ルパン三世」シリーズ最新作となるAmazon Original映画『次元大介』が登場(10月13日独占配信開始)。主演を務めるのは、2014年公開の実写映画『ルパン三世』でも次元大介を演じていた玉山鉄二。今回、約9年ぶりに次元のハードボイルドな魅力を体現し、観る者を釘付けにする。MOVIE WALKER PRESSでは玉山と、アニメシリーズで2代目次元役を継承した大塚明夫を直撃。 “2人の次元”が国民的キャラクターを演じるうえで励みとなった仲間の存在や、「おもしろくなってきやがった」という名セリフにちなみ、それぞれのピンチへの向き合い方について語ってもらった。

【写真を見る】次元の魅力や自身の原動力について語り合った玉山鉄二と大塚明夫

■「『どういう次元が出てくるのか』と楽しみにしながら、毎日現場に行っていました」(玉山)

ルパン三世」は、モンキー・パンチによって1967年から原作漫画の連載が開始され、1971年にテレビアニメ第1シリーズ(PART1)の放送が開始されてから50年以上にわたって愛され続けている人気シリーズ。今回の『次元大介』の舞台は、社会のはみ出し者たちが築きあげた裏社会。次元が、元殺し屋アデル(真木よう子)の組織に狙われた少女、オト(真木ことか)を救いだそうとする姿を描く。個性豊かなキャラクターが繰り広げるドラマと共に、激しいガンアクションも大きな見どころだ。

――玉山さんは、約9年ぶりに再び次元を演じることになりました。本作のオファーを受けた感想について「また次元を演じられる!とはしゃぐ自分をいかに押さえつけられるかと頑張っていました」とコメントされていましたが、玉山さんにとって次元を演じられる喜びとはどのようなものでしょうか。

玉山「とてもうれしかったですね。もちろん次元だけではなく、僕はどの作品であってもキャラクター作りというものをとても大事にしています。そんななかでも次元は、台本を読んで『このシーンはこうしたいな、ああしたいな』と思っている以上に、撮影現場に行った時にいろいろな次元に出会える。そんなキャラクターです。僕の頭に降ってきたもの、監督から提示していただいたもの含め、自分の予期せぬ部分で『どういう次元が出てくるのか』と楽しみにしながら、毎日現場に行っていました。無意識に出てきた次元に、僕自身も驚くような感覚があるんです。本作では次元とオトのやり取りや、2人が距離を縮めていく展開のなかで、またテレビシリーズとは違った次元の一面を楽しんでいただけるのではないかと思っています」

――大塚さんは、本作をご覧になってどのような感想を抱かれましたか?

大塚「ひどい目に遭っている小さな女の子がいて、次元はそれに耐えきれずに組織とのいざこざに絡んでいってしまう。そのなかで少女とのいろいろなドラマが紡がれていきますが、彼女の持ち物に紐をつけてあげたり、次元の優しさがにじんで見えるようなシーンがとてもステキで。アクションもカッコいいですよね。アクションって身体が動かないとできないものなので『すごいな!』と思いながら、気づいたら映画の最後までずっと微笑んでいました。ラストシーンも好きな終わり方で、とても楽しかったです」

■「いつまでも『清志さんの面影が残っている』と感じてほしい」(大塚)

――本作を観ると、改めて「次元ってカッコいいな」と実感する人も多いと思います。次元を演じるうえで大事にしているのは、どのようなことでしょうか。

玉山「次元が持っているであろう哲学やイデオロギーを大切にしつつ、現場では『これはオーバーだ』『これはちょっと足りないかもしれない』とキャッチできるような感覚やアンテナを大事にしながら演じています。活字だと成立するようなセリフでも、いざ声に出してみるとキザすぎる場合もあるものなんですが、監督は『そこは自分で調節していい』という話をしてくれました。たとえば、劇中で次元がオトに帽子をかぶせてあげるシーンがありますが、あれはもともと台本にあった動作ではありません。次元がオトに言葉をかけるシーンだったんですね。でも『次元らしい優しさとはどんなものだろうか』と考えた時に、ああいった行動として出てきたので、僕が感じている次元らしさのようなものが集約された場面になった気がしています」

大塚「アニメを実写化するって、とても難しいことですよね。次元って、ちょっとした照れが色気につながったり、ただ“ダンディ”という言葉だけで記号化できないところもあって。アニメ好きな人ならば、次元大介三次元になって出てくることに違和感を覚えるかもしれませんが、本作を観たらその違和感はすぐに忘れます。しっかりと、玉山鉄二が次元に見えてくる。『皆さん、ご心配なく』とお話ししたいです(笑)」

――大塚さんは、1971年のアニメ放送開始から50年以上にわたり次元を演じた小林清志さんから役を受け継ぎ、2021年放送開始のアニメ「ルパン三世 PART6」から次元役を担当されています。演じるうえで大事にしているのはどのようなことでしょうか。

大塚「僕はいつまでも、『清志さんの面影が残っている』と感じてほしいなと思っていて。僕自身が次元大介の大ファンで、清志さんが演じる次元を観て育って、こうして年寄りになってきました。僕が年齢を重ねる間、ずっと清志さんが次元を演じてくれていた。その遺伝子を大事にしていけば、次の世代ではまた誰かがそれを拾って演じてくれるだろうと思っています。これからも“バトンをつないでいく”ということを意識して、走っていきたいです」

