暑さが和らぎ、涼しく過ごしやすい気温の日が増えつつあります。夏から秋への季節の変わり目は、だるさや食欲不振といった体調の変化・不調が起こりやすく、「秋バテ」といわれています。実は、この「秋バテ」は犬にも起こり得るようで、「涼しくなってきたのに不調?」と驚く飼い主もいるようです。犬の「秋バテ」とはどのようなものなのか、ますだ動物クリニック(静岡県島田市)院長で獣医師の増田国充さんに聞きました。

要因の一つに「寒暖差の大きさ」

Q.犬にも「秋バテ」の症状がみられることがあるというのは事実でしょうか。

増田さん「事実といえます。個人的な見解が含まれますが、少々暑さが落ち着いてきた9月後半あたりから、いわゆる『秋バテ』と思われる体の不調で来院する犬や猫が増えてきたように感じます。

ここでいう『秋バテ』とは、特定の疾患を指すものではなく、『何となく元気がない』『食欲が低下している』『軟便や下痢、時折吐き気を催す』といったような不調が生じ、その不調に由来する特定の原因(食べ過ぎた、激しい運動をした、など)が見当たらないことが多い点にあります」

Q.犬が「秋バテ」を起こす原因として、どのようなことが考えられますか。

増田さん「今年の夏はとりわけ暑かったわけですが、やっと朝晩は冷房が必須という温度ではなくなってきています。9月後半から10月にかけて、日中の気温はまだまだ30度前後になる可能性が高いといわれていますが、最低気温は下がってきています。つまり、寒暖差が大きくなっていることが一つの要因となります。

また、気温は徐々に下がっていても、まだまだ冷房を多用しがちであるため、夏場に比べて冷房が効き過ぎて『冷え』を招くことがあるかもしれません。外部の環境の変化に合わせて、本来、体がそれに順応していく必要があるのですが、暑さの疲れによって自律神経の働きが低下しやすくなり、こうした変化に十分に適応できなくなることで、結果として不調が現れると考えられます。これらは、人間が秋バテを生じる理由と同様です。

東洋医学的な見方をすると、9月は暦の上で秋となります。秋は五臓の『肺』の影響を大きく受ける季節です。東洋医学において、肺は呼吸器としての役割だけでなく、『衛気(えき)』と呼ばれる体の防衛力に大きく関連する部分です。ここに負担がかかりやすいため、体の防衛機能が低下して不調が現れるというふうに考えることもできます」

Q.犬が「秋バテ」を起こしてしまったら、どうすればいいですか。

増田さん「この時期は人間も犬も、体調管理がとりわけ重要となります。長い夏の暑さで疲れがたまっていることが多いため、生活サイクルに乱れを生じないように、適度な運動や食事、睡眠を心がけましょう。

犬の体の不調は一過性の場合もありますが、体力が低下していると、回復までに時間がかかってしまうこともあります。このようなとき、なかなか飼い主自身で判断がつけにくいことが実際多いと思います。

そうした場合は、早めに動物病院を受診されることをお勧めします。秋の疲労による不調、あるいはそれ以外の病気が潜んでいる可能性もあるかもしれません。多くの時間、愛犬と接しているからこそ気付ける変化があると思うので、気になる兆候があったら相談、来院を検討してみてください」

Q.夏から秋への季節の変わり目、犬の体調管理について飼い主が意識・注意した方がよいこととは。

増田さん「一般に、人間が調子を崩すタイミングと、犬の不調が増える時期はおおむね似ています。季節的に気温が日増しに下がっていき、また昼間の長さも短くなります。高温状態に体が慣れている場合、少し涼しいときであっても、思った以上に体に『冷え』が入りがちです。冷たいものをたくさん摂取して、おなかに無理を掛けないように心がけてください。

また、今年は夏が暑すぎたため、日中に散歩に行く機会が少なく、秋口から一斉に活動量が増えることがありますが、徐々に慣らしていくこと、そして疲れが出やすい時期でもあるため、消化に負担にかからない良質な食事と十分な睡眠を取り、寒さに対応できる体の下地をつくっておく時期にあててみましょう。

秋が短くなり、これまでより変化が著しくなっているように感じます。無理をせず、気になることがあれば早めに動物病院にご相談ください」

オトナンサー編集部

犬も「秋バテ」するの?