大阪万博

2025年4月に開催予定の大阪・関西万博が多くの問題を抱えている。経費の膨張、建設や外国らの参入の遅れなどであり、予定通りのスケジュールで開催できるかどうか怪しくなっている。

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■経済効果?

五輪や万博などの大型イベントを誘致するときの殺し文句は「経済効果」である。要するに、お金が儲かるから実行しようというわけである。

オリンピックパラリンピックの「Tokyo 2020」には、私も都知事として準備に全力を挙げたが、開催反対者に対する説得材料がこの経済効果であった。当時、日本銀行は経済波及効果として33兆円という数字を打ち出し、私もその数字を何度も引用した。

これだけの経済効果があるのなら、反対する人は減るだろう。しかし、新型コロナウイルスの流行もあって、開催が1年延期になり、期待したほどの経済効果は上がらなかった。具体的な数字は論者によって異なるが、33兆円という数字は机上の空論だった。

大阪万博の経済効果については、アジア太平洋研究所が2兆9182億円という数字を出している。約3兆円である。その理由としては、建設ラッシュ、2820万人という来場者、交通の便の改善などが挙げられている。交通については、関西空港の拡充、開催地・夢洲(ゆめしま、大阪・此花区)への地下鉄の延伸などがある。

 

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■費用は?

収支の計算をするには、売り上げから経費を差し引かねばならない。東京五輪も予定していた経費が膨張し、私は都知事として経費削減に全力を挙げ、東京都以外の既存の施設を活用するなどして、約2000億円の削減に成功した。

しかし、最終的な大会経費の総額は1兆4238億円となった。2013年1月の立候補ファイルでは、費用は1538億円となっていた。ところが、私が2014年初めに都知事に就任したときには4594億円と既に3倍にも膨張していた。最終的には、さらにその3倍超になったのである。実際は、1兆5千億円どころか、約3兆円の経費がかかったと私は見ている。

大阪万博については、会場建設費は万博誘致時には1250億円だったが、2020年には1850億円に修正され、これから2300億円程度に膨らむという。建設費は、政府、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担する。「政府」ということは税金ということなので、大阪の住民でない日本国民も負担するのである。

運営費については、800億円と見込んで、チケット販売収入でまかなう計画であったが、数百億円程度の増額が不可避だという。

大阪万博は、大阪維新の会が人工島夢洲の活用手段として打ち上げ、万博の後にはIR(カジノ)を誘致することになっている。大阪市長大阪府知事は首相官邸によく足を運び、万博やIRの経済効果について、首相や官房長官と意気投合していた。

 

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■海外パビリオンの遅れ

大阪万博に参加する153の国と地域のパビリオンの建設も遅れている。

自らが自由に設計・建設する「タイプA」のパビリオンで、基本計画書を大阪市に提出したのは韓国など4カ国のみである(9月4日現在)。資材や人件費が高騰し、日本のゼネコンは海外パビリオンの建設を請け負わない。この状況で、予定通り建設が完了するかどうかは不明である。

 

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■何のための万博か?

東京オリンピックパラリンピックは、期待された経済効果を生まなかったとはいえ、アスリートたちの活躍もあって、大きな感動を生んだ。やはり、世界最大のスポーツの祭典である。

では、大阪万博の目的は何か。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」である。サブテーマは、Saving Lives(命を救う)、Empowering Lives(いのちに力を与える)、Connecting Lives(いのちをつなぐ)であり、コンセプトはPeople’s Living Lab(未来社会の実験場)である。

テーマが抽象的すぎて、皆が飛びつくようなものではないし、世界各国がこのテーマでどのような展示をするのだろうか。残念ながら、会場に足を運びたくなるようなものではない。そこが五輪と決定的に違う。

経済波及効果を主たる目的とするようなイベントが人々の心を動かすはずはない。万博のあり方について、国民的議論が必要である。

 

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■執筆者プロフィール

舛添要一

Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。

今週は、「大阪・関西万博」をテーマにお届けしました。

経費膨張、建設遅れ… 日本国民の税金を使う「大阪万博」の決定的な問題点