岡田監督の提言がどう響くのか。いずれにせよ、今季もドラフトは注目を集めるだろう(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 阪神岡田彰布監督の発言がまたも球界に一石を投じている。10月26日に迫るドラフト会議へ向けて、各球団上位指名候補の絞り込みを急いでいるが、例年上がる「1位指名の公表」について、コミッショナー通達で禁止にしてはと投げかけたのだ。

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 昨年は阪神、DeNAロッテ以外の9球団が、事前に1位指名を公表した。指名を受ける選手へ誠意を伝えること以上に、他球団への牽制の意味が強い。今年は例年に比べれば1位指名の公表の動きは遅く、ここまで13日に広島が、青山学院大の常廣羽也斗投手の1位指名を公表しただけだ。

 球団の思惑として、1位指名の公表には大きく2つの狙いがある。

 まず1つ目は、指名競合球団を1つでも減らすこと。先に選手の指名を明らかにすることで、その選手を狙っていた別の球団は指名しても競合してくじ引きになることが避けられない。1位指名公表の時点で複数の球団が並ぶこともある。2017年のドラフトでは、早稲田実高・清宮幸太郎の1位指名をヤクルトソフトバンク、阪神の3球団が公表。本番当日には日本ハム、巨人、楽天、ロッテも加わり7球団の競合の末に日本ハムが交渉権を獲得した。この年は清宮人気が異常高騰していたドラフトで、公表することによって競合球団を1つでも減らしたかったが、結果的に7球団もの指名が集中した形だ。

 そしてもう1つ、競合球団を減らすことの延長線にあるが最大の狙いは「一本釣り」。前述の通り昨年は事前に9球団が1位指名を公表していたが、いずれも異なる選手だった。指名候補選手たちの人気が「割れた」場合には、こうした一本釣り狙いが功を奏することがある。実際に日本ハムが日体大・矢澤宏太、中日が沖縄大・仲地礼亜、広島が苫小牧中央・斉藤優汰、西武が早大・蛭間拓哉ソフトバンクが誉・イヒネ・イツア、ヤクルトが東芝・吉村貢司郎、オリックスが白鷗大・曽谷龍平の一本釣りに成功した。高松商・浅野翔吾の1位指名を公表していた巨人は、阪神との2球団競合となったがくじ引きで勝利。立大・荘司康誠1位指名を公表していた楽天もロッテとのくじ引きに勝利し、結果的に1位指名を公表していた9球団が全て、意中の選手との交渉権を獲得した。
 
 では今年のケースはどうか。今秋のドラフト会議は、大学生の即戦力投手が豊作と言われている。特に東都大学リーグには前記の常廣だけでなく、同じ青山学院大の下村海翔、東洋大・細野晴希、中央大西舘勇陽亜細亜大・草加勝、国学院大・武内夏暉らが高い評価を集め、いずれもドラフト1位候補に挙がる。ある意味、人気は「割れた」状態で当日を迎えることになりそう。残り10日となり、一本釣り狙いの1位指名公表は続くのか、それとも各球団鳴りをひそめるのか。他球団の動向もにらみながら、発言一つでも熱い駆け引きはもう始まっている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

あり?なし?阪神・岡田監督が禁止提言のドラフト1位指名公表、各球団の狙いと渦巻く駆け引きとは