――オリジナリティを出すよりも、清志さんの次元を大事にすることを心がけているんですね。

大塚「オリジナリティというものは、どうしても出てしまうものなんですよ。どれだけ『清志さんの次元を忘れないでほしい』と思っていても、結局やっているのは僕なので。にじみでてしまうものであって、あえて出そうとは思っていないですね」

■「小栗くん、綾野くんとは運命共同体のようだった」(玉山)、「吉田鋼太郎の存在にいつも励まされています」(大塚)

――玉山さんが9年前に実写映画『ルパン三世』で国民的キャラクターである次元役に挑む際には、大きなプレッシャーがあったのではないでしょうか。

玉山「やはり皆さんには次元に対するそれぞれのイメージ、それぞれの思い入れがあると思うので、批判も覚悟したうえで次元役をお引き受けしました。ルパン役の小栗(旬)くん、石川五ェ門役の綾野(剛)くんをはじめ、 みんながそういった覚悟を持っていたと思います。そういう意味では、運命共同体のよう。タイやラオス国境近くにもロケに行きましたが、運命共同体となったみんなで士気を高め合って、撮影に臨んでいたことをいまでもよく覚えています」

――大塚さんは、玉山さんのように仲間の存在が励みになったことはありますか?

大塚「アフレコ現場には、先代から役を受け継いだ2代目のみんながいます。『叩かれるんじゃないかとか、いろいろな不安もみんなが経験してきたことだから、大丈夫だよ』と声をかけてくれました(笑)。栗さん(ルパン役の栗田貫一)が役を引き継いだ時は、特に大変だったんじゃないかな。初めて栗さんがルパンを演じた『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』には、実は僕も出演しているんですよ。当時は、納谷悟朗さん、小林清志さんもご存命でね。そのなかで途方に暮れている栗さんの横顔を、スタジオの外から『栗さん、頑張れ!』と応援しながら見ていました。あの姿は、ものすごく目に焼き付いています。栗さんはその後、『リトルリーグの少年が急に大リーグのマウンドに上がったような気がした』と当時の心境を語っていました」

――次元といえば、ピンチに直面した時に彼が放つ「おもしろくなってきやがった」という名セリフも、とても印象的です。お2人はピンチも楽しもうとする次元の精神性に共感はありますか。

大塚「しんどい時にジョークを言ったり、笑っているヤツが強いと感じることはありますね。笑うことによって追い詰められている苦しさを解放したり、さらに立ち向かう力にできるというのは、とてもカッコいいですよね。どう見ても『そんなことを言っている場合じゃないだろう』という状況で、次元が『おもしろくなってきやがった』と言うと、ものすごくワクワクしますから。僕ももともとそういうところがあって。いつも、『どんなことがあっても、死にゃあしない』という札を心に持つようにしています。そうすると自分を鼓舞する時にとても便利なんですよ」

玉山「大塚さんのお話を聞いていて、僕はまだまだ未熟だなと思いました。僕は真逆な感じで、すごくネガティブだし、いろいろなことを悩み抜いてしまうんです。悩み癖があるんですね。おそらく感覚で行動するというよりも、いろいろなことを頭で考えてロジカルに答えを導きだせないと、どこか消化不良の自分がいたりする。それは僕が、きっとまだ成熟していないということなのかなと。いままで『この仕事は楽だったな』と思ったことはありませんし、いつもボロボロになって終わるという感じです(苦笑)」

大塚「そういう時につぶやくんです。『死にゃあしない』って。ぜひ試してみてください」

玉山「いいですね、それ(笑)」

――表現という正解のない世界に身を置く俳優業は、やはりとても大変なお仕事のように感じます。お2人にとって、「この人を見ていると、励まされる」と思わせてくれる人はいますか?

玉山「僕は本当に孤独で…(苦笑)。悩んでいることを誰かと共有することもないですし、いつも作品と演じるキャラクターに向き合うことで、いっぱいいっぱい。自分1人で考え、悩みと向き合っているという感じです。そんな僕を励ましてくれるのは、やっぱり作品が完成した時。達成感を味わいつつも満足することはないので、こうやって進んでいくしかないのかなと思っています」

大塚「本作の次元の背中にも、(孤独の)“孤”という文字が見えるような気がしますね」

玉山「あはは!」

――大塚さんはいかがでしょうか。

大塚「僕は、先輩にもそういった方がいますし、後輩を見ていて『こいつの成長ぶりはすごいな、目をみはるな』と追い立てられる時もあります。特に僕は、若いころから吉田鋼太郎と一緒にシェイクスピアのお芝居などをいろいろとやっていて。どうあがいても、板の上では吉田鋼太郎に太刀打ちできないなと思うんです」

玉山「僕もいつもエネルギッシュな鋼太郎さんを見ていると、うらやましいなと思います」

大塚「僕がここまで調子に乗らずにやってこられたのは、ああいう芝居のお化けみたいな人がそばにいたから(笑)。だからこそ、一生懸命に走り続けてこられたのかなと思っています」

取材・文/成田おり枝

玉山鉄二&大塚明夫、“2人の次元”にインタビュー!/撮影/YOU ISHII ヘアメイク/石邑麻由(玉山鉄二担当)、藤井康弘(大塚明夫担当) スタイリスト/袴田能生(玉山鉄二担当)、森島あさみ(大塚明夫担当)