文=酒井政人

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駒大vs.中大のファーストラウンド

 10月9日に三大駅伝のスタートとなる出雲駅伝が開催される。6区間45.1㎞と距離は短く、「スピード駅伝」と呼ばれるが、「強さ」も求められる。近年は気温が高く、後半区間は向かい風になることが多いからだ。

 今大会は連覇を目指す駒大と今季5000mの記録を大幅に短縮している中大の〝2強対決〟が濃厚だ。今年の箱根駅伝で両校は往路で激しいトップ争いを演じており、今季はともに「駅伝3冠」がターゲット。初戦の出雲からエキサイティングな戦いが繰り広げられるだろう。

 駒大は鈴木芽吹、赤星雄斗、花尾恭輔、安原太陽(いずれも4年)、篠原倖太朗、庭瀬俊輝(ともに3年)、伊藤蒼唯、佐藤圭汰、山川拓馬(いずれも2年)、安原海晴(1年)を選手登録。前回は1区花尾が区間2位で好発進すると、2区佐藤、5区安原、6区鈴木が区間賞に輝いた。今季前半に故障のあった花尾は昨年ほどの状態ではないかもしれないが、安原はワールドユニバーシティゲームズ5000mで銀メダルを獲得。鈴木もホクレンディスタンスチャレンジ千歳大会5000mで13分24秒55の自己ベストで走るなど、前回以上の走りが期待できそうだ。

 前回欠場した篠原は前々回で1区(8位)を担当。今季は4月に10000mで27分43秒13を叩き出している。5月以降は調子を落としたが、順調に仕上がっていれば主要区間(1、3、6区)を担うことになるだろう。

 箱根駅伝で活躍した赤星、伊藤、山川は5月の関東インカレでも結果を残しており、庭瀬は夏合宿で成長した選手。悩ましいのは前回2区でトップに立った〝スピードスター〟の起用だ。佐藤は10月4日アジア大会の男子5000mに出場(6位/13分39秒18)。中国・杭州から6日に帰国して、7日に出雲入りする予定だという。レースと移動の疲労で、どれほどのコンディションなのか。藤田敦史監督は佐藤抜きでの戦いを準備しつつ、直前まで状態を見極めてから区間配置を決めるという。どんなオーダーで初采配を振るうのか。

吉居兄弟が爆走するか

 中大は湯浅仁、中野翔太、吉居大和(いずれも4年)、阿部陽樹、浦田優斗(ともに3年)、溜池一太、吉居駿恭、吉中祐太(いずれも2年)、柴田大地、本間颯(ともに1年)をエントリーした。

 注目は吉居兄弟だ。兄・大和は10月1日の世界ロードランニング選手権5㎞に出場。35位(14分11秒)に終わったが、学生駅伝は4大会連続で区間賞を獲得中。弟・駿恭は9月30日アスレチックスチャレンジ5000mで13分22秒01(日本人学生歴代6位)をマークしている。

 なお前回は1区吉居大、3区中野、4区阿部、5区溜池、6区吉居駿というオーダーで3位だった。順当なら今回も吉居兄弟と中野がロング区間(1、3、6区)を担うはず。溜池も9月の日本インカレ5000mで5位に入っており、戦力的には駒大とほぼ互角だ。吉居兄弟が〝爆走〟すれば初優勝が見えてくる。

 

「3位以内」を目指す國學院大、早大

 前回2位の國學院大は昨年以上に面白い。今季は10000mで平林清澄が27分55秒15、山本歩夢(ともに3年)が28分16秒92、青木瑠郁が28分32秒90、上原琉翔(ともに2年)が28分36秒44をマーク。前回、6区で中大を逆転した主将・伊地知賢造(4年)は7月に5000mで自己ベストを更新して、9月の日本インカレ10000mで日本人トップに輝いている。チーム目標は「表彰台」だが、4年ぶりの優勝を狙う〝攻撃的な戦略〟を期待せずにはいられない。

 早大は主力が充実している。今季は石塚陽士、伊藤大志(ともに3年)、山口智規(2年)が5000mで13分35秒前後の自己新をマーク。関東インカレでは〝3本柱〟が活躍して、工藤慎作(1年)も1部10000mで6位に入った。主将・菖蒲敦司(4年)は前々回の1区を区間2位と好走。今季はワールドユニバーシティゲームズの3000m障害で銅メダルを獲得した。他にもスピードのある間瀬田純平(2年)、山﨑一吹(1年)らがいる。チーム構成を考えると、三大駅伝では出雲が一番のチャンスになるだろう。

 

好調な青学大、創価大と城西大も上位進出の期待

 青学大は前回4位メンバー4人が卒業するも、9月24日の絆記録挑戦会5000mで好タイムを続出。山内健登(4年)の13分35秒04を筆頭に、佐藤一世(4年)、黒田朝日(2年)、鳥井健太(1年)、野村昭夢(3年)、小原響(4年)が13分30秒台の自己ベストで走破した。チーム状態は上向きで、目標の「学生駅伝3冠」に向けて突っ走りたい。

 9月24日の絆記録挑戦会5000mでは創価大の小池莉希(1年)が青学大勢を抑えて、13分34秒82で日本人トップを奪った。創価大は日本インカレでも大活躍している。留学生3人が出場者した5000mでリーキー・カミナ(3年)が優勝。小暮栄輝(3年)が日本人2番の9位に食い込んだ。同5000mでは織橋巧(1年)が7位入賞を果たしている。3区はカミナが濃厚で、後半の向かい風区間には東海大から転入した吉田響(3年)の起用も考えられる。序盤で好位置につけることができれば、中盤以降はトップ争いに加わりそうだ。

 前回5位の順大はブダペスト世界選手権3000m障害6位入賞のエース三浦龍司(4年)と5000mで高校記録を持つルーキー吉岡大翔のスピードが魅力。城西大は山本唯翔(4年)、斎藤将也、ヴィクター・キムタイ(ともに2年)の3本柱が強力だ。両校ともオーダーの組み方次第では上位争いに加わる可能性を秘めている。

 大阪経大と立命大は5日後の箱根駅伝予選会に出場予定。そして4年ぶりにアイビーリーグ選抜が出場する。

 今季、「駅伝3冠」という目標を掲げているのは駒大、中大、青学大の3校。神在月の戦いで野望に一歩前進するのはどの大学か。

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