お笑いコンビ「FUJIWARA」の藤本敏史さんが10月11日、所属する吉本興業の公式サイトを通じて、接触物損事故を起こしたと報告しつつ、謝罪しました。事故は同4日、東京・渋谷区内の交差点で藤本さんが乗用車を運転中に別の車両と接触。各社の報道によると、車から降りることなくその場を立ち去り“当て逃げ”の疑いで捜査中だということです。そこで、“当て逃げ”がどのような罪になるのか、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

Q.ずばり、“当て逃げ”はどのような罪になるのでしょうか?

牧野さん「『当て逃げ』は、道路交通法(道交法)72条1項に規定されている救護義務等のうち、人の死傷が生じておらず、物損が生じた場合の道路交通法違反をいいます。

道交法第72条1項は、交通事故を起こした者の2つの義務を定めています。すなわち、運転を停止し、道路における危険を防止するなどの措置を講じる義務『危険防止措置義務』、および、事故の発生を警察官へ報告する義務(交通事故が発生した日時および場所、損壊した物およびその損壊の程度、当該交通事故に係る車両などの積載物並びに当該交通事故について講じた措置)です。危険防止措置義務違反の場合には1年以下の懲役または10万円以下の罰金(第117条の51号)、報告義務違反の場合には3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金の(第119条17号)が科される可能性があります。

なお、通常の物損事故ではあり得ませんが、故意に物損事故を起こした場合には、器物損壊罪(3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは1000円~1万円以下の科料)が科される可能性があります」

Q.運転中に接触事故を起こした場合、どのような対応をすれば良いのでしょうか。

牧野さん「基本的に、以下の対応手順になります」
※『三井住友海上』の公式サイト
(1)安全な場所に車をとめ、エンジンを切る
(2)負傷者を確認し、必要な対応を行う
(3)警察に報告する
(4)事故相手の情報や事故現場の情報を集め、保存する
(5)保険会社または保険の取扱代理店に連絡する
(6)事故車を修理に出す
(7)病院にかかり、医師の診断を受ける
(8)示談を行う

Q.“当て逃げ”をするか、適切な対応をするかで罪の重さが変わったりするのでしょうか。

牧野さん「物損事故を起こした場合でも、道交法上の危険防止措置義務および報告義務を果たせば、基本的に罪には問われませんが、これらの義務に違反すれば、危険防止措置義務違反の場合では1年以下の懲役または10万円以下の罰金、報告義務違反の場合では3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金の刑事罰が科される可能性があります」

Q.仮に“当て逃げ”をしてしまったと分かりながら逃走したとします。後日、発覚する可能性はどれぐらいなのでしょうか。

牧野さん「接触された車両ボディーの傷跡の箇所に、接触した車両ボディーの塗装などが残っており、メーカーや車型を自動車メーカーに照会することにより特定することができます。また、接触した車両の傷跡も残っていれば、これらが証拠となり、発覚しない可能性は非常に低いと思われます」

オトナンサー編集部

“当て逃げ”はどのような罪になるのでしょうか