こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。

【図解】ローリスクで仕掛けるための法則

学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。その経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。

「スーパーストック発掘法」(著:ジェシー・スタイン/パンローリング)は、具体的なテクニックを含みつつ、著者の実体験を通して、投資とは人間の情熱、決断力、そして試行錯誤の連続であることを教えてくれます。

著者のジェシー・スタインは、たった28カ月で1万4972%のリターンを叩き出した投資家です。とはいえ偶然的に短期で儲けたのではありません。市場で連戦連敗していたリアルな失敗談も書かれていることは、本書の一つの特徴です。

ジョン・ポールソンやジェシー・リバモアといった伝説の投資家たちもまた、全財産の大部分を失うほどの失敗を経験しながらその経験を糧に成功へと這い上がったと著者は語ります。まさに失敗は成功の母であることを体現している一冊です。

同書は、彼らの失敗からの教訓を生かしたルールを基にしたアプローチについて詳述され、「私と同じバカな過ちを犯さないように」と著者は語っています。

基本的に長期投資家を自称している著者の投資法は、短期と長期のハイブリッドなアプローチであると考えられます。週足チャートを主に使用したテクニカルなアプローチを通じて、ローリスクの購入ポイントで投資を行い、リスク・リワード・レシオ(潜在的な上昇可能性と損失可能性の比率)が有利でなくなった時点でポジションを手放します(著者がポートフォリオを上昇させ続けた28カ月の間、最も長く保有した期間は8カ月でした)。

■パレートの法則-誰も気に留めない、1つか2つの変数

私が非常に共感したのは「誰もが知っていることに価値はない」ということです。市場から富を得た1%の人は、人とは違うことをやっている人です。彼らは違いを生む、ゲームを変えるような「たったの1つか2つの変数」に注目しています。リーマンショックで大儲けしたジョン・ポールソンが、誰もが強気だった住宅市場に潜むリスクを探り出していた、という事例がそれに該当するのではないでしょうか。

多くの投資家は「自分の投資理論を裏付ける情報」を見つけだそうとありとあらゆる情報源を漁ります。アナリストリポートやブルームバーグ、ヤフーファイナンス、インフルエンサーの情報など、数えればきりがありません。

肯定的なフィードバックを得ようとするのは、人間の典型的な行動です。この行動に多大な時間と労力を割く結果、サンクコストになってしまい、選んだ株と結婚する以外に道はなくなります。

さらに、著者はパレートの法則を引き合いに出し、投資分析の労力の80%は結果に対して20%の影響しかないと語ります。そのため、必要な情報だけを取り出して集中すること、つまり「20%の重要な変数」に100%集中することが投資成功への鍵となります。

大多数が知らない情報にこそ価値が宿るのは、投資だけでなくビジネスにおいても適用できる原則ではないでしょうか。

■感情のコントロールと忍耐が重要

投資成功の鍵は、銘柄選択におけるインスピレーションが1%で、感情を制御する能力が99%を占めると著者は指摘しています。具体的には、選んだ銘柄に対してローリスクな投資タイミングが訪れるまで辛抱強く待つことが重要だと述べています。このような忍耐力を持つことで、リラックスして市場の動向に対処し、禅マスターのようなトレーダーとなれるでしょう。

リベンジトレードの衝動にも耐えなければなりません。これは、損失を経験した後に感情が高ぶり、リベンジの意味合いで大きなリスクを取ってしまう行為を指します。著者によれば、このリベンジトレードは必ず失敗すると断言しています。なぜなら、感情が先行することで冷静な判断力を失い、適切なリスク管理ができなくなるからです。

■トップ5のテクニカル法則で、スーパーストックを探す

チャートパターンを分析するときに、著者は週足チャートを見ます。本書では、ファンダメンタルズを調べる前に、テクニカル分析で銘柄を絞るのはひとつの特色でしょう。

1. 強力なベースをブレイクアウト

2. 30週移動平均線を上方にブレイクアウト

3. 出来高の増加

4. 迎え角(かく)が急峻

5. 株価は15ドル以下

以上が「トップ5の必須条件」です。大きな利益をもたらす株式は、長い「ベース」を持つ(狭い値幅で長期にわたって横ばいが続く)銘柄です。最初のブレイクアウトで出来高が極端に増加し、多くの場合、その週に30週移動平均線を上方にブレイクアウトしています。そこから45度の迎え角で上昇していきます。この「迎え角」は数カ月にわたって続くこともあり、ある時点までいくと、迎え角はさらに急峻化し、一般大衆が勢いづくとさらに急峻化します。5番目の条件は、現代ではあまり参考にならないかもしれません。

■12のファンダメンタルズで見るスーパー法則

続いて、12のファンダメンタルの法則です。

1. (四半期)利益が上昇傾向にある

2. 利益は持続可能

3. 年間PERが10以下(割安=大きな機会)

4. 継続的な成長

5. 1株利益の前年比がプラス

6. 高い営業レバレッジと売上総利益の向上

7. 受注残の上昇

8. 公開市場でのインサイダーによる買い

9. 少ない浮動株と低い時価総額

10. 「IT(イット)ファクター」――スーパーテーマ

11. 保守的経営

12. シンプルで印象的な決算発表

利益の成長率や割安感に関する評価だけでなく、過去の業績や将来の予測について「控えめに発言する」ということや、「保守的経営」など、定性的な評価も含まれています。過度な予測や誇大な声明は、投資コミュニティを驚かせ、期待値を不適切に高める可能性があるためということでした。

