サンダンス映画祭を沸かせた最高にホットな『シアター・キャンプ』が10月6日より公開中。夏休みに開校される合宿型の人気演劇スクールを舞台に、教師&子どもたちが一丸となって新作ミュージカルを完成させていくプロセスをユーモア満載で描いたコメディドラマだ。

【写真を見る】波乱だらけのキャンプが、感動のクライマックスになだれこむ爽快感あり!

高校時代を飾るダンスパーティ“プロム”と並び、海外の若者文化を象徴する行事の1つとなっているサマーキャンプ。小学生から高校生まで、幅広い年齢の子どもたちが数週間にわたり共に過ごす夏のイベントだ。主催団体はシティ、教会、プライベートなどいくつかあり、テーマや目的も実に様々。ということで、今回は様々なジャンルのサマーキャンプムービーをご紹介しよう。

■感動ミュージカルや戦慄ホラーまで。夏休みのキャンプは感動とハプニングがいっぱい!

記憶に残るサマーキャンプムービーとしてまず紹介したいのは、ウェス・アンダーソン監督の『ムーンライズ・キングダム(13)1960年代のニューイングランド沖にある小さな島を舞台に、12歳の少年サム(ジャレッド・ギルマン)と少女スージー(カーラ・ヘイワード)の“恋の逃避行”を描いた。

ボーイスカウトサマーキャンプから脱走したサムは1年前から愛を育んできたスージーと駆け落ちし、島の入江にある誰も知らない王国“ムーンライズ・キングダム”を目指す。鮮やかな色彩とサム&スージーの純真かつ無鉄砲な恋がたまらなくキュート!さらにブルース・ウィルスエドワードノートンビル・マーレイ、フランシスマクドーマンド、ティルダ・スウィントンらがひと癖あるキャラクターたちを演じるなど、アンダーソンワールドの原形ともいうべき持ち味がいっぱい詰まった作品となっている。

そして不良少年サマーキャンプに参加したことをきっかけに、自分の居場所を見つけるエモーショナルなミュージカル映画が『サマーキャンプ』(21/Netflix)。パトカーを盗んだウィル(ケヴィン・クイン)は、少年院に入る代わりに教会のサマーキャンプに参加することに。そこで出会った少女の助けも借りながら、新たな友人たちとの交流や信仰を通じて生きる希望を見つけていく姿にジーンとさせられる。

サマーキャンプはあの有名なオバケ一家のエピソードにも。アダムス家に赤ん坊が誕生する『アダムス・ファミリー2』(93)では、彼らの財産を狙うベビーシッター兼ナニーのデビー(ジョーン・キューザック)に邪魔者扱いされた長女のウェンズデー(クリスティーナ・リッチ)とその弟パグズリー(ジミーワークマン)が、サマーキャンプに押し込まれてしまう。案の定2人はキャンプで異質の存在となるが、なんとウェンズデーはそこで出会った根暗な少年に恋心を抱くうれしはずかしの展開に。

同じくサマーキャンプで運命的な出会いをする『ファミリー・ゲーム/双子の天使』(99)では、両親の離婚によって離ればなれになっていた双子が8週間のサマーキャンプで再会。その双子を一人二役でリンゼイ・ローハンが演じ、両親を復縁させようと様々な奔走する姿が最高にキュートだった。

さらに「フィアー・ストリート」3部作の第2弾『フィアー・ストリート Part 2:1978』(21/Netflix)ではサマーキャンプが戦慄ホラーの舞台として登場。1994年、呪われた町のサマーキャンプに参加したティーンエイジャーたちが新たな殺人のターゲットに。楽しかったキャンプ場が殺戮現場と化していく。

■演劇養成スクールにはスターを目指す“変わり者たち”が集結!

近年では日本からの参加者も増えているというサマーキャンプ。大自然満喫型はもとより、ダンスなど特化型のなかでも現地のティーンたちに人気があるのは演劇キャンプだという。50年近い歴史を持つ「ステージドア・マナー・サマーキャンプ」はロバートダウニーJr.やナタリー・ポートマン、ブライス・ダラス・ハワード、アンセル・エルゴートなども参加した名門俳優養成キャンプとして知られている。

俳優・脚本家であるトッド・グラフの初監督作で、自身のステージドア・マナーへの参加経験をベースにつむがれた『キャンプ』(03)は、ミュージカル俳優養成キャンプを舞台とする青春ドラマだ。ハンサムだが秘密を抱えるヴラッド(ダニエル・リタール)やゲイのマイケル(ロビン・デ・ヘスス)、モテないエレン(ジョアナ・チルコート)など、歌や踊りが大好きなティーンたちが演劇キャンプの経験を通じて成長していく。アナ・ケンドリックがこの作品でスクリーンデビューを飾ったほか、俳優の卵たちによる本格的なミュージカル・シーンも見どころとなっている。

そして『シアター・キャンプ』は、演劇サマーキャンプに集うクセ強めの教師と個性豊かな子どもたちの奮闘をモキュメンタリースタイルで描いたコメディドラマだ。ニューヨーク州北部の湖畔にある「アディロンド・アクト」は、長年ミュージカル・スターを目指す子どもたちが参加する人気演劇スクール。しかし校長が昏睡状態に陥ったことで、経営破綻寸前であることが発覚する。そこで彼らは3週間で新作ミュージカルを完成させて出資金を募り、スクールを存続させることを思いつく。

作品を良くするために時として厳しいことも言い放つ教師と、スターを夢みてダンスや歌のレッスンに明け暮れる子どもたち。芸術のためにその身を捧げる彼らが自らのことを“変わり者”と称しているのが印象的だ。本作では子どものみならず裏方となる教師やスタッフたちの悩みや激務もコミカルに語られ笑いを誘うが、最初はバラバラだった彼らが、生活を共にしながら最高の舞台を作り上げるために次第に心を通わせ合う姿は胸アツ。クライマックスのミュージカル・シーンはまばゆい輝きを放っていて、その見事なパフォーマンスの数々には誰しも心トキメクことだろう。

笑いあり、涙あり、喜びありの『シアター・キャンプ』。最高にハッピーになれる感動作をこの機会に堪能してほしい。

文/足立美由紀

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