女優の遠野なぎこさんが10月14日、自身のブログで、“食い逃げ被害”にあったことを報告しました。

「犯罪被害」とインパクトある題名で投稿された記事では、アプリで知り合ったとみられる初対面の男性が、食事を終えて遠野さんが支払いをしている際に姿を消したことを明かしています。

食事代については事前に「気持ちよく対等に、割り勘にする話」をしていたという遠野さんですが、男性はアプリからもいなくなっていたとして、「被害届を出そうにも正体不明なのでどうにもならない」とやるせない思いを吐露しています。

「悔い改め、もう二度と彼が同じ過ちを犯さないで欲しい」と大人の対応をした遠野さんですが、今回の“食い逃げ”はどんな犯罪になるのでしょうか。冨本和男弁護士に聞きました。

●詐欺罪の成立は考えられるが…

——どんな犯罪になりうるのでしょうか。

遠野さんを被害者とする詐欺罪が成立する可能性があります。

詐欺罪は、欺罔(ぎもう)行為によって、相手方を錯誤に陥らせて財物を交付させた場合に成立します(刑法246条1項、1項詐欺)。財物以外の財産上の利益(債権など)を得た場合は、いわゆる「2項詐欺」が成立します(同条2項)。

今回のケースでは、遠野さんと男性との間で「割り勘にする話」が出ていたようです。

男性が実際には支払うつもりがないにもかかわらず遠野さんを騙して飲食したのであれば、飲食した行為について「1項詐欺」が成立すると考えます。遠野さんも男性が折半すると思ったからこそ、飲食店で一緒に飲み食いするのを了承したといえるからです。

この点、実際には支払うつもりがないにもかかわらず2人で飲食代を折半する約束したあと、実際には支払わずに姿を消して音信不通になり支払いを免れたことを捉えて「2項詐欺」になるとする考え方もあります。

しかし、詐欺の成立には処分行為の存在が必要であり、遠野さんはその男性に対する請求権を処分した(免除した)とまではいえないので、「2項詐欺」にならない(=いわゆる利益窃盗)のではないかと考えます。

ただ、割り勘の話をした当初から詐欺の故意があったかどうかを立証するのは、実際問題として容易ではありません。

たとえば、割り勘の話が出た時点では支払うつもりがあったが、財布を忘れたなどその場で支払いできない事情が後からわかったので黙って逃げたような場合には、「欺罔行為がないため詐欺罪は成立しない」という結論も考えられます。

——仮に犯罪にならないとしても、遠野さんへの「割り勘代」は発生しているのでしょうか。

2人で折半することを約束していたのであれば、男性には遠野さんに対する「割り勘代」の支払義務は依然として存在します。

ただし、かなり高額の飲食代でもなければ、弁護士に依頼するなどして司法的な解決を目指すのは、労力やコストの観点から割に合わない結果になりそうです。相手の男性は「正体不明」とのことですので、仮に責任を追及しようとした場合はその特定も必要になります。

【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp

遠野なぎこさん、アプリで知り合った男性が“食い逃げ” 「割り勘と約束したのに…」犯罪になる?