才能あふれるミュージシャンを次々と輩出するニコニコ動画。中でも現在注目を集めているのが、ピアニストであり作曲家としても活躍するまらしぃだ。2010年のメジャーデビュー以降、単独でのピアノライブツアーや、トヨタ自動車アクア」のTVCMでの演奏、さらには嵐のアルバムにも参加するなど活動の幅を広げている。彼はいったい何者なのか。これまでの軌跡を追った。

【関連】演奏中の「まらしぃ」フォトギャラリー

 1990年愛知県名古屋市に生まれたまらしぃは、幼少の頃より本格的にクラシックピアノを習う音楽少年だった。しかし、中学生になってピアノ教師と衝突し、一旦はピアノから遠ざかることになる。そんな彼を再び音楽の道に引き戻したのが、パズルゲーム「ぷよぷよ」とニコニコ動画の存在だった。

 「高校生くらいから『ぷよぷよ』に熱を入れていて、ネット対戦もしていました。そのときできたネットの知り合いに紹介されたのが東方Projectの"ネイティブフェイス"だったんです。すごくかっこいい曲で、これをピアノで弾けたらと思いました」。

 一週間ほど特訓して勘を取り戻し、投稿した動画は瞬く間に大ヒット。衝撃的なデビューを飾ることになる。それまで、まらしぃにとってピアノといえば先生に聞かせるものだったが、ニコニコ動画を通じてたくさんの人に聞いてもらうという喜びを知り、再び情熱を取り戻していく。

 その後、6年間にわたってまらしぃは動画を定期的に投稿し続けている。ニコニコ動画からメジャーデビューしたアーティストの中には動画投稿をやめてしまう者も少なくないが、まらしぃは「僕にとっては今でも動画投稿がメインの活動」と言い切る。

 「CDを出したり、その他のお仕事もいただいたら全力でやります。で、そこで得たものを自分の巣であるニコニコ動画に持ち帰って、また動画を投稿したいんです。将来の目標は、10年や20年続けて"まだいるのかお前"って言ってもらうことです(笑)」。

 そんな彼には、各方面から仕事のオファーが殺到している。2013年にはトヨタ自動車ハイブリッドカーアクアTVCMで、Perfumeの「チョコレイト・ディスコ」と初音ミクの「千本桜」、2014年には人気ゲーム『ファイナルファンタジー』のテーマ曲「プレリュード」をカバー。自分の演奏が流れてきたときは、大学の合格発表よりも心臓が跳ね上がったとまらしぃは笑う。

 「当時は髪の色が真っ赤で大学にもあまり行っていなかったこともあり、祖父と折り合いが悪かったんです。でも、TVCMで自分の演奏が流れたことで、祖父にもやっと認めてもらえて、和解できました」。

 さらに2014年には、国民的グループ「嵐」のアルバム「THE DIGITALIAN」に収録されている二宮和也のソロ曲「メリークリスマス」でピアノ演奏を担当。そのきっかけとなったのは、ゲーム好きの二宮がユーチューブを通じてまらしぃの存在を知り、「この人に弾いてもらいたい」と言ったことだったという。

 「二宮さんに聴いてもらえたことも喜びですし、この人に弾いてほしいと言っていただけることはピアニストにとっては最大級の賛辞なんです。嵐ファンの方からも、"聴いたよ!"というメッセージをたくさんいただけて、それもまた嬉しかったですね」。

 順調にミュージシャンとしての階段を登っていくまらしぃが次に挑戦するのは、今冬配信予定のスマホアプリ「風パズル 黒猫と白猫の夢見た世界」テーマ曲「風ハ旅スル」だ。まらしぃ自身が書き下ろしており、ゲームの世界観をイメージした爽やかな楽曲に仕上がっている。 "旅する風"――それはまさにまらしぃのピアニスト人生そのものだ。(取材・文・写真:山田井ユウキ

オファー殺到のピアニストまらしぃ、活動の原点は「動画投稿」 クランクイン!