新土曜ドラマ「ゼイチョー『払えない』にはワケがある」(毎週土曜夜10:00-10:54、日本テレビ系Huluにて配信)の第1話10月14日に放送された。(以下、作品のネタバレを含みます)

【写真】ノリが軽い菊池風磨“蒼一郎”と、生真面目な山田杏奈“華子”の名コンビ

■「ゼイチョー『払えない』にはワケがある」とは

同ドラマは「BE・LOVE」(講談社)にて、2016年4号から2017年6号まで連載されていた『ゼイチョー!〜‎納税課第三収納係〜』が原作。“徴税吏員”が滞納されている税金を徴収するべく奮闘する物語で、著者である慎結が市役所で非正規職員として働いていた経験を基に描かれている。

ノリは軽いが優れたスキルを持った徴税吏員・饗庭蒼一郎を演じるのは菊池風磨。そして、蒼一郎と正反対、真面目に滞納者と向き合う猪突猛進タイプの新人徴税吏員・百目鬼華子役は山田杏奈が務める。

■主人公・百目鬼の“徴税吏員”という仕事

物語の冒頭、駐輪されているバイクに「差押財産」のシールが貼られた大型ロックをかけてから、アパートの一室にノックをする女性。「ご存じかと思いますが、加茂原様には24万6500円の住民税の滞納がございます。お収めいいただけますか」。何度も声をかけた末に出てきた男は、恫喝するような大声で「うるせえなぁ!今は払えないから後で役所行くよ!」とだけ告げてドアを閉めようとする。

しかし、強面の相手にもひるまず、女性は体でドアを止めると「そうはいきません」と警察署員を呼んで家宅捜索を開始。彼女は、みゆきの市の市役所に務める徴税吏員・百目鬼華子。「なあ頼むよ…うちは親父も寝たきりでよ。貧乏人から金とってどうすんだよ!」「俺だって好きで滞納してるわけじゃねえんだよ」と泣きの演技をする住民だったが、華子は洗濯機に隠された現金を見つけ出す。

慌てて「返せ!」と暴れる住民の腕をひねって拘束…といったところで“研修”は終了。「本気すぎるよ!」と怒られつつも反省の色を見せない華子に、玄関から登場した蒼一郎は「暴力はダメ」と注意した。

「徴税ってるね~!」などと驚くほどノリの軽さを見せつつも、差し押さえ財産のチェックの甘さ、訪問時の名乗り方、差し押さえ不可物件への差し押さえなど華子のミスを次々に指摘。どうやら、見た目やノリからは考えられないほど、優秀な人物のようだ。

■”臨宅”をきっかけに思い出される百目鬼の幼少期の記憶

「気になる滞納者がいるからご自宅まで行って見ちゃおうか」と饗庭は百目鬼を“臨宅”へ誘った。臨宅とは、一般家庭に訪問して税に関する調査を行うこと。二人が向かったのは、みゆきの町にある和菓子店「喜泉」の主人である泉喜和(笹野高史)の自宅。泉は、3年分の住民税を滞納している。以前は定期的に分納されていたのだが、最近は途絶えてしまっていた。

泉の百目鬼借金の連帯保証人であるが故に滞納が続いていると予想した百目鬼。しかし、饗庭には気になることが。泉は不思議なことに3年分住民税の滞納があるにもかかわらず、なぜか固定資産税はちゃんと納められていたのだ。

泉には、借金の返済に加え、住民税の本税と延滞金がある。しっかりと納税ができるのかどうか見極めるべく、二人は“臨宅”へ向かった。

家に上がってさっそく徴税しようとする百目鬼をよそに、世間話を始めた饗庭。やがて泉は「滞納のお話でしたね」とおもむろに立ち上がり、滞納分の住民税1年分を一括納付すると言い始めた。今まで通りの分納ではないことを不審に思った饗庭は「大丈夫なんですか?」と確認するものの、泉は「大丈夫大丈夫」とどこか陰のある表情でうなずくのみ。

百目鬼と共に翌日も泉の元へ向かうと、和菓子店「喜泉」は早仕舞いしていた。泉の家を尋ねたところ、玄関扉のガラスから空中に浮いている足が見える。急いで扉を開けて救急車を呼んだおかげで泉は一命を取り留めたものの、泉が書き残した遺書には「死亡保険金を借金の返済や残りの税金の納付に充ててください」との文言が。店員に「もし死んでたら、あんたらの責任だ」という非難の言葉を浴び、華子は考え込んでしまう。