また、著者が投資の成功を収めた多くの株は、企業固有の「スーパーテーマ」または業界全体のトレンドを持っており、このスーパーテーマがポジティブなモメンタムを生む力となり、株価を大幅に押し上げていました。スーパーテーマを持たない株は、おそらく大きな利益をもたらすスーパーストックにはならないというのが筆者の見解です。

■ローリスクで仕掛けるための6つの法則

素晴らしい銘柄だとしても、バブルの最中に手を出しては報われません。同書では、世間の興奮が落ち着き、潜在的リスクが限定的になるのを見極めてから購入します。

1. 「マジックライン」で買え

2. 薄商いで値幅が狭いときに買え

3. 株価上昇の早い時期に買え

4. ギャップ(窓)で買え

5. モンスター・アーニングスのあと2〜3週間待て

6. 下のトレンドラインで買え

最大の利益を生むのはマジックライン(10週移動平均線であることが多い)をかすめた後の最初の数週間です。

さらに、窓(ギャップ)を空けて上昇する際に、窓は支持線になり得ると言います。そこで押し目買いをできる可能性があるでしょう。

また、その2、3週間後に高揚感が落ち着いたときにもチャンスがあります。また、ブレイクアウト後の株は安値がどんどん切り上がります。買うのは、その支持線となっている支持線上です。ダムマネー(バカな者たち)は、トレンドラインの上の線(抵抗線)で、さらに上がると信じて買います。下のラインを何度も試す際には、上昇の終わりを警戒する必要もあります。

以上の6つの買い付けの法則は、「ホットな」銘柄を少しでも割安水準で買い付けたいときに参考にしたい項目です。

テクニカルリスクで売る16のスーパー法則

何を買えばよいか、いつ買ったら良いかを解説する本は多数ありますが、「売り方」を解説する本は少ないため、同書は貴重です。

すべてが素晴らしく思えるとき、すべてが軌道に乗っているとき、前方に障害物がないとき、買うたくさんの理由があり、売る理由がないときこそ、売るのがベストだと言われています。

1. マジックライン(10週移動平均線)から大きく逸脱(上昇)したときが売りの絶好のタイミング

2. ブレイクアウトから9〜15カ月上昇したあとで売る

3. 長期にわたって価格が上昇したあと、マジックラインが平坦になるか下落し始めたら売る

4. 「マジックライン」を4回試して上昇したところで売る

5. 上昇が放物線を描いたら売る

6. 値幅(ボラティリティ)が大きくなったら売れ

7. 下のチャネルを下回ったら落ちるナイフで売れ

8. 株価が上昇しているときのボラティリティが高くなったら売れ

9. 週足チャートのエグゾースチョンギャップ(極端な買いで窓を空ける)で売れ

10. 損切りで売れ

11. 25ドルから30ドルで売れ

12. (読みを)間違ったら売れ

13. 3回高値を更新したら売れ

14. 同じグループの株が弱まったら売れ

15. 上のトレンドラインを上回ったら売れ

16. 上のボリンジャーバンドで売れ

こうして見てみると、数カ月程度の、中期的な天井を見極めるために参考になる指標が多い印象です。そして基準となるのはマジックライン。マジックラインからの上昇率や、マジックラインを試した回数がポイントとなります。3回高値を更新した後など、順調なときに沸き起こる「強欲」を抑えることが重要であると考えられます。

■ファンダメンタルリスクで売る5つのスーパー法則

1. あなたの価格目標で売れ。あるいはリスク・リワードが不利になったら売れ

2. 二次売り出しや私募が発表されたらためらわず売れ

3. 良い決算発表が続き、それが終わったら売れ

4. 株式分割したら売れ

5. インサイダーが大量に売ったら売れ

「マネーの公理」でも、「自分のゴールを先に決める重要性」が問われていました。「売り」においては「強欲との戦い」は大きな割合を占める重要な要素です。

株式分割は一見、直感に反するような気がしました。しかし「12のファンダメンタルズ」の法則で見てきたように、「少ない浮動株」こそ、株価が吊り上がりやすいのです。株式分割で浮動株が増えれば、モメンタムトレーダーは株価を操作しにくくなるのです。

■独り立ちするために

本書全体を通じて伝えたい中心的なメッセージは、自己力で立ち上がり、自己判断を行うことの大切さです。人間は、安全感を追求し、思考プロセスを簡略化し、集団行動に流されやすいという本能を持っています。

しかし、本書は我々に対して一般的な行動の逆を促しています。それは、人々が希望を失い途方に暮れているときに投資を行い、興奮しエネルギーが満ち溢れている時には売却を行うという方法です。

人と違う行動をとるためには、強い自信が必要です。その自信を育むための一つの方法として、著者は「準備」を強調しています。これは、新しいポジションを取る前に、さまざまなシナリオを想定し、それぞれの状況でどのように対応するかを事前に計画することを指します。たとえば、株価が下落したときにどのように対応するのかをあらかじめ決めておくことです。

この準備をすることにより、投資家は自信を持って行動することができ、心理的なストレスを軽減することが可能になります。この一見単純ながら、本質的な準備と自己判断のスキルが、自分の道を切り開く投資家へと成長するための鍵となるのです。

スーパーストック発掘法/パンローリング