休校も相次ぐなど、インフルエンザの流行はすでに異常事態だ。今冬に想定されるのは最悪シナリオ。「殺人インフルエンザパニック」から、どうすれば身を守れるのか。

 東京都では9月21日に史上最速の「インフルエンザ流行注意報」を発令。秋田から宮崎まで、学級閉鎖が続出。重症化して入院した患者も、この時期には異例の360人を超えた。都内の小児科医が説明する。

インフルエンザは湿気に弱いと言われますが、冷房や除湿をかけっ放し、換気もしないことでウイルスが増殖しやすい環境ができあがった。日本も東南アジア化、熱帯雨林化しているのです。通常なら夏休み明けに残暑も落ち着きますが、今年は9月末でも都内で最高気温33度を観測。窓を開ければ熱風が吹き込んでくる。猛暑からこのまま、冬のインフルエンザシーズンに突入するのでしょう」

 高齢者や持病のある方は、人混みを避けた方がいいだろう。

 これだけ早い時期にインフルエンザが流行し、感染者が増えるとウイルスが変異しやすくなり、死亡率の高い「殺人ウイルス」の出現も懸念される。長引く新型コロナの影響で、気管支を拡張する薬や咳止め薬の供給も追いつかない。処方薬は慢性的な在庫不足も続いており、最悪の場合、今年の冬は死亡率の高いウイルスと処方薬の在庫切れという「ウイルスWパニック」襲来の危険性もあるのだ。すでにインフルエンザに感染していても、今秋のうちに同ワクチンを接種することが求められている。

 今年のインフルエンザワクチンではA型、B型合計4種類のウイルス株が選定されている。より多くの種類のインフルエンザウイルスの免疫をつけておいた方が、変異ウイルスが現れた時の重症化を防げる。

 事前にかかりつけ医に解熱剤などをもらっておく。原因ウイルスが何であれ、高熱が出てからでは遠方の夜間救急外来に行くのもしんどい。かかりつけ医に発熱した際の頓服薬をあらかじめもらっておけば、一時的にでも熱を下げ体が楽になってから受診できる。

 今まで風邪と無縁だった人も、これを機会にかかりつけ医を作っておく。新型コロナ以降、問題になっているのは、発熱した患者の診療拒否をする開業医が予想以上に多いことだ。

 都道府県では、発熱患者の診察可能な医療機関一覧を公表している。そのリストから、若い人はオンライン診療対応クリニック、高齢者は往診可能なクリニックを選び、できればそこでインフルエンザワクチンを打っておけば、熱が出てから慌てることもない。

「殺人ウイルスパニック」が起きないに越したことはない。暑くてマスクがつけられないなら15分ごとに水を含み、喉粘膜のウイルスを洗い流し、インフルエンザ熱中症を防ごう。

(医療ジャーナリスト・那須優子)

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