再建を託された阿部監督の意向はどういったものになるだろうか(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 2年連続のBクラスに低迷したことで、来年まで契約を残していた原辰徳監督が辞任となった巨人。来季からは阿部慎之助新監督が就任することが決まり、吉村禎章氏が編成本部長に就任するなど体制が変わったこともあって、ドラフトについても会議直前まで決まらないと報道されている。

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 今年の成績だけを見れば投手陣の補強が最優先となりそうだが、主力の年齢構成を考えると野手も補強ポイントは少なくない。特に内野は坂本勇人が1年を通じての活躍が難しくなっており、吉川尚輝も若手とは呼べない年齢となっている。更に主砲の岡本和真についてもWBCでの活躍から、メジャー志向が出ているとも言われており、ここ数年で世代交代を進める必要がある。昨年は上位2名で外野手を揃えたが、今年は2位までに投手と野手を1人ずつ獲得する方が良いのではないだろうか。

 まず投手は左の先発が外国人頼みということもあるため、左腕のローテーション候補となる選手を狙いたい。大学生では細野晴希(東洋大)、武内夏暉(国学院大)が双璧で、高校生では前田悠伍(大阪桐蔭)が筆頭候補となるが、スケールを考えるとやはり細野を狙いたいところだ。U18侍ジャパンとの壮行試合では本拠地の東京ドームで最速158キロをマーク。その後の秋季リーグ戦はインフルエンザで出遅れた影響で本調子ではないが、それでも防御率は1.29(10月13日終了時点)と安定した成績を残している。四死球と球数の多さを指摘する声もあるが、勝負所で自滅するようなこともなく、長いイニングを投げても球威が落ちないのは大きな魅力だ。内海哲也以来となる左の絶対的なエースとなれる素材なだけに、競合覚悟で狙いたい。

 武内、前田も最初の入札で指名される可能性が高く、外れた場合は他の選手から選ぶ必要が出てくる。同じ左腕では古謝樹(桐蔭横浜大)、高太一(大阪商業大)、東松快征(享栄)などの名前が挙がるが、スケールを重視するのであれば高が面白い。好不調の波は大きいものの、良い時のボールの勢いは細野に次ぐレベルであり、コントロールも安定している。左腕にこだわらないのであれば桑田真澄ファーム総監督とタイプの似た完成度の高い下村海翔(青山学院大)やスケールの大きさが魅力の西舘昂汰(専修大)なども候補になるだろう。

 2位で狙う内野手としては明瀬諒介(鹿児島城西)と広瀬隆太(慶応大)の2人を挙げたい。ともに右のスラッガーで、粗さはあるものの高い弾道と飛距離は大きな魅力である。特に明瀬は肩の強さも申し分なく、サードでしっかり鍛えたい素材である。秋広優人浅野翔吾と高校卒の野手が育ってきているだけに、さらに明瀬が加われば野手陣の見通しは一気に明るくなるだろう。

 野手でもう一つ気になるのが捕手だ。大城卓三岸田行倫の2人は安定しているが、24歳以下の若手捕手で支配下の選手は山瀬慎之助しかいない。育成で2年目の大津稜也は楽しみな存在ではあるが、1人くらいは将来の正捕手を担えそうな素材を獲得しておきたい。3位以降で狙えそうな選手として面白いのが鈴木叶(常葉大菊川)だ。夏は故障で不完全燃焼に終わったものの、下級生の頃からその強肩と柔らかいバッティングは評判になっていた選手である。フットワークが良く、仮に山瀬と大津との争いに敗れたとしても他のポジションで勝負できそうな雰囲気があるのも魅力だ。

[文:西尾典文]

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。

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