Googleが10月12日に発売した新スマートフォン「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」のレビューをお届けします。両機種ともOSにAndroid 14、システムオンチップ(SoC)には新たに「Google Tensor G3」を搭載し、AIによる写真や動画の編集機能を強化しているのが特徴。OSアップデートとセキュリティアップデートが発売日から7年間の保証に延長され、Feature Dropにより数か月おきに新機能が提供されることから、最新の機能を今後長期間にわたって利用できるAndroidスマートフォンの新しいスタンダードモデルとして注目を集めそうです。

パワフルでもコンパクトサイズが魅力のPixel 8

Pixel 8は、6.2インチ(2400×1080)OLEDディスプレイを搭載し、60~120Hzの可変リフレッシュレートに対応。マット仕上げのアルミフレームで、背面は光沢のあるガラスを使用しているのがデザイン上の特徴です。突起したカメラバーが側面のフレームに滑らかにつながる、Pixelスマホらしいデザインは引き続き踏襲されています。

本体サイズはW70.8×H150.5×D8.9mm、重量は187gと軽量・コンパクト。フラッグシップの性能を発揮しつつも、片手で持ちやすく操作しやすいのが魅力です。前モデルのPixel 7がW73.2×H155.6×D8.7mmで重量は197g、Pixel 7aがW72.9×H152×D9.0mmで重量193.5gなので、Pixel 7から少しだけ軽量・コンパクトになったPixel 7aより、さらに軽くコンパクトになったことが分かります

側面に電源ボタンと音量調節ボタンディスプレイ下部にUSB Type-C 3.2ポートを搭載。本体はIP68の防水・防塵に対応します。8GB RAMを搭載し、ストレージ容量は128GBと256GBが選択可能。バッテリー容量は4575mAhで、最大27Wの急速充電により約30分で最大50%の充電に対応します。ワイヤレス充電は最大18Wに対応。USB-Cポートは他のPixelスマートフォン同様、DP Altの映像出力には対応していません。ディスプレイの光学式指紋認証と顔認証に対応。顔認証はセキュリティを強化し、電子決済の認証にも利用可能になりました。

カメラバーには、f/1.68、画角82°で最大8倍の超解像ズームに対応する5000万画素広角、f/2.2、画角125.8°で3cmまで寄れるマクロフォーカスに対応する1200万画素超広角のデュアルカメラを搭載します。インカメラは1050万画素。カメラの作例についてはこの後紹介します。

フラット画面で温度計を搭載するPixel 8 Pro

Pixel 8 Proは、6.7インチ2991344)LTPO OLEDディスプレイを搭載し、1~120Hzの可変リフレッシュレートに対応。Pixel 7ではエッジがラウンド形状になっていたディスプレイフラットディスプレイになった他、光沢のあるアルミフレームで、背面はマット仕上げのガラスを使用しているのがデザイン上の特徴です。本体サイズはW76.5×H162.6×D8.8mm。重量は213g。

側面に電源ボタンと音量調節ボタンディスプレイ下部にUSB Type-C 3.2 Gen2ポートを搭載。本体はIP68の防水・防塵に対応します。12GB RAMを搭載し、ストレージ容量は128GB/256GB/512GBが選択可能。バッテリー容量は5050mAhで、最大30Wの急速充電により約30分で最大50%の充電に対応します。ワイヤレス充電は最大23Wに対応。USB-CポートはDP Altの映像出力には非対応です。ディスプレイの光学式指紋認証とセキュリティを強化した顔認証に対応します。

カメラバーには、f/1.68、画角82°の5000万画素広角、f/1.95、画角125.5°で2cmまで寄れるマクロフォーカス対応の4800万画素超広角、f/2.8、画角21.8°で光学5倍ズームと最大30倍の超解像ズームに対応する4800万画素望遠のトリプルカメラを搭載。インカメラは1050万画素。

カメラバーにはもうひとつ、8 Proにしかないユニークな機能があり、なんと“温度計”を搭載します。非接触の温度センサーにより、-20~150℃の範囲で対象物の温度を測定できます。

