打撃に守備に高い能力を発揮している松尾は、来季一軍で見られることになりそうだ(C)CoCoKARAnext

 今年も多くの若手選手が躍進したプロ野球。投手では村上頌樹(阪神)、山下舜平大オリックス)、荘司康誠、内星龍(ともに楽天)、野手では秋広優人門脇誠(ともに巨人)、森下翔太(阪神)、茶野篤政オリックス)などがチームに欠かせない戦力として活躍を見せた。10月9日からは若手の登竜門と言われるフェニックスリーグも開幕しているが、来シーズン以降にチームの中心として期待できる選手について『プロスペクトランキング』として1位~30位まで選出した。なお対象は来シーズンも新人王の資格があり、現時点で支配下登録されている選手とした。

【動画】黄金ルーキー浅野翔吾がプロ初スタメン、初ヒットを放ったシーンの映像

 トップ10のうち半分の5人が今年の高校卒ルーキーとなったが、1位は松尾汐恩(DeNA)を選んだ。二軍ではチームトップの376打席に立ち、打率.277、7本塁打をマーク。51打点はチームダントツ1位の数字であり、三振もわずか33というところに打撃力の高さが表れている。捕手としてもルーキーとは思えない落ち着いたプレーを見せており、スローイング、フットワークともに高いレベルにある。来年は一軍デビュー、再来年には正捕手定着ということも十分に期待できそうだ。

 その松尾よりも一軍で早く経験を積んだのが浅野翔吾(巨人)、門別啓人(阪神)、齋藤響介(オリックス)の3人だ。浅野は開幕当初はなかなかヒットが出ずに苦しんだが、着実に対応力を上げて二軍で7本塁打、27打点をマーク。一軍でも初ホームランを含む10安打を放った。新生阿部巨人の象徴として期待は大きい。門別啓人(阪神)は二軍で12試合に登板して2勝、2セーブ防御率2点台と結果を残した。シーズン終盤には一軍昇格を果たすと、9月30日の広島戦では先発で5回を投げて無失点、4奪三振と見事な投球を見せている。近い将来の左のエースとして楽しみな存在だ。パ・リーグで一躍注目を集める存在となったのが齋藤だ。9月26日の西武戦で一軍初先発を果たすと、4回を無失点と好投。ストレートの最速は150キロをマークした。まだ細身だがボールの勢いと内角を厳しく突く強気の投球は大きな魅力だ。齋藤と同じオリックスの内藤鵬は怪我で長期離脱となったものの、キャンプオープン戦から豪快なスイングを見せており、長距離砲として素質の高さは間違いない。

 来年の戦力という意味で最も計算できそうなのが4位の金村尚真(日本ハム)だ。ルーキーイヤーの今シーズンは開幕ローテーション入りを果たし、4月9日オリックス戦では早くもプロ初勝利をマーク。その後は右肩を痛めて長期離脱となったが、9月には一軍復帰を果たして見事なピッチングを見せている。大学時代から制球力には定評があり、プロ入り後にスピードもアップして投球に凄みが出てきた。上沢直之メジャー移籍も報じられているだけに、来年は先発の中心として期待がかかる。益田武尚(広島)、富田蓮(阪神)、松井颯(巨人)なども来年は一軍のローテーション争いに加わる可能性はありそうだ。

 もう少し時間はかかりそうだが、強打者タイプとして面白いのが澤井廉(ヤクルト)、萩尾匡也(巨人)、生海(ソフトバンク)、北村恵吾(ヤクルト)の大学卒ルーキー4人だ。澤井と北村の2人は揃ってイースタン・リーグで二桁ホームランを放つなど活躍。萩尾もホームランこそ7本ながら、リーグ3位の高打率を残した。生海も打率は低いものの、育成選手が多いチームの中で二軍に定着して8本塁打を放ち、スラッガーの片鱗を見せている。和製大砲はどの球団も貴重なだけに、来シーズンは一軍でもある程度結果を残して、レギュラー獲得への足掛かりとしたいところだ。

 他では池田陵真(オリックス)、山村崇嘉(西武)、井上広大(阪神)といった高校卒の野手たちも二軍での実績は申し分なく、そろそろ助走期間が終わりつつあるように見える。また投手ではまだ二軍での実戦機会は多くないものの羽田慎之介(西武)は日本人離れしたスケールを評価して高い順位とした。

 今年の山下や秋広などを見ても、ブレイクする選手は段階を踏むというよりも、一気に飛び出してくるケースも少なくない。10月26日ドラフト会議ではさらに楽しみなルーキー達も加わることになるが、来シーズンもプロ野球界を沸かせる新星が1人でも多く登場することを期待したい。

【2024年プロスペクトランキング】
1位:松尾汐恩(DeNA・捕手)
2位:浅野翔吾(巨人・外野手
3位:門別啓人(阪神・投手)
4位:金村尚真(日本ハム・投手)
5位:齋藤響介(オリックス・投手)
6位:内藤鵬(オリックス内野手
7位:田村俊介(広島・外野手
8位:澤井廉(ヤクルト外野手
9位:羽田慎之介(西武・投手)
10位:池田陵真(オリックス外野手
11位:山村崇嘉(西武・内野手
12位:萩尾匡也(巨人・外野手
13位:益田武尚(広島・投手)
14位:森木大智(阪神・投手)
15位:生海(ソフトバンク外野手
16位:富田蓮(阪神・投手)
17位:松井颯(巨人・投手)
18位:中森俊介(ロッテ・投手)
19位:井上広大(阪神・外野手
20位:岡留英貴(阪神・投手)
21位:小園健太DeNA・投手)
22位:井坪陽生(阪神・外野手
23位:黒田将矢(西武・投手)
24位:菊地吏玖(ロッテ・投手)
25位:深沢鳳介(DeNA・投手)
26位:北村恵吾(ヤクルト内野手
27位:中村貴浩(広島・外野手
28位:豆田泰志(西武・投手)
29位:松井友飛(楽天・投手)
30位:井上朋也(ソフトバンク内野手

[文:西尾典文]

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。

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