今年開催された木更津航空祭で初めて一般公開された陸上自衛隊V-22オスプレイ」。そのなかで1機だけに施されていたスペシャルマーキング、鳥と数字を用いた八角形デザインの意味を製作者に聞きました。

陸自V-22初の一般公開となった2023年の木更津航空祭

千葉県木更津市にある陸上自衛隊木更津駐屯地で2023年10月1日(日)、「第49回木更津航空祭」が開催されました。

新型コロナの影響により、一般市民を受け入れた、いわゆる来場制限のない形での実施は実に4年ぶり。また、機体に日の丸を描いた陸上自衛隊仕様のV-22が今回初めて公開され、多くの注目を集めていました。

V-22は「オスプレイ」の愛称で知られるアメリカ製のティルトローター輸送機です。陸上自衛隊では、第1ヘリコプター団隷下に編成された輸送航空隊で集中運用する計画です。

防衛省の発表によると、輸送航空隊は人員約430名からなり、隊本部とそこをサポートする本部中隊のほかに、第107飛行隊、第108飛行隊、第109飛行隊の3個飛行隊と、輸送航空野整備隊が編成されています。

このうちV-22が配備されるのは第107飛行隊と第108飛行隊で、今回の木更津航空祭では2機が編隊飛行や訓練展示を行い、別の2機が地上展示に用いられていました。

地上展示されていたV-22は、1機がプロペラを広げ上に向けた状態、もう1機がプロペラを畳んで前に向けた状態と、それぞれ異なる形態で披露されていましたが、よく見るとさらに違うポイントを見つけることができました。

それがスペシャルマーキングの有無です。

激レア部隊マーク、製作者を直撃!

地上展示されていたV-22オスプレイ」2機のうち、プロペラを広げ上に向けた状態であった方、機体番号91705号機にだけ、垂直尾翼にスペシャルマーキングが施されていました。

傍らにいた隊員にハナシを聞いたところ、これは今回の木更津航空祭に合わせて行ったものだそう。なぜ、この1機だけなのかについては、そもそもオスプレイにはこういったマーキングを施すことはないからで、必要なくなったら剥がしてしまうとのことでした。

説明によると、垂直尾翼のスペシャルマーキングはステッカーシールを貼る形なのだとか。ゆえに短時間で用意できるほか、前述のように必要なくなったら剥がして元に戻すことも比較的簡単に行えるといいます。

マークに描かれた108の数字が表す通り、このスペシャルマーキングが施された機体は第108飛行隊の所属機です。デザインは、民間のイラストレーター/デザイナーの今井ミリさんが手がけたとのこと。そこで、意匠などについてハナシを聞いてみました。

彼女はもともと、第108飛行隊の上級部隊である輸送航空隊のエンブレムデザインを手掛けていたのだそう。その縁で、第108飛行隊のエンブレムに関してもデザインコンペに参加しないかと声をかけてもらったといいます。

第108飛行隊だから「八」がモチーフ

今井ミリさんによると、V-22運用部隊としては第107飛行隊もあるため、第108飛行隊としてのオリジナリティを出したいという意見をもらったのだとか。そこで、隊員と相談して8にちなんだ日本古来の神話の神である八咫烏(やたがらす)をメインデザインにすることにしたといいます。

八咫烏は古来より導きの神、交通安全の神様というところから、航空安全の願いを込めています。八角形にしたのも、古来より魔を祓い、幸せを引き寄せる神聖な形だからです。また、背景に描いたのは三種の神器のひとつである八咫の鏡。これも、中央部分のデザインが八角形になっているため、デザインとして採り入れました。古来より伝わる神聖な意匠を用いることで、日本人により受け入れられ、愛される部隊になるようにといった願いを込めています。」

八咫烏の下側にある108の中の「0」だけ真ん中が赤くなっているのは日の丸をイメージしているからで、背景色がグレーなのはV-22の機体カラーを反映してだそう。彼女いわく日本を守護し、良い方向へ導く守り神のような存在となって欲しいとの思いが含まれているとのことでした。

隊員によると、今後も各地で輸送航空隊のV-22を展示するそうなので、機体のやりくりやタイミングなどが合えば、もしかしたらスペシャルマーキングを間近で見る機会が巡ってくるかもしれません。

第49回木更津航空祭で展示された陸上自衛隊のV-22(乗りものニュース編集部撮影)。