強化したカメラ性能をチェック:望遠&超解像ズーム

カメラの作例は、例年通り浅草の街の風景を撮影してみました。Pixel 7の作例と見比べてみたい方は、昨年の記事をご覧ください。

昨年の記事はこちら:
超解像ズームと望遠がとにかくパワフル! 「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」のカメラ機能をレビュー
https://getnews.jp/archives/3350480

浅草寺の五重塔を望遠、ズームで撮影。Pixel 8 Proは、広角カメラで1倍、カメラアプリのシャッターボタン近くにある「2」の倍率をタップして広角の2倍ズーム、「5」をタップして光学5倍の望遠カメラでの撮影に切り替わります。広角、望遠のいずれも、屋根の造形のディテールや頂上の「相輪」と呼ばれる構造がシャープに写っています。印象的なのは色の鮮やかさ。塗装の赤と相輪の金の発色が目に映えます。

望遠カメラの撮影では、ピンチ操作で最大30倍の超解像ズームに。AIが複数枚の写真を合成して、より高い解像感をもたらします。先端の宝珠の形状、その下の炎を模した「水煙」と呼ばれる装飾がくっきりと収められています。空の青と装飾の金が鮮やかな印象です。

Pixel 8では、広角カメラで1倍から「2」の倍率をタップして2倍ズームに切り替わり、超解像ズームで最大8倍の撮影に対応。こちらも美しい発色が確認できました。8倍では輪郭の鈍りや色潰れが多少あるものの、相輪や水煙の構造までしっかり確認できる仕上がりです。

強化したカメラ性能をチェック:超広角&夜景

浅草寺の宝蔵門で超広角の撮影を試してみました。Pixel 8 Proは、超広角カメラがPixel 7 Proの12メガピクセル ウルトラワイドカメラから、48メガピクセルQuad PD ウルトラワイドカメラにパワーアップ。遠景の建物は高い解像感を保ったまま、超広角では手前の人物が全身収められる広い画角に。超広角の色の鮮やかさも印象に残ります。

Pixel 8で撮影した超広角は、解像度は1200万画素ながら建物のディテールが高い解像感で収められています。Pixel 8 Proと比べると、少しだけ色は不自然に見えるかもしれません。

同じ場所で夜にも撮影してみました。Pixel 8 Proでは解像感が高く、暗い場所は暗く、明るい場所は明るく写すコントラストのある絵づくりに。

Pixel 8では全体に明るく撮影できました。解像感もなかなかなので、こちらの方が好みという人もいるかもしれません。

超広角から超解像ズームまで並べて比較してみても、Pixel 8のカメラはなかなかのパフォーマンスを発揮しています。30倍ズームまで要らない、という人はPixel 8のカメラでも十分魅力があるのではないでしょうか。

インカメラはいずれも1050万画素、f/2.2、画角95°の超広角カメラ。作例も同じ仕上がりでした。

強化したカメラ性能をチェック:8 Proが優れる撮影モード

もちろん、上位モデルのPixel 8 Proには優位な撮影機能が用意されています。Pixel 8 Proでは「プロ設定」が利用でき、シャドウ、ホワイトバランス、フォーカス、シャッタースピード、ISOをマニュアルで設定した撮影が可能。ホワイトバランスで色温度を変えたり、シャッタースピードを遅くしたり、クリエイティブな撮影が楽しめます。フォーカスの設定では、ピーキングをONにしてフォーカス部分を確認しながら調整が可能。

Pixel 8もPixel 8 Proも、マクロ撮影に対応します。Pixel 8 Proは2cmまで寄れるので、マクロで撮りたいどんな被写体にも対応可能。Pixel 8は3cmまで寄れるマクロ撮影に対応します。無印のPixel 7にはなかった機能なので、これでも十分という見方もあるかもしれません。

Pixel 8 Pro向けには今後、撮影した動画の手ブレ補正やダイナミックレンジを改善できる機能「動画ブースト」の提供を予定しています。これにより、Pixelスマートフォンで初めて「ビデオ夜景モード」が利用可能に。日の出や日没時、照明が暗いレストランでの撮影に活躍します。

