どもの心に傷を負わせたりすることがないようなSNS利用の仕方について考えてみるのがよいと思います。

高橋 麻理

弁護士法人Authense法律事務所

弁護士

(※写真はイメージです/PIXTA)