男らしさというと、屈強な戦士や怖れを知らぬ剣闘士のようなマッチョなイメージが浮かぶ。しかし、歴史というものは驚きの連続で、男らしさの領域でも、なんともひねくれた観点がある。
そのひとつは古代ギリシャに由来するもので、当時、男性がスカートをはくのは、ファッショナブルであるだけでなく、男らしさの象徴ともされていたというのだ。
古代ギリシャ、とくに古典時代(紀元前800~紀元前323年頃)では、スカートは男女ともにギリシャの伝統的な服装の必須アイテムだった。
男性は、長方形の生地をピンやボタンで留める膝丈スカートのようなシンプルな衣服キトンと、その上にまとう大ぶりのショール、ヒマティオンを身に着けていた。
このいでたちは、温暖な地中海気候に実用的であるだけでなく、強さとパワーを表すものでもあったという。
戦場での勇猛な武勇の代名詞ともいえるスパルタ人たちは、ウールで作られたベルトつきの短いスカート、ぺリスケリスを誇らしげに着用していた。
やはり実用性と象徴性を併せ持つことから、採用されたようだ。このいでたちだと、戦場での移動が容易になり、戦いに大きな利点となった。
さらに、スカートをはくという選択は、軍隊生活に献身し、贅沢を退ける戦士の精神に合致し、より広く習慣化されていったと思われる。
キトンをまとう古代ギリシャの男たち。クノッソスの儀礼行列を描いたフレスコ画 / image credit: ArchaiOptix / CC by SA 4.0
古代ローマ人が身に着けていたトーガ
古代ローマ人がよく着ていたトーガのことも忘れてはならない。
ギリシャ人がトーガを着ていたわけではないが、この服の起源は、左肩から斜めにかけるように着るギリシャのヒマティオンにさかのぼることができる。
古代ローマの男性のトーガの着方
・合わせて読みたい→古代都市「スパルタ」の軍事教育は早期から。生まれた時から過酷な運命を背負い、強靭な戦士へと育て上げられる男子
スカートは古代ギリシャ男性の身体能力を際立たせた
両方とも、気品、卓越性を表すもので、ギリシャの都市国家、とくにアテネでは、社会的にも政治的にも強い立場にいることを示すものだった。
スカートが好まれたのは、文化的なルーツが深い。古代ギリシャでは、人間の姿形をしたものは賞賛され、衣服は体の自然な形を強調するデザインのものが多かった。
スカートは自由な動きを可能にし、競技や戦いにたずさわる男性の身体能力を際立たせるものだった。
何世紀もの時代を経て、ファッションは変わり、思わぬ方向へ向かうことも多々あった。
ギリシャの男らしさを表したスカートは、他文化の強い影響や馬に乗る習慣のおかげで、ズボンにとって代わられるようになった。
しかし、スコットランドのキルトなどのように、古代のスタイルの名残りは今でもある。
ファッションは、人間が作ったすべての建造物と同様、一過性のものであり、その時代の社会文化的構造に深く根ざしている。
ギリシャ人について考えてみると、衣服に本質的なジェンダーの区別はなく、私たちが服に与える価値と意義がすべてであることを、あらためて思い知らされる。
References:Wearing Skirts Was Considered Manly in Ancient Greece / written by konohazuku / edited by / parumo
コメント