ドライバー不足により、宅配便が届かなくなるのでは……そんな事態が懸念される2024年問題。ドライバー不足は路線バスといった公共交通にも波及し、生活崩壊の危機に直面する高齢者が増えています。みていきましょう。

2024年問題で公共交通、崩壊の危機

ーー物流崩壊

そう騒がれている、昨今。いわゆる2024年問題によるもので、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって、物流力が低下。特にドライバー不足により、いまのように荷物が届かなくなるといわれています。

いまや、ネットでの買い物が当たり前。そんななかインフラが崩壊してしまうのですから、私たちが考えているよりも一大事です。

さらに2024年問題は広範囲に及びます。そのひとつが路線バス

最近「乗務員不足により減便しています」という貼り紙がされているバス停を見たことはないでしょうか。コロナウイルス感染症インフルエンザが、バス運転手の間で流行。乗務員の確保ができずに運休という話題もニュースになっていましたが、元々バス業界では運転手不足が深刻化。ギリギリの状態のなかでの流行だったので、減便で対応せざるを得なかったわけです。さらに2024年には、時間外労働の上限規制や休憩時間の改正が行われるため、運転手の労働時間はいまよりも減少。運転手の確保が難しい状態が常態化し、減便、運休、さらには路線の廃止も余儀なくされるといわれています。

公益社団法人日本バス協会が2022年に行った調査によると、回答のあった858の事業者のうち590者、全体の69%が「運転者が不足している」と回答。また保有車両数10両以上のバス事業者に限った調査では、回答のあった753の事業者のうち588者、実に78%が「運転手不足」と回答しています。

外国人運転手の実現に向けての要望書を提出するなど、なんとか運転手不足を解消しようとしていますが、現実は厳しいようです。

そもそもバス運転手、その低収入も問題解決を阻んでいるといわれています。厚生労働省令和4年 賃金構造基本統計調査』によると、男性会社員の平均給与は月収で34.2万円、年収で554.9万円。一方、男性バス運転手(平均年齢53.4歳)に限ると、月収23.4万円、年収400.0万円。平均値の7割程度の給与に留まっています。人材確保の点で大きなハンデとなっていることはいうまでもありません。

かつて賑わったニュータウンに取り残される高齢者たち

ーーもう、どこにも行けないわね

そう、寂しそうに呟いたのは、80代だという高齢女性。高度成長期には次々と住宅が建てられた、いわゆるニュータウンに住んでいます。駅からは徒歩で1時間というロケーションが若い世代に嫌われ、年々人口は流出。現在は、右を見ても左を見ても高齢者という状況だといいます。

そんな地域で唯一、最寄りの鉄道駅にいける手段だったのが路線バス。しかし人口減により、年々便数は減少。路線廃止も視野に議論されているといわれています。

ーーこの先、どう生きていけばいいのかしら

高度成長期。全国的に住宅が不足し、各地でニュータウンが造られました。しかし鉄道駅からは遠いというのがお決まりのパターンで、高度成長期を過ぎた80年代ごろをピークに人口減少。いまや住んでいるのは高齢者だけというのは、特に地方のニュータウンで顕著になっています。そして唯一の交通手段の路線バスがなくなり、移動手段が限られる高齢者が孤立化の危機にある、というところまでがお決まりのパターンです。

厚生労働省の調査によると、厚生年金受給者の平均年金受給額は、併給の国民年金と合わせて月14万円ほど、手取りにすると12万~13万円でしょうか。それに対し1ヵ月の平均支出額は14万円ほど。年金だけで生活するのは難しく、貯蓄を取り崩しながら生きていく、というのが、日本の高齢者の平均像です。

そんな状況下、駅に行くまでタクシーを利用……そんな贅沢がそうそうできるわけはありません。生活を支える路線バスの減便・廃止は、特に高齢者にとって大問題なのです。また路線バスに代わってコミュニティバスの導入なども検討されている地域もありますが、地方はどこも財政難。実現が難しいケースばかりだといわれています。

日本の各地に次々とできつつある、陸の孤島。そして取り残される高齢者。抜本的な解決策は、いまのところ示されていません。

(※写真はイメージです/PIXTA)