飲食店を選ぶ際、「おかわり無料」を重視する人もいるだろう。しかし、弁護士ドットコムに相談を寄せた人は「おかわり無料のスープバーが空っぽのまま、入店から退店まで補充されなかった」との不運に見舞われてしまった。

相談者が注文後、スープバーに行くと「すでに中身が空でした」という。そこで、店員に伝えると「今用意しています、しばらくお待ちください」と言われたまま、退店するまでの約45分、補充されることはなかったそうだ。

相談者はおかわりが無料であることから同店を選んだのに、一杯も飲めなかったことに強い憤りを感じている。このような場合、返金を求めることはできるのだろうか? 大橋賢也弁護士に聞いた。

●返金を求めることはできる?

——「スープおかわり無料」を信じてお店を選んだのに、スープ空っぽで補充もされなかったそうです。この場合、返金を請求できるのでしょうか? 

スープおかわり無料」サービスでは、大きくわけて「スープおかわり無料がセット料金に含まれる」と「スープおかわり無料がセット料金に含まれず、加算される」、2つのケースがあります。この2ケースで、それぞれどの部分について返金を求めることが可能なのか検討しましょう。

まず1つ目の「スープおかわり無料がセット料金に含まれる」ケースを検討します。

このケースでは、客と飲食店との間で、飲食物提供契約(おかわり無料のスープ付)が締結されています。飲食店は、客におかわり無料のスープを含めた飲食物を提供する債務を負い、客は、飲食店に代金を支払う債務を負うことになります。

客が、飲食店に対し、スープの補充を依頼したにもかかわらず、飲食店が、スープを補充しない場合、その債務不履行が、「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」以外、客は、飲食物提供契約を解除することができます(民法541条)。

——今回のように「おかわり自由のスープバーがある」と宣伝しておきながら、スープバーコーナーにスープを用意せず、客から依頼されたにもかかわらず、スープを補充しなかった場合はどう考えられますか?

その場合、店の債務不履行は、「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」とは言えないでしょう。

したがって、客は、飲食店の債務不履行を理由に、飲食物提供契約を解除することができると考えます。客が解除権を行使した場合、「各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う」ことになります(民法545条1項本文)。

つまり、客は、飲食物を飲食店に返還し、飲食店は、客に代金を返金することになります。ただし、客が、既に食べ終わった分については原状回復ができないので、客にはその分の価格返還義務が生じ、結果的にはおかわり無料のスープ代金相当額しか返金されない可能性もあります。

——では、もう1つのパターンについて教えてください

2つ目は「スープおかわり無料がセット料金に含まれず、加算される」ケースです。

このケースでは、客と飲食店との間で、飲食物提供契約(おかわり無料のスープを除く)及びおかわり無料のスープ提供契約が締結されています。

客は、スープおかわり無料の加算部分を支払っているにもかかわらず、飲食店からスープの提供を受けられなかったわけなので、おかわり無料のスープ提供契約を解除し、加算部分の返金を求めることができます。

なお、客が、このような場合に、おかわり無料のスープ提供契約だけでなく飲食物提供契約も解除することができるかどうかは、別途問題になり得ます。

【取材協力弁護士】
大橋 賢也(おおはし・けんや)弁護士
神奈川県立湘南高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン
事務所名:川崎エスト法律事務所
事務所URL:http://kawasakiest.com/

「スープバー」が空っぽ、返金請求できる? 店員は「いま用意してます」→結局一杯も飲めず