日本では自衛隊の入隊者不足がニュースになることがありますが、実はアメリカ陸軍も似たような問題に直面しています。両国とも、リクルートについて抜本的な見直しの必要に迫られています。

メインとしていた高卒者が激減!

日本でもここ数年、自衛隊の入隊者不足が叫ばれており、2023年現在、陸海空合わせて必要な定員におよそ1万9000人足りなくなっていることが報じられています。10月8日には定年を11の階級で引き上げることが決定され、防衛省人事計画・補任課は「人手不足の中でもさまざまな取り組みを通じて、質の高い人材を確保していきたい」としています。

しかし、この人材不足はなにも日本に限ったことではないようです。世界で展開しているアメリカ陸軍は2023年10月4日、長年にわたる入隊者不足を改善するため、入隊戦略の抜本的見直しを進めていく方針を発表しました。

同国陸軍によると、今後はとくに大学生や現在就職活動中の若者などへアピールをしていきたいとのことです。これまで、陸軍は高卒者を重視し、入隊者の約半分を高卒者から確保していました。しかし、2023年現在、高卒者が労働市場に占める割合はわずか15~20%となっており、人員確保が困難となっていました。

特に2022年の採用人数はかなりの問題となったようです。当初、アメリカ陸軍は6万人という入隊目標を掲げましたが、結果は4万5000人で、1万5000人も少ない入隊者数になりました。新型コロナウイルスによる感染拡大が終わり、活発化した雇用市場で高給取りの企業と競争した結果とされています。

軍そのものに対する不信感も?

そのため、アメリカ陸軍では、2028年までには少なくとも3分の1が高卒以上の学歴を持つ人材とすることを目指していくそうです。さらに新兵募集の方法にも改善を加え、リクルーター専門の新しい部隊を創設することも計画しています。

ランディジョージ陸軍参謀長はこの専門部隊を創設する狙いについて「データ管理、調査設計、労働市場分析、マーケティング、運営、調達などの面で、専門家がサポートする採用担当者で構成される実験チームの必要性を感じた。どこにいても、適切な人材にアプローチできるツールと人材が必要だ」としています。

なお、アメリカでは、軍に対する若者の不信感や恐怖心も強くなっているという指摘もあります。

アメリカ政府が、いわゆるZ世代と呼ばれる今の若者に意見を聞いたところ「兵役に就いたら怪我をしたり殺されたりするのが怖い」という意見や「人種的偏見や性的暴行などの報告を聞いた」などの批判的なコメントが集まっているといいます。事実、2023年6月にシンクタンクのブルッキングス研究所が発表したアメリカ人の軍に関する世論調査の結果でも、信頼感は過去25年間で最低の60%になっており、軍の信頼度が高めの同国では異例の事態となっています。

新兵訓練を担当する練兵軍曹と新兵(画像:アメリカ陸軍)。