華子の脳裏には、15年前の記憶がよみがえっていた。幼いころ徴税吏員が家に入ったこと、何もなくなった家で母が抱きしめてくれたこと、そして幼くして母の遺影の前で泣いたこと。

和菓子店「喜泉」を追い詰めたもの

「少しだけ苦労している取引先がいる」と話していた泉。蒼一郎は以前から調査していた高級料理店「なべしま」で、原因と思われる一幕を目撃する。帰りの客に、惜しみなく「喜泉」の和菓子を配っている姿だ。

「なべしま」は以前から税金の高額滞納があり、納税課の面々が立ち入りのタイミングをうかがっているターゲット。しかし、同店の財政から回収できる見込みが立たず、立ち入りできないという状況にあった。そんな「なべしま」が気前よく菓子を配っている様子に、蒼一郎の勘が“何かある”と告げる。

話を聞きに行くと、やはり「なべしま」と「喜泉」は取引があり、以前から不当に安い価格で仕入れを依頼されているようだった。だが、「なべしま」の店主は、「先代に世話になった」という泉が自主的に取引ているだけと主張。今飾っている花も造花を使わざるをえないほど、経営が厳しい状況にあるという。

しかし、蒼一郎の目はごまかせない。差している花は造花でも、器は骨董品。「俺たちが来るのに気付いて、慌てて花だけ差し替えたんですよ」と力強く訴え、係長の橘勝(光石研)へ家宅捜索の許可を求めた。

果たして家宅調査の日。探し回っても金目のものは見つからず、「だからないって言ったでしょ」と「なべしま」の店主が現れる。しかし、その目線と雰囲気から隠しごとの匂いをかぎ取った蒼一郎は、にわかに「先代へのごあいさつがまだでした。お線香あげさせていただきますね」と仏壇の前へ。明らかに動揺を見せる二人をよそに、蒼一郎は線香箱を手に取る。「あれれー? どうして中にしまってないのかなー! 中にしまっておきますね」。その言葉に「なべしま」の店主は「やめろ!」と声を荒げる。

仏壇の引き出しを引くと、なかには尋常ではない量の札束が。仏具は差し押さえの対象にならないという原則を利用し、財産を隠し持っていたのだ。「あらやだ。差し押さえさせていただきますね」と軽いノリで告げる蒼一郎に、「なべしま」の店主は大暴れ。「税金で食ってる公務員が、庶民の苦労も知らないで偉そうにしやがって!」と暴言までぶつける店主に、蒼一郎はゆっくりと言葉を紡いでいく。

「皆さんには、決して少額ではない税のご負担をいただいております。その上で、できるだけ公平な形でご負担していただけるよう、我々徴税吏員がいます」「中には、税金の納付を苦に命を絶とうとしてしまう方もいる。だから、あんたみたいに汚え手を使って徴税から逃れようとする人間を、俺たちは絶対に許しちゃいけねえんだよ」。静かに「なべしま」店主に目を合わせながら、蒼一郎は続ける。「なべしまさん、公務員なめないでくださいね」。

不正に徴税を逃れ、取引先を苦しめていた「なべしま」から離れることができた「喜泉」。しかし、税の滞納は依然解消されていないままだ。そこで、蒼一郎は自宅と店舗を担保にすることで、月々は利息の支払いのみで済むタイプの融資を紹介した。

借り入れした金額は、泉の死後、自宅と店舗を明け渡すことで返済が完了するという。少ない負担で税の滞納を解決する提案には、泉が亡くなった妻との思い出が詰まった自宅の庭をすぐに手放さず済むようにという意図も含まれていたのだ。

そして、華子も税の支払いを苦に死を選んだ泉に「疲れてしまったなら、そう言ってください。苦しいときは助けてって言ってください」「私たちに仕事をさせてください。私たちはそのためにいるんです」と厳しくも温かい言葉で激励。

同じく命を亡くしてしまった母のことを思い出しつつ、「泉さん、公務員…なめないでください」と蒼一郎と同じたんかを切るのだった。

菊池風磨“蒼一郎”が公平公正を掲げる徴税吏員の戦いを見せる/(C)日テレ