デンゼル・ワシントンが自身にアカデミー賞主演男優賞をもたらした名作『トレーニング デイ』(01)のアントワーン・フークア監督と再タッグを組んだ「イコライザー」シリーズ。その最新作にして最終章となる『イコライザー THE FINAL』が公開中だ。

【写真を見る】デンゼル・ワシントンが19年ぶりに共演したダコタ・ファニングを絶賛「彼女は無限の才能を持っている」

本作でワシントンが演じているのは、19秒で世の悪を完全抹消する闇の仕事請負人“イコライザー”として暗躍する元CIAトップエージェントのロバート・マッコール。法や警察が介入できない不正や暴力に苦しむ弱き人々の味方として、冷静沈着に悪を抹消するマッコールだが、彼が動きだすきっかけを作ってきたのはいつも女性。そこで本稿では、マッコールの運命を大きく左右してきたシリーズの歴代ヒロインたちを振り返っていこう。

■深夜のダイナーで出会った、歌手を夢見るテリー

シリーズ第1作『イコライザー』(14)のヒロインは、ロシアマフィアに売春を強いられ、激しい暴力を浴びせられているテリー(クロエグレース・モレッツ)。ホームセンターに勤め、同僚からの人望がありながらも不眠症を患っているマッコールは、深夜のダイナーでテリーと出会う。

テリーを演じたモレッツは当時まだ16歳。大人とも子どもとも言い切れない年齢で、あどけなさの残る顔に似つかわしくないメイクを施し、歌手になることを夢見ながらマフィアに囲われている娼婦という設定は、どこか『タクシードライバー』(76)のジョディ・フォスターを彷彿とさせるものがある。

そんなテリーはある日、客に殴られ、さらにマフィアから見せしめのために痛めつけられて昏睡状態に陥ってしまう。その姿を見て、眠っていた正義感に火をつけたマッコールは単身でマフィアのアジトへ乗り込んでいく。自身のストップウォッチで敵を倒すタイムを確認する名シーンも、こうして生まれることとなった。

■マッコールの唯一の理解者、元上司のスーザン

奇しくも“タクシードライバー”へと転職したマッコールの姿が描かれた『イコライザー2』(19)では、マッコールが唯一心を許している存在であるCIA時代の元上司スーザン(メリッサ・レオ)が何者かによって惨殺されたと知り、彼の運命が再び大きく動きだす。

妻のビビアンを亡くし、CIAエージェントとしてのアイデンティティを失い、それでもなお世の不正を正す“イコライザー”として生きる孤独を、唯一理解してくれていたスーザンも失ったことで、マッコールの感情は壊れてしまう。

この喪失感は最新作のマッコールの心情にも色濃く影響を与えているようだ。フークア監督は「私が探りたかったのは、崖っぷちに立たされた男の姿。マッコールは、なんのために生きているのか疑問を抱えている。妻もスーザンももうおらず、彼は正しいことをしているように見えるが、常に罰を受けているような状態なんです」とコメントしている。

■若きCIA捜査官エマが、マッコールの最後の戦いに加勢!

最新作では、物語の舞台がアメリカのボストンから遠く離れたイタリアへと移る。シチリアでのある事件で負傷したことをきっかけに限界を迎えたマッコールは、アマルフィ海岸の静かな田舎町にたどり着き、町の人々の優しさに触れながら静かに引退を決意。しかしその矢先、イタリアンマフィアによる事件が次々と起こり、町の人々は恐怖に震えるように。怒りを増幅させていったマッコールは、“イコライザー”としての最後の仕事に挑むこととなる。

本作でヒロイン格となるのは、若きCIA捜査官のエマ(ダコタ・ファニング)。イタリアンマフィアに戦いを挑んだマッコールはCIAに助けを求め、面識のない若いアナリストに電話をかける。そこでつながったのが、デスクワークをしながら上を目指している上昇志向の強いエマだった。謎だらけのマッコールが何者なのか。エマはその真相を突き止めようとする一方で、マッコールの助けを借りながら事件解決に向けて奮闘していく。

エマ役を演じたのは、29歳にして20年以上のキャリアを持つファニング。ワシントンとの共演は、トニー・スコット監督の『マイ・ボディガード』(04)以来19年ぶりとなる。当時から現在まで家族ぐるみで交流のある2人。ワシントンは「彼女の才能は昔から見事なものでした。そして大人になったいま、彼女の才能は一目瞭然で、無限の可能性を持っています」と、ファニングの成長ぶりをうれしそうに語っている。

一方でファニングは、エマというキャラクターについて「優れた直感力を持ち、どんな細かいことにも気が付く才能があります。彼女はマッコールと似ているところがあると感じ取るのですが、それがなにかははっきりとわからないんです」と説明。さらに「CIAで仕事を始めたばかりの彼女は、このチャンスを掴みレベルアップする道を切り開こうとする。野心的で意欲的で、この機会を自分のプロとしての地位向上だけでなく、人々の役に立ちたいとまで考えているんです」。

『マイ・ボディガード』では“守る側”と“守られる側”として共演したワシントンとファニングが、19年の時を経て共に“守る側”に立って巨悪へと立ち向かっていく本作。ヒロインであるエマの姿にも注目しながら、マッコールの最後の勇姿をその目に焼き付けよう!

文/久保田 和馬

「イコライザー」シリーズはヒロインに注目!