マーベル・スタジオのドラマシリーズ「ロキ」シーズン2の第2話「ブレイキング・ブラッド」が、10月13日に配信された。第1話で、時間軸が無数に分岐していて世界の時間が制御不能になっており、ロキ(トム・ヒドルストン)が自分の意思とは関係なく現在と過去を往来する“タイムスリップ”に巻き込まれるという事態が発生。“時の終わり”と“過去”に行ってきたロキは、現在のTVAの本当の姿を知ってしまう。現在に戻ったロキは、信頼しているメビウス(オーウェン・ウィルソン)だけに真実を話し、メビウスも完全に信じたわけではなさそうだが、その可能性があることを信じて、設備管理部にいる“O.B.”ことウロボロス(キー・ホイ・クァン)を紹介した。彼であれば“タイムスリップ”の謎や対処法が分かると思ったからだ。第1話は目まぐるしい展開で3話、いや4話分ぐらいの内容が凝縮されていたものになっていたが、第2話もそれと同じくらい内容盛りだくさんで、油断すると付いていけなくなる難解さ、“ロキのロキらしさ”もあり、目が離せない展開となった。(以下、ネタバレがあります)

【写真】格好いい…!ロキ&メビウスのフォーマルないでたち

シルヴィを必死に捜索

ロキとメビウスは、X5(ラファエル・カザル)のタイムパッドの記録を追ってロキの変異体である“シルヴィ”(ソフィア・ディ・マルティーノ)を捜していたが、やってきたのは神聖時間軸における「1977年の英国ロンドン」だった。これまでシルヴィは“戦争”や“災厄”を選んで移動していたので、ロキは平和過ぎる街の様子を見て“ここにはいない”と判断。実際、第1話の終わりで、シルヴィ1982年にいたので、ここにはいない。

しかし、X5は簡単に見つけることができた。劇場の表に「ブラッドウルフ主演『ザニアック!』」という看板がデカデカと掲げられていて、その主演として大勢の人たちに囲まれていたのがX5。神聖時間軸でのX5は俳優ブラッドウルフとして生きていた。“ザニアック”とは元々「ソー」のコミックに登場するヴィラン。コミックでは、ダーク・ディメンションからやってきた邪悪な寄生生命体が映画「ザニアック!」の殺人鬼役のブラッドウルフに取り憑いて、本物の殺人鬼になるというストーリー。とにかく1977年ロンドンでは人気俳優としてX5は人生を謳歌していたということになる。

TVAシルヴィの人生を奪い、今もシルヴィを追っている。その追手の一人・ハンターであるX5に対してロキが怒るのも無理はない。ロンドンの街中を逃げるX5に、ロキは本気を出し、幻覚の魔術と増殖の術を繰り出して簡単に捕らえてみせた。メビウスから「やり過ぎでは」とたしなめられるが、これまで、特にシーズン1では抑制されてきただけに、“本来のロキ”らしい部分が見られてワクワクした。

タイムパッドを改造していたX5。捕らえられてTVAに連れられてきたが、かつてロキが捕らえられ拘束されていた時の服と首輪をX5が着けている姿を見ると、シーズン1と形成逆転したかのよう。改造したタイムパッドをウロボロスの所に持っていくが、彼は新たな分岐を扱う装置を作っているところだったので、ウロボロスに渡されたタイムパッドの説明書を片手にロキとメビウスが解明することに。

とはいえ、複雑な機械に改良が加わり、お手上げ状態になり、X5を尋問して吐かせようとするが簡単には口を割らない。それどころか、ロキに対して「これまでの悪事の数々を償っているだけだ」とか「人助けをしてもそれは全て逆効果だった」といった言葉を投げ掛けて怒らせようとする。以前のロキであれは簡単に怒りの沸点に達していただろう。しかし、シーズン1の序盤で、そういった運命論的なものに対して、乗り越えてきている。

■温厚なメビウスが激怒

メビウスが懐柔しようとするが聞き入れず、逆にメビウスに「お前もさらわれた。人生を奪われてまでここにいることにこだわるのか」と、本来の人生に戻りたくないのかと語り掛け、メビウスがこのままでいいと答えると、「独りぼっちNowhere Man(居場所のない男)」と罵った。

これには、かつて見せたことのないほどの怒りを見せたメビウス。ロキがなだめて、一緒にパイを食べて落ち着かせるという、これもまた今までの逆転現象のようなシーンとなった。芝居ではなく、本当に理性を失くして怒ってしまったことを認めたメビウスに、ロキが映画「アベンジャーズ」で描かれた“ニューヨーク襲撃”を自身の失敗談として語り、「誰にでもある」と慰めているところも、メビウスとの信頼関係の強さを感じた。

■ロキ、マックシルヴィと再会

その後、ロキ&メビウスによる連携“拷問”などを経て居場所を突き止め、1982年のマクドナルドで働いていたシルヴィに会ったロキ。タイムスリップした時に未来でTVAにいたのを見かけたと話し、一度TVAに戻ることを説得するが、シルヴィは頑として受け付けない。シルヴィの能力を使って、記憶をたどって見てもらおうとしたが、それも拒否。しかし、一緒に来ていたX5が早く神聖時間軸に戻りたくてそわそわしているのに気付いたメビウス。実はドックス将軍(ケイト・ディッキー)が分岐時間軸への総攻撃を計画していて、X5はそれを知っているから、この分岐した時間軸から早く脱出したくてそわそわしていたのだった。

シルヴィはX5の記憶をたどって、そのことを確信し、ロキと手を組んでドックスたちを捕まえたが、もうすでにほとんどの分岐時間軸は剪定された後だった。

TVAが問題そのもの。壊れてる」と怒りをあらわにしたシルヴィは「家に帰る。まだあればだけど」と言って1982年に戻ってしまった。せっかく再会できたのに、また離れ離れに。「行かないでくれ。もっとツラいぞ」とロキはシルヴィに声をかけるが、タイムドアの向こうに姿を消してしまった。その直後にロキは言った。「残る方は…」と。

1982年に戻ったシルヴィ。最後のシーンでチラッと見えたが、手に持っていたのは“在り続ける者”が持っていたタイムパッドではなかっただろうか。ウロボロスが時間軸の分岐に対処する機械を作っているが、防爆扉を開けるためには“在り続ける者”かミス・ミニッツに鍵を無効化してもらうしかないと言っていた。つまり、次の段階で必要となってくるのはシルヴィが持っていた“それ”ではないだろうか。

スピード感あふれるストーリー、いくつもの重要な問題が並行して進行するだけに、今後も油断ならない展開が続きそうだ。

また、久々に見られたロキのロキらしい姿に、SNS上では「めちゃくちゃロキしてるな」「ロキがロキしてる」「第2話もヤバすぎた」といった歓喜の声が寄せられている。

「ロキ」シーズン2は、ディズニープラスで毎週金曜に独占配信中。

◆文=田中隆信

「ロキ」シーズン2の第2話が、10月13日に配信された/(C) 2023 Marvel