なぜ新しい建物は平壌ばかりに建てられるのか。そんな地方の人々の不満を意識して始められたという北朝鮮の農村住宅建設が、現在、各地で盛んに行われている。

北部の両江道(リャンガンド)には、各地の朝鮮労働党員からなる「党員大隊」を投入し、急ピッチで建設が進められているが、ここに来て急ブレーキがかけられた。手抜き工事が横行しているのだという。詳細の現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

道内では、新築された住宅の壁が衆人環視の中で崩壊するという事故まで起きている。

こうした事態を受け、両江道の建設現場では今月4日から9日にかけて、大々的な「検閲」が行われた。これは監査や検査のことを指すが、内部で行った場合、手心が加えられ、問題の見落としに繋がる。そこで、各地域の党員大隊の指揮部が、別の地域の党員大隊の検閲を行う。これが「交差検閲」だ。

この地域の住宅建設は、今月10日の朝鮮労働党創建78周年の日までに終えることになっていたが、期日ばかり気にして、建物の質を度外視した手抜き工事が横行する事態となった。

そこで、両江道建設総指揮部は、住宅の基礎、設計図との照合、暖房、上下水道設備がきちんと工事されているのか、報告された完成戸数と実際の数字が合っているのかなどを検査して、1等となった党員大隊には70キロのブタ4頭、2等にはヤギ2等、3頭には犬2匹を商品として与えることにした。

同時に、「1等獲得に目がくらみ、党創建記念日までに完成さされた住宅の数字を水増しして報告するなど、インチキをした党員大隊指揮部は処罰するので覚悟せよ」との警告を発した。

さらには、「計画を遂行できなかった党員大隊には、党としての良心がないものとして、祝日である記念日当日は休めると思うな」とも伝えた。

総指揮部は「できるだけ早く、よりいいものを」という相反する2つの要求を突きつけたわけだが、結果がどうなったのかは伝えられていない。

働く人々の安全よりも、金正恩総書記や朝鮮労働党の命令をより重視するのが北朝鮮社会だ。工期に合わせるために、猛暑の中でも作業を続けた。

「革命の聖地がある両江道をより発展して文明的な都市にしようとする党の壮大な構想に足取りを合わせられず、上の空で働き、あれはできない、これはできないと文句を言うのは革命闘士の働く姿ではない、というのが指揮部の理屈だ」(情報筋)

作業を無理やりスピードアップさせる「速度戦」で工事を進めると、様々な問題が起きる。他の地域の農村住宅でも様々な問題が起きているが、原因を探ると、「速度戦」にたどり着くことが多い。

両江道の農村住宅建設現場で働く党員大隊の隊員(画像:労働新聞)