Co shu Nieが、9月28日に【Co shu Nie Live Tour 2023 -unbreakable summer-】ファイナル公演を東京・Zepp Divercity (TOKYO)にて開催した。

 終わらない夏休み――ライブ中、中村未来(Vo. / Gt. / Key. / Programming)は今回のツアータイトルをこう表現していた。全国各所で記録的な暑さを記録した今年の夏。9月も終わろうというのに、まだじっとりとした汗が背中を伝うような気温のなか、Co shu Nieの長い長い夏休みの幕がおりたのだった。

 開演前のステージを見ると、左右対称に置かれた大きな提灯がひときわ目を引く。その後ろに置かれた格子戸といい、これから繰り広げられようとしている“夏”の情景が少しずつ頭の中に浮かんでくるようだ。開演の気配にあわせて巻き起こった観客の拍手が落ち着くと、静まり返った会場に響くコーラスの繊細なハーモニーに合わせ、サポートメンバーの大津資盛(Dr.)とbeja(Pf. / Gt.)、そして中村と松本駿介(Ba.)が登場。そのまま、そっと1曲目「絶体絶命」がスタートした。暗いステージを照らすのは、夏の鮮やかな夕焼けを思い起こさせるオレンジ色の光。なるほど、Co shu Nieの“夏”は夕方、街に異世界の雰囲気が混ざりはじめる時間から始まるのだ。

 続く「SAKURA BURST」では後ろの提灯が仄白く光り、すっかり夜の気配を漂わせる。「undress me」はマゼンタの妖しい照明が、まるで花街に迷い込んだような雰囲気を運んでくる。「病は花から」では、デジタル感の強いビートに自然と客席からは手拍子が。ソリッドな松本のベースの音色と、ジャストで音にハマる照明のスイッチングが気持ちいい。そして「no future」では、目覚めとともに感じた頭痛に再び目を閉じたとき、目蓋の裏に浮かぶようなサイケデリックな映像がバンドの背後で渦巻く。今回のツアーではこのファイナル公演のみ撮影がOKされていたのだが、「undress me」が始まる前、中村が口にした「絶対的に美しい時間にします」という宣言に違わない、どの瞬間を切り取っても美しいステージが繰り広げられていた。

 大切な人が亡くなったときに、「当たり前のことが腑に落ちた」として作ったという「夏の深雪」は、サビで自然と観客の手が挙がるストレートなロックナンバー。“夏”と冠されてはいるけれど、日差しが燦々と差し込む開放的な側面ではなく、あの世との繋がりを感じさせる切なさが漂うのがCo shu Nieらしい。そして、今年4月から3か月連続でデジタル再発されたインディーズ盤より、流れ星のような儚さと疾走感が共存する「ペリカン号でどこまでも」「Supercell」と、ロック曲をたたみ掛ける。

 風鈴の音がどこからともなく聞こえると、「寂しい思い出が多い」夏に、「ずっと囚われている」と、ぽつぽつとこぼす中村。そして始まった「家」では、どこか不穏な響きの中、ステージ足元にはスモークがいっぱいに立ち込め、いよいよ異世界に迷い込んでしまった気にさせられる。「Shiki」「butterfly addiction」と、体にじっとり張り付くような熱気を感じながら駆け抜けると、中村の歌声がこの日いちばん伸びやかに響いた「青春にして已む」へ。曲の歌詞、また直前に語られた「一緒に生きていく同志」「私たちは一人だけど、独りじゃない」という言葉と共鳴するように、ラストサビでは大きく手が振られ、その後ろで鳴り響くコーラスの旋律が、会場いっぱいにあふれる祝祭感を盛り立てていく。

 松本による(『呪術廻戦』への隠しきれない愛があふれた)グッズ紹介のコーナーで会場が和んだあとは、まさに『呪術廻戦』第1期第2クールのエンディング・テーマ「give it back」がスタート。ピンスポットライトに照らされながらピアノを弾く中村の姿が神々しい。ラストサビでは、天井に吊るされたミラーボールがステージの方から照らされ、会場全体が満天の星空のように煌めいた。

 中村は今回のツアーを「ロマンティックだった」と表現すると、「ライブをやるともっとライブがしたくなります」と告げ、11月より、隔月開催の主催イベント【Co shu Nie presents『Underground』】(公式略称は【こしゅあん】)を行うことを発表。会場からは歓喜の声があがった。このサプライズでより熱量が増した会場を、さらに「asphyxia」「bullet」「永遠のトルテ」と、ヒリヒリと爆発力のあるキラーチューンで煽っていく。

 そして、2024年秋にリリースが予定されているアルバムの“2曲目”となる、10月18日リリースの最新曲「Burn The Fire」を繰り出した。今回のツアーで披露しつつアップデートを重ねてきたという、エモーションがまさに炎のように噴き上がるハードなロック・アンセム。その想いを高らかに誇示するように、中村に合わせ、観客も拳を天高く突き上げていたのが印象的だった。その勢いのまま「フラッシュバック」と続けると、最後は「迷路~序章~」「迷路~本篇~」で会場を包み込み、ステージの幕を下ろした。

 夏の儚さ、湿度、それゆえの物悲しさ、そして時にけばけばしいほどの美しさ。それを目まぐるしく万華鏡のように見せつけられた、まさに「絶対的に美しい」90分だった。


Text by Maiko Murata
Photo by 河本悠貴

◎公演情報
【Co shu Nie Live Tour 2023 -unbreakable summer-】
2023年9月30日(土) 東京・Zepp Divercity (TOKYO)

【Co shu Nie presents『Underground』】
2023年11月13日(月) 東京・渋谷WWW

◎リリース情報
シングル「Burn The Fire」
2023/10/18 DIGITAL RELEASE

<ライブレポート>Co shu Nie、美しく燃え上がった“終わらない夏休み” 【unbreakable summer】ファイナル公演