最終戦までCS出場争いで盛り上がった、パ・リーグの今季ペナントレース。そこで甦る名将の珍言を紹介しよう。

 名将とは「イチロー」の名付け親でもある故・仰木彬氏のことだ。昭和30年代の西鉄ライオンズ(現・西武)黄金時代に正二塁手として活躍し、引退後は西鉄、近鉄、オリックスコーチや監督を歴任。率いたチームを11年連続でAクラス入りさせたことで知られる。

「仕事でも、女性を口説くのも、自分の特徴を最大限に生かせ」

「山に登るルートはたくさんあるのだから、自分の成功体験を押し付けてはいけない」

 などといった数々の名言を残しているのだが、実は周囲をア然とさせた言葉がある。

 1994年のことだ。当時、西武は黄金時代。前年までリーグ4連覇し、この年もペナントを制すれば、リーグ初の5連覇を達成するシーズンだった。春先はエースの工藤公康が開幕4連敗を喫するなど、投壊状態だったが、6月には2位の仰木オリックスに6.5ゲーム差をつけて、早くも独走状態に突入した、はずだった。

 ところが他球団は時にローテーションを変更し、西武戦にエース級の投手を次々と投入。球宴後に西武からケガ人が続出したこともあり、後半戦突入直後の9試合で3勝6敗と、王者がつまずいた。

 首位と16ゲーム差もついていた近鉄の猛追もあり、8月7日の時点で西武、ダイエーオリックス、近鉄の4チームが0.5ゲーム差の中にひしめき合う大混戦になったのだ。

 ほぼ毎日が「首位攻防戦」。ここで飛び出したのが、仰木氏の珍言である。連日、取り囲む記者団の「混戦ですね」と発した質問に対する答えが「熱パ、接パ、パピプペポのパ」だったのだ。この「パピプペポのパ」に大爆笑の渦が巻き起こったのは言うまでもない。ウィットに富む発言が多い仰木氏だが、大の酒好きで知られるだけに「まだ酔っ払っているんですか」「監督、二日酔いですか」という質問も飛び交った。

 西武は9月2日オリックス戦に敗れ、一度は首位陥落したが、翌3日から11連勝。天王山といわれた9月16日からのオリックス4連戦に4連勝して10月2日、近鉄を下してV5を達成した。結局、西武の強さが目立つシーズンだったが、仰木氏の珍言は面白みのない発言ばかりの西武・森祇晶監督を完全に圧倒していた。

(阿部勝彦)

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