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 甘味、塩味、苦味、酸味、うま味に続く第6の味覚に、あらたに塩化アンモニウム味が浮上したそうだ。

 それはいったいどんな味なのか?我々日本人にはあまり馴染みがないが、「リコリススペインカンゾウ)」という甘草で作られた主に黒色をしたグミのような食感のお菓子がある。

 北欧で好まれるリコリス菓子の一種には塩化アンモニウムで味付けされている「サルミアッキ」と呼ばれるものがあり、それにより独特の塩味とアンモニア臭がある。

 新しい研究では、この塩化アンモニウムが、舌の味蕾にある「酸味受容体」を反応させることが明らかにされている。

【画像】 人間が味を感じるメカニズム

 味は、食べ物に含まれている化学物質が、舌や口の中にある味蕾(みらい)を反応させることで感じられる。

 味蕾には「味覚受容体」というタンパク質のセンサーが備わっている。このセンサーが味の素になる化学物質に反応すると、脳に向けてメッセージが送信され、味が感じられる。

 甘味、塩味、苦味、酸味、うま味といった味の違いがあるのは、それぞれの受容体が反応できる化学物質が違っているからだ。

 例えば、酸っぱい食べ物には酸がたくさん含まれている。つまりpHが低く、水素イオンが多い。

・合わせて読みたい→甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の次は脂(あぶら)味?第6感ならぬ第6の味覚に脂肪味が仲間入り?(オーストラリア研究)

 こうした酸が酸味受容体に触れると、水素イオンが細胞膜を通過することで電気信号が生じ、脳に酸っぱさを伝えるメッセージが送信される。

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photo by Unsplash

酸味受容体は塩化アンモニウムにも反応することが判明

 南カリフォルニア大学などのチームによる今回の研究では、この酸味受容体(より正確には、そこにある「OTOP1プロトンチャネル」)がサルミアッキなどに含まれる塩化アンモニウムに反応するのかどうか調べられている。

サルミアッキとは、甘草の一種であるリコリス から抽出した成分を配合した「リコリス菓子」の一種で、リコリス菓子に塩化アンモニウムを添加したものだ。北欧ではサルミアッキは化学物質としての塩化アンモニウム自体も意味する。

 その味は食べたことがある人ならわかるだろう。食べなれていない我々日本人にとってはおいしいとは言えないし、特にサルミアッキが使用されているものは、何とも言い難い塩味とアンモニア臭のようなものを感じる。

 話を戻そう。

・合わせて読みたい→第6の味覚はでんぷん味? あらゆる食文化の中心には炭水化物がある(米研究

 研究チームは、酸味受容体が機能するうえで鍵となる「OTOP1遺伝子」を移植した培養ヒト細胞に、酸や塩化アンモニウムをかけてみた。

 すると、塩化アンモニウムは酸と同様、酸味受容体を反応させることがわかったのだ。

 またマウスを使った実験では、普通のマウスは塩化アンモニウムを嫌うが、OTOP1遺伝子のスイッチを切ってやると嫌がらなくなることも確認された。

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サルミアッキで味付けされたリコリス菓子 photo by iStock

塩化ナトリウムの味を感じるのは毒を避けるための進化か?

 アミノ酸が分解されるとできるアンモニウムや、そのガスであるアンモニアは、人間などの動物にとっては有毒なものだ。

 だから、そもそも塩化アンモニウムを味わう力は、有害な物質をうっかり口にしないように進化したのではないかと、研究チームは推測している。

 ちなみに塩化アンモニウムの感じ方は動物によっても違う。

 例えば、ニワトリの酸味受容体は、人間やマウスよりも強く塩化アンモニウムに反応する。一方、水の中で暮らすゼブラフィッシュは、それほど塩化アンモニウムに反応しない。

 これはそれぞれの生物が暮らしている環境の違いを反映している可能性があるという。

 例えば、鳥は一般に酸味をあまり感じないが、それでもフンに含まれている塩化アンモニウムは有害だ。だから、それを避けるために、その味を感じる力が発達したと考えられる。

  研究チームは今後、塩化アンモニウムに対する酸味受容体の反応をさらに調べ、それが進化した理由や背景を解き明かしたいと考えている。

 この研究は『Nature Communications』(2023年10月5日付)に掲載された。

 これまで第6の味覚は脂(あぶら)味や、でんぷん味が議論されてきたが、新たに浮上した塩化アンモニウム味。

 塩化アンモニウムは食品添加物として、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ)と併用して膨張剤として使われることが多いというが、味がわかるほど大量には入っていないので、やはり味わうには北欧で製造されているリコリスを試すしかなさそうだ。

 どんな味なのか試したい人はフィンランドのサルミアッキがAmazonで300円(送料500円)で販売されているので試すことも可能だ。私も食べたことあるのだけれど、個人的には無理だったかな。

追記(2023/10/09)サルミアッキの説明をわかりやすいように変更しタイトルを訂正しました。(2023/10/10)脱字を訂正しました

References:A sixth basic taste may join sweet, salty, sour, bitter and umami on the tongue / New taste: Sweet, salty, bitter, sour, umami and … ammonium chloride? / written by hiroching / edited by / parumo

 
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第6の味覚として塩化アンモニウム味が浮上。北欧のリコリス菓子に含まれる鼻にツンとくる味