多くの人にとって、人生でもっとも高額な買い物といえばマイホーム。数千万~1億円以上に上るため、大半が住宅ローンを利用します。しかし50人に1人はローン破綻を迎えていることからもわかるとおり、「リスク」は確実に存在します。いくら世帯年収が高くとも、一転、ローン破綻に陥ることも珍しくないのです。みていきましょう。

年収1500万円のパワーカップル…「年間300万円の返済」で“億ション”購入

多くの人にとって人生でもっとも高額な買い物で、また一大イベントでもあるマイホーム購入。

一般的に物件価格は年収をはるかに超えるため、大半が住宅ローンを利用しています。そこで考えたいのが、いくらまでローンを組めるのか、ということ。

一般的には物件価格の2~3割ほどを頭金として用意するケースが多いようです。差額分をローンを組んで支払うことになりますが、いくらまで借り入れができるのかは、その人の勤め先や年収、勤続年数、他社での借り入れ状況などによって変わりますので、最終的に希望金額を借りられず、マイホームを諦めるケースも少なくありません。

国土交通省令和4年度住宅市場動向調査』によれば、新築分譲マンションの「購入総額」は平均5,048万円。そのうち「住宅ローン」は3,610万円で、年収に占めるローン返済額である「返済負担率」は17.4%です。適正な返済負担率は20~25%程度といわれているため、多くが確実なマネープランのもと、ローンを活用していることがわかります。

ただ前述のように「ローンを断られた」というケースは、決して珍しくありません。同調査で、新築分譲マンション購入者の89.6%が「希望額の融資を受けられた」としていますが、「融資条件を厳しくしなければ融資不可」が4.9%、また「融資は一切できない」も3.7%と、少なからぬ世帯が希望通りの融資を得られたかったとしています。

直近、企業オーナーや投資家などの富裕層が都心の「億超え」の高級マンションを購入するケースが相次いでいることから、新築マンション購入者の平均世帯年収が923万円にまで引き上げられています。注文住宅や分譲戸建住宅を購入した世帯と同等の、世帯年収700~800万円の「一般人」を切り取ると、新築マンション購入者のなかで「融資を断られた経験がある」という人の割合は、もう少し高まるものと思われます。

その点、夫婦共働きで、しかも互いに高収入ないわゆる「パワーカップル」の場合、片働きよりもアドバンテージがあります。最近では、こうした夫婦が1億円超の高級マンションのメインの購入者層になっているといわれています。

それでは、世帯年収1,500万円の夫婦がペアローンを組んで1億円のマンションを購入したとしましょう。

返済負担率20%だとすると年間返済額は300万円、月々の返済額は25万円で、1人当たり12万5,000円程度。夫婦2人の稼ぎから考えれば、無理な金額ではなさそうです。金利0.5%で30年返済だとすれば、借入可能額は8,500万円ほど。頭金を1,500万円ほど用意すれば、億ションも無理のない返済プランで実現できるというわけです。

契約当初は“余裕”だと思い込んでいた返済プランも…「まさか」は起こり得る

ただ、“余裕”と思われた返済プランにも、予想外のところで綻びが生じる可能性がゼロではありません。

一般的にローン破綻に陥る確率は2%程度、50人に1人の割合といわれ、決して珍しいことではないのです。なかでも増加傾向にあるのが、平均以上の収入があり、返済には困っていないようにみえる人たちだといいます。

前述のパワーカップルと呼ばれる人たちも、例外ではないのです。

まず、2人の高収入が永続することを前提にペアローンを組んでいる場合は要注意。直近でいえばコロナ禍のようなに、企業の業績にも大打撃を与えるような危機が訪れれば想定外に収入が減り、簡単に返済不能に陥ります。

また「子を産まない」という選択をした夫婦が想定外に妊娠し、ライフプランが大きく変わるケースも。妊娠・出産を経た女性が仕事を続けることはいまや珍しくありませんが、出産前のキャリアパスに問題なく復帰できるかというと課題は多く、やはり収入減となる可能性が高いでしょう。

また、「離婚」に至るリスクも忘れてはなりません。ペアローンを返済中の夫婦が離婚することになると、物件の売却時には双方の同意が必要とされ、片方が拒否すれば売却は困難ですし、お互いが連帯保証人になっていることから、片方がローン返済を渋るようなことがあれば、もう一方の負担が倍増することになります。

仮に、双方が売却に同意したとしても、ローン残債が物件価格を上回る「オーバーローン」の状態になっていると、売却自体が困難になります。そこで「ローンを返しながらどちらかが住み続ける」という選択をすれば、プラスαの住宅費を覚悟しなければなりませんし、住宅ローンの一本化も容易ではないため「ペアローンで住宅を購入した夫婦の離婚」は、茨の道といえます。

住宅ローンの返済期間は、通常30年ほどに及びます。契約当初は余裕だと思い込んでいた返済プランだったとしても、「まさか」は起こり得ます。とくに「ペアローンなら買える」物件の購入を検討しているなら要注意。いまや3組に1組が離婚に至るといわれていますし、天災や業績悪化等でどちらかの収入が大幅減となれば、途端にゲームオーバーです。

住宅ローンの利用時には、片働きでも返済に滞らないプランを検討することが重要です。また、そうした余裕のプランであっても、ローンを利用している限り、誰しもが等しくリスクを負っていることを忘れてはなりません。

(写真はイメージです/PIXTA)