日弁連は10月11日、定例記者会見を開き、人権擁護大会(10月5、6日)で採択された決議について報告した。採択されたのは、医療アクセスが保障される社会の実現と、地域の家庭裁判所の改善と充実の2つ。

●「今まで以上に市民の声を拾い上げて取り入れていきたい」

日弁連副会長の中村元弥弁護士は、家庭裁判所の改善と充実を求める決議の背景について説明した。

2021年に家裁に申し立てられた事件総数は前年比4.1%増で、過去最高の115万372件を記録した。2021年度の児童相談所の虐待相談対応件数は過去最大の20万超に及んでいるが、人的物的基盤が不十分だという。

また、全ての家裁に児童室やエレベーターがあるわけではなく、裁判官や家裁調査官の数も不足している。家事事件では家裁調査官が重要な役割を果たすが、その定員は直近14年間でわずか2人しか増えていない。

中村弁護士は、地域の住民にとって家庭裁判所は人権保障の最後の砦であることから、決議で国と最高裁に見直しを求めたことを報告した。またIT化についても利用が困難な高齢者や障害者などへの配慮が必要だと指摘した。

中村弁護士は、「地域の弁護士の存在も不可欠。今まで以上に市民の声を拾い上げて取り入れていきたい」と意気込みを語った。

●医療アクセス充実を求める決議「医療従事者と連携していきたい」

医療アクセスの充実を求める決議について、日弁連副会長の大脇美保弁護士は、コロナ禍の前から経済的負担や地域的・場所的な要因により、医療にアクセスできない人がいたことを指摘。決議では、誰でも医療を受けられる社会の実現を求めたことを報告した。

大脇弁護士は、「シンポジウムでは医療従事者から、弁護士会と連携していきたいとの声をもらった。これを機に連携していきたい」と話した。

「家庭裁判所の改善が必要」事件は過去最多でも裁判官や調査官は不足 日弁連人権擁護大会で決議