嫁姑(しゅうとめ)問題は、ドラマなどでもよく取り上げられる永遠のテーマです。「お姑さんとはうまくやっている。ストレスを感じたことはない」という人たちも最近は多くなってきているようですが、一定数は根深い問題を抱えています。「恋人・夫婦仲相談所」所長である筆者が知る、2組のケースを見ていきましょう。

「子どもは産むな」「墓には入れない」

 由香里さん(38歳、仮名)は、健司さん(45才、同)の再婚相手です。健司さんには2人の子どもがいて、元妻が引き取り、育てています。

 元妻はお姑さんと仲が良く、義父母は初孫だった2人の孫をとてもかわいがっています。もともと、健司さんと父親は折り合いがよくなかったのですが、元妻と結婚したことで仲良くなり、一緒に旅行したり、実家へ遊びに帰ったりするようになったそうです。健司さん夫婦が離婚することが決まったときに、健司さんと両親は険悪な状態になりました。

 その2年後、健司さんは由香里さんと職場再婚します。しかし、離婚してからも元妻は孫たちを健司さんの実家に泊まりに行かせます。健司さんも、そのタイミングで実家へ会いに行くなどして、やりとりをずっと続けていました。健司さんは、それを両親が喜ぶならとそのままにしていました。由香里さんも「孫だからしょうがない」と思っていました。

 問題は、由香里さんへの義父母の態度です。「絶対に実家に連れてくるな」と言うほど冷たいのです。

 由香里さんは結婚が決まったとき、自分の両親と健司さんの両親との食事会を設定しようとしましたが、理由をつけて断られてしまいました。せめてごあいさつだけでもと、電話での会話を試みましたが、由香里さんが何を言っても、義母は「はい、はい」と言うだけ。義父は電話に出てもくれませんでした。その後も、義父母の誕生日にプレゼントを贈ったり、年賀状を送ったりもしましたが、全く反応なしでした。

 そんなある日、由香里さんに義父母から手紙が届きます。その内容は、「子どもは産むな。産んだとしても孫とは認めない。写真も送ってくるな。プレゼントは不要だ。二度と送ってくるな。墓には、由香里さんも生まれた孫も入れるつもりはない」というものでした。

 大ショックを受けて泣き続ける由香里さんに、健司さんは「ほっとけばいいよ」とだけ告げます。どうすることもできないと思いながらも、由香里さんは「夫には、両親に『ひどいことを言うな』って怒ってほしかった。私は不倫の末に健司さんと結婚したわけでもないのに。こんなつらい思いをするなら離婚したい。周りに歓迎された結婚をした方がいいんじゃないかと悩んでいます」と深刻なダメージを負ってしまいました。

部屋の家具を勝手に替え、時間構わず乗り込んでくる姑

「本当に怖くて…もうどうしたらいいのか分からないんです」

 南さん(33歳、仮名)は昨年結婚しました。子どもができたことをきっかけに、2世帯住宅にして、夫の優さん(35歳、同)と義父母と暮らすことになりました。

「義父母は結婚前から一緒にご飯を食べに行ったり、買い物したりしていて仲良くしていたので、2世帯住宅にするのも、むしろ家事を手伝ってもらえたり、孫の世話をしてもらえたりして楽できるかも! なんて考えていたんです。甘かったです」

 南さんが里帰り出産をしている間に、家が完成します。そして、孫を連れて南さんが帰ってきてみると、家具が南さんの知らないものになっていました。

「今まで使っていた物もまだ新しいし、そのまま使おうって言っていたのに、勝手に姑が買い替えていたんです。子どもが小さいときにこんな家具だったら危ない、生活しづらいなどという理由で。それを笑顔で言われたときは、産後で疲れていたのもあるし、本当に私たちのことを考えてくれているんだ、っていい方に捉えていたんですが」

 姑の行動はどんどんエスカレートしていきます。新しい家は、玄関は別々ですが、お互いの家を室内で行き来できるように扉がついています。鍵をかけることも、鍵を使って開けることもできます。暗黙の了解で、「鍵を閉めているときは入ってきてほしくないとき」と察してもらえると考えていた南さん。そうではありませんでした。

「朝でも深夜でも構わず鍵を開けて、姑が入ってくるんです。思いついたらすぐに伝えないと気が済まないからって笑っているんですが、それがもういつだか分からないので本当に怖くて。不意打ちのホラー映画みたい。

子どもの世話に疲れて洋服に気が回せないのに、『あら。そんな汚い格好して。私が見ていてあげるから着替えておいで』って言われたり、勝手に掃除していると思ったら『これ、家事代行に頼んだら1時間あたり4000円くらい取られるのかしら?』って言われたり。本人は嫌みで言っているのではないのかもしれないのですが、私にはそう思えてしまって。

『孫を見ているから2人で出かけておいで』って言ってくれるのはうれしいのですが、部屋で勝手に何をされるかと思うと気が気じゃないんです。夫は、『母親はざっくばらんな人だから別に嫌みじゃないし、悪気もない』って言います。夫は親子、私は他人。嫌なものは嫌なんです。どうしたらいいか真剣に悩んでいます」

嫁姑問題の“万能薬”はないけれど…

 1例目の由香里さんの話は本当に気の毒で、難しい問題です。元妻との絆が強いばかりに、由香里さんを認めることができない姑…両者の気持ちが分かります。ただ、年齢的にも義父母の気持ちが変わることは難しいかもしれません。頼りは夫です。夫が冷酷な扱いを受けている妻の気持ちをくんで改善策を練らなければ、いい方へは進まないと思います。まず夫と、この先どうするかを決めなければ、由香里さんがジッと我慢する人生になりそうです。

 2例目の南さんのケースも、夫と相談して「家を離す」レベルの荒治療を決行しなければ、姑の考え方は変わらないでしょう。あちらは「よかれと思ってやっている」ので、話し合いは通じません。問題が大きくなって、南さん一人で家を出るようになるのは避けたいですね。

 嫁姑問題は本当に複雑で大変なことです。こうすればよくなる、といった万能薬はありません。夫(息子)への愛情の深さが関係してくるので、複雑さは増します。嫁への嫉妬心丸出しの話もよく聞きます。あまりに干渉してくる場合は、「距離を置いて、盆と正月だけあいさつする」と方針を決めるなど、接する時間を減らす作戦もあります。

 一番は、「夫との愛の絆があるので、夫さえ私を愛してくれれば平気だ」と、ドデンと寛容に構えることです。昔と違って「家と結婚したわけではない。愛する夫と結婚したのだ」と笑い飛ばすことができるなら、それが最良です。義父母に好かれるより、夫に好かれることが最優先です。

「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美

あまりにも根深い「嫁姑問題」を抱える女性も…