特急形の寝台客車として登場した国鉄型14系は多くの列車に連結されたほか、豪華な内装へ改造された車両も存在します。現代でもイベント列車として各地で使われますが、どのような特徴があるのか時代を追って紹介します。

分割併合の際、ネックになった電源車

姫路~浜坂間を2023年9月末、欧風客車「サロンカーなにわ」を使用した団体臨時列車が走りました。客車は寝台特急にも連結されたことがある14系座席車を改造したものですが、新製から50年、改造からも40年以上が経過しています。

国鉄は1971(昭和46)年、それまでの20系特急形客車(寝台車)の問題点を解消するために14系を開発。そもそも20系は、列車のサービス電源を「電源車」と呼ばれる発電機搭載車両で賄っていましたが、当時の寝台特急は途中で編成を分割して別々の目的地を目指す列車も数多く設定されており、編成ごとに電源車が必要な状況でした。

そこで、客車の床下にディーゼル発電機を搭載すれば、電源車にも利用客を乗せられるとして特急形客車を考案。この構造ならば、電源車と違い編成内での通り抜けも容易ですし、列車の定員も増えます。こうして登場したのが14系客車でした。

14系の開放形3段式寝台は20系を踏襲していますが、寝台幅が52cmから70cmに拡大され、居住性が改善されています。また、乗車時間が長い当時の寝台特急では、寝台を座席に変換する必要がありましたが、中段寝台を自動昇降式とすることで省力化を図ってもいます。

20系では手動開閉だった側扉も自動化。一方、油圧式緩衝器が省略され、堅めのゴムが緩衝器に使われたことで、乗り心地は悪化しました。また、20系でも採用された浮き床構造を廃止し固定床としたことで、防音性も低下しました。

特に発電機を搭載した寝台車は騒音が大きく、ゴムを挟んだり吸音材を付けたりしたものの不評でした。そうしたことから国鉄は、電源付き寝台車を「最後に寝台券を発売する」設定としていたほど。筆者(安藤昌季:乗りものライター)も、発電機を備えたスハネフ14形で寝たことがありますが、正直、一晩中気になってよく眠れませんでした。

特急形だけど急行でデビュー

14系寝台車は1971年の登場時、急行「瀬戸」で試験運行されました。試作車にのみ蒸気暖房管と電気暖房引き通し線が備わっており、従来形客車と編成を組めるようにされたのです。

翌1972(昭和47)年より、特急形座席車タイプが登場します。183系電車と同等(14系は荷物置き場も備わる)の2+2列簡易リクライニングシートを備えた車両で、普通車のみ製造されました。

同年、寝台特急さくら」「みずほ」「あさかぜ」が運行開始すると14系も運用され、本来の活躍を見せるようになります。しかしこの年、北陸トンネルで列車の火災事故が発生し、火元になる発電機を床下に置くのは危険とされ、14系の増備は中断してしまいます。

とはいっても上述した通り、電源車を復活させては分割併合に不向きのため、防火対策を強化した14系が1978(昭和53)年から製造されます。新型14系は15形として、2段寝台となりました。

A寝台以外は3段寝台だった従来の14系も、寝台特急の需要減少を受けた1980年代初頭より、2段寝台に改造されます。この需要減少は深刻で、1984(昭和59)年の4人用B個室寝台「カルテット」を皮切りに、2段寝台化だけでなく個室寝台に改造される車両が増えていきます。1989(平成元)年には寝台特急「北陸」に、1人用A個室寝台「シングルデラックス」、1人用B個室寝台「ソロ」を設置。ミニロビーには共用シャワー室も取り付けられました。

バブル期に誕生した豪華客車

1990(平成2)年には、共用シャワー室を備えた「シングルデラックス」が寝台特急「あさかぜ」「瀬戸」にも連結されました。翌1991(平成3)年には、「出雲2・3号」に「シングルデラックス」と1~2人用個室寝台「シングルツイン」、2人用個室寝台「ツイン」を備えた個室寝台車も投入されました。

また、夜行列車向け座席車の改良も行われます。1988(昭和63)年には夜行急行「まりも」で、グリーン車用座席を改良した「ドリームカー」が改造されて登場。1986(昭和61)年より、高速バス対策として14系座席車を連結していた寝台特急あかつき」では1990(平成2)年、より豪華な1+1+1列大型リクライニングシートを備えた「レガートシート」への改造も行われました。1997(平成9)年には夜行急行「はまなす」用として、「はまなすカーペットカー」にも改造されています。

内装を大幅に変え、団体用客車となった車両も存在します。冒頭でも紹介した「サロンカーなにわ」と「サロンエクスプレス東京」は、豪華な車内設備が話題となり、特に「サロンカーなにわ」はお召列車でも使われました。これは現役です。

そのほか「ホリデーパル・サロンカー」(1984年)、「スーパーエクスプレスレインボー」(1987年)、「あすか・イベントカー」(1987年)、「リゾート・シュプール」(1988年)、「ユーロライナー増備車」(1990年)、お座敷客車「浪漫」(1995年)など、バブル期に改造された14系が多くあります。

ちなみに私鉄でも、東武鉄道が観光列車「SL大樹」として、ほぼオリジナル内装の14系座席車を運行しています。前型の12系客車と比較しても数を減らした14系ですが、末永い活躍を祈念したいものです。

寝台特急「はやぶさ」の14系寝台車(安藤昌季撮影)。