不整地を走行することが求められている戦車。その汚れた車体はどのような方法でいつ洗うのでしょうか。どうせ汚れるなら洗車なんて……というわけではありません。

キレイにするのは意味がある!

砂利道、泥道、雪道と不整地を難なく走行することも役目ひとつである戦車、不整地を走ることが多いということでひとつ気になることが、洗車はどうしているかということです。「どうせ汚れるから頻繁にしなくても」というわけではないようです。

陸上自衛隊岩手駐屯地の公式X(旧:Twitter)によると、使用した戦車は、訓練終了のたびに洗車を行っているそうです。常に車体をキレイに保つということは、なにか車両に異常があった場合、速やかに発見することにつながるため重要なのだとか。

当然ながら、一般的なクルマのようにドライブスルー洗車機に入れたまま、機械が勝手に水洗いや車体みがきをしてくれるわけではありません。そもそも洗車機には入りませんので、コイン洗車場にあるような高圧洗浄機を使い、人力で車体上部から下に向かって汚れを落としていくことになります。

特に履帯(キャタピラ)や、それを回転させる転輪にこびりついた泥は戦車の自重で圧縮されているためかなり頑固なようです。

そのため、戦車が配備されている陸上自衛隊の各駐屯地では、「泥落とし」と呼ばれる自作のへら状の鉄製工具を自作し、それで固められた泥や土をほじくり出し、完全に除去します。履帯や転輪は、戦車が走行するためには欠かせない足回りということで、特に気を使うのだとか。ただの掃除ではなく、重大な欠陥をいち早く発見するための予備整備も兼ねているというわけです。

また、射撃訓練を行った後は砲身の清掃もします。戦車砲に限らず、砲身の清掃はかなり力仕事になっており、ほかの車両の乗組員も参加して、専用のブラシで掃除を行います。

というのも砲身に不純物があると、トラブルの原因になるからです。2010年8月20日には、土が詰まったまま発射した90式戦車の砲身の先端約40cmが吹き飛ぶ破裂事故が発生したこともあります。

90式戦車を洗車する自衛隊員(画像:陸上自衛隊)。