老舗缶メーカーの側島製罐株式会社(愛知県海部郡)は社員が給与額を自分で提示する「自己申告型報酬制度」を導入しました。2年前に「世界にcanを」というミッション、「宝物を託される人になろう」というビジョンを新たに掲げ、その理念に基づいた自律的な組織づくりを軸に20年ぶりの売上回復や雇用創出を実現してきました。今回は、理念に基づく社員の内発的動機を大事にする一方で給与や評価で社員をコントロールするような昔ながらの手法に限界を感じた新代表(36)が一念発起して新制度を導入を決断しました。会社のメンバーがより自律的に生き生き働いて豊かな職業人生を送れるようにすること、そしてその充実した職場から生まれる仕事でお客様や世の中にもっと喜んでいただけるような価値をつくることを目指しています。

この度、側島製罐では社員が給与額を自分で宣言する自己申告型報酬制度」という新しい人事給与制度を導入しました。2023年10月から制度運用を開始し、対象者の給与は平均約2万円の上昇、会社全体では年間の総支給額が1000万円アップする見込みです。

自己申告型報酬制度」はその名の通り、”自分で報酬を申告する”という制度です。これまでの給与制度や評価制度は、過去の結果を評価して給料へと反映させるものであり、過去の労働への対価としてお金を払う、という性質が強いものでした。今回の自己申告型報酬制度では、各社員が未来に実現することを宣言し、それに対して給与を先行投資するという制度になっています。

本制度では半年ごとに宣言内容と報酬の更新を行います。報酬額の決定にあたっては、社員を中心に構成される「投資委員会」というチームがサポートの役割を担い、各自が宣言した未来の仕事内容と報酬額のバランスを吟味しながら宣言した本人と対話を重ね、最終的な金額を決定します。

  • 納得感のなかった老舗中小企業の人事評価と給与方式

側島製罐ではこれまで、人事評価や給与については社長がその唯一の決定権を有しており、明確な人事評価制度や給与制度などは存在していませんでした。人手が不足しがちな中小企業においては合理的な手法の一つではありましたが、新しく入社する人の給与額は既存社員の金額を上限として設定されていたり、どうすれば給与額が上昇するかという明確な指針などもなく、給与支給額はほとんど上昇していませんでした。特に2000年以降は会社の売上が下がり続けていたこともあり、基本給は上がらずボーナスも減額され、社員のモチベーションは下がる一方という状況になっていました。

  • 「給料が上がらない中小企業」にもう人は集まらない時代

既存社員の給料が上がらないことで全体の平均年収が世の中の水準に見合わなくなったことが要因で、側島製罐では採用活動でも苦戦していました。愛知県の高卒の有効求人倍率は直近で3.83倍(※)となっている環境下で、大手企業や中堅企業との給料額のギャップが大きくなれば、求人が集まらなくなるのは自明です。実際に、側島製罐の新卒採用実績では、2020年4月に1人が入社して以来、高校生の新卒採用は0人が続いていました。人手不足で値上げが著しい今の時代において、給与が上がる見込みが薄い会社に人は集まらなくなり、100年以上続けてきた事業や技術の継ぎ手が不在という危機に直面していました。

※愛知労働局「令和5年3月新規高等学校卒業者の職業紹介状況」より

https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/content/contents/001439868.pdf

  • やりがいも給料も責任も自分たちで考える新しい時代の組織のありかた

今回導入した自己申告型報酬制度では、既存社員の給与を上限額とするような年功序列制や上司や経営者が一方的に給与を決定する仕組みが無くなり、入社年数や役職などに囚われず自由に給与額を提示することができます。本制度の最も重要なポイントはこの希望の給与額が得られることではなく、その前提にある「報酬」や「やりがい」、そしてそれに伴う「責任」を各社員が自分で考える点にあります。従前の仕組みでは、給与という人生にも関わる重大な要素の決定権を上司や経営者が有しており、たとえ納得がいかないことや不満があったとしても対話に至ることはありませんでした。しかし、今回の制度では、給与額の提示と対話を通じて先行投資を受けることができるようになり、その過程で自分の仕事の価値や給料の妥当性を自らが考え、より高い納得感と責任感を持って働くことができるようになります。給与額の決定も既存社員の給与額をベースに決定されるものではなくなることで、適正な給与を支払うことができるようになり、人手不足や物価上昇などの社会問題への対策としても期待できます。

  • 代表取締役 石川貴也コメント

「今回の制度導入は、経営者と社員の”覚悟の交換”だと思っています。経営者はその責任が非常に重いこともあり、何とか会社を良くしようという自分の意志に基づいて組織を動かしがちです。自分もそうでした。しかし、お金を人質のようにして自分の思い通りに人を使役して働かせるようなやり方は、中小企業のように経営者と働く人の距離が近い組織であればあるほど敵対心や猜疑心を生むものだと思っています。人は、自分の報酬や責任・裁量に心から納得して初めて、自分の意志で自発的に行動し、真のやりがいを感じることができるものではないでしょうか。もちろん、大きな報酬を求めればその分責任も大きくなるわけなのですが、経営者が評価や給与の決定権という権利を手放して社員を信じることで初めて経営者と社員は横並びのパートナーになり、忖度なく会社全体で価値あるものだけ追求できるようになるのではないかと考えています。また、側島製罐では”宝物を託される人になろう”というビジョンを掲げています。その言葉の通り、まずはこの会社に人生という宝物を預けてくれる人たちが心から仕事に明確なやりがいを持って生き生きと働くことで、その結果としてお客様や社会により良い価値を提供できるものだと信じています。そして、"世界にcanを"という側島製罐のミッションの通り、ただ缶をつくるだけではなく、老舗中小企業での新たな挑戦の悲喜交々を発信することで、現代の閉塞感のある仕事観に一石を投じることができれば幸いです。」

<参考記事>

▶”中小企業型ティール組織”という新しい未来への挑戦

https://note.com/lwitbr1906/n/n0d0e4d572340

▶【レガシー業界の事業承継】「日本の缶の文化を未来に繋いでいきたい」創業117年の老舗缶メーカーで36歳の代表取締役が誕生

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000097482.html

▶側島製罐について

社名:側島製罐株式会社
所在地:愛知県海部郡大治町西条字附田89
代表者:代表取締役 石川貴也
事業内容:一般缶の製造販売・プレス加工

従業者数:39人
資本金:4,900万円
創業:1906年4月
法人設立:1942年7月28日
HP:https://sobajima.jp/

配信元企業:側島製罐株式会社

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