使ってビックリの「編集マジック」

ここから、Pixel 8とPixel 8 Proの両方で使えるAIを利用した新機能を紹介していきます。

Googleフォトでは、Pixel 8シリーズ限定で「編集マジック」の機能が提供されています。こちらは「消しゴムマジック」の進化形とも言えるもので、タップで指定したり指でなぞって囲んだ対象を、ドラッグで移動したりピンチ操作で拡大・縮小して配置できる機能です。

移動元の部分はAIが画像を生成して埋めてくれるのが秀逸。生成結果は、複数の候補から選ぶことができます。

自撮りで撮った自分を中央に移動して、少しサイズを小さくしてみました。画角外にあった左肩の補正が少し不自然ですが、人物とかぶっていた建物の画像生成はお見事。Pixel 8シリーズのカメラで撮った写真ではない、過去の写真についても利用できるのがポイント。手に入れたら是非試して欲しいオススメ機能です。

話題沸騰の「ベストテイク」

発表直後の報道や、さっそく開始しているテレビCMでも話題の機能が「ベストテイク」。複数枚撮影した集合写真から人物の顔を抽出して、下を向いていたり目をつぶっている人の顔をよい表情の顔に差し替えて“ベストテイク”を作れるという機能です。

ライブ配信番組「ガジェット通信LIVE」の終了後、編集部メンバーによそ見や変顔をしてもらい複数枚の写真を撮影しました。

全員変顔の写真をピックアップして、Google フォトの「編集」メニューから「ベストテイク」を選択。

類似した写真から人物の顔を抽出して、自動でよい表情の顔を選んで差し替えてくれます。画面下に表示される人物の候補をタップすると、抽出した顔の候補を選びなおすことも可能。

編集前後の写真を見比べても、ごく自然に顔が差し替えられていることが分かります。飲み会で、みんなでわざと変顔をして何枚も撮影する光景が目に浮かびますよね。

“動画版消しゴムマジック”も話題を呼びそう

Pixel 8シリーズでは、AIを活用する編集機能が動画でも利用できるようになったのが大きな進化。“動画版消しゴムマジック”と呼べそうな新機能、「音声消しゴムマジック」がGoogle フォトに追加されました。

動画を選んで「編集」「音声」のメニューから、音声消しゴムマジックが利用可能。

動画の中の音声を解析して、「音楽」「声」「ノイズ」など自動で種類別に抽出してくれます。

消したい音を選んで「-100」に設定すれば、動画の中からその音だけを消すことができます。にぎやかな台湾の夜市の動画から、音楽だけを消すことができたのには驚きました。実際に使った人たちから、今後じわじわと話題を呼びそうな機能です。

ワクワクが7年続くのは“買い”かも

上記で紹介した編集マジック、ベストテイク、音声消しゴムマジックは、いずれもPixel 8シリーズの目玉機能ながら、AIとソフトウェアで実現している機能。しかも、過去に撮影した写真や動画にも利用できるので、デバイスを入手したらすぐに試すことができます。

OSアップデートや機能追加が今後7年間保証されているということは、デバイスを買い替えなくても2030年まで“ソフトウェア上は最新のスマホ”を使い続けられることを意味します。ワクワクする新機能を今後も追加できるのは、かなり魅力に感じました。7年の間にはバッテリーなど交換が必要になると考えられる部品もありますが、Googleは7年間のサポート期間は部品の入手を可能にすると報じられています。

価格の面ではPixel 8が11万2900円(税込)から、Pixel 8 Proが15万9900円(税込)からと、Pixel 7シリーズと比べて3万円ほどの値上げとなっています。キャリアからの販売で実施するキャンペーンやGoogleストアのストアクレジットが提供されるキャンペーンなどを上手に利用して、今後7年のワクワクにベットしてみるのもよいかもしれません。

ガジェット通信LIVEで実機を紹介

本日、10月13日20時から配信する「ガジェット通信LIVE」では、Pixel 8とPixel 8 Pro、さらにPixel Watch 2の実機を触りながら、注目機能を紹介していきます。アーカイブもご覧いただけるので是非!

「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」実機レビュー / ガジェット通信LIVE #131(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=_CS8TxBN6rw

「Google Pixel 8/8 Pro」レビュー カメラの強化とAIによる写真・動画編集機能に驚くAndroidスマホの新スタンダード