9月の『明治安田生命Jリーグ KONAMI月間ベストゴール』が発表され、J2はFC町田ゼルビアに所属するDF鈴木準弥が受賞した。

 受賞したのはJ2第36節V・ファーレン長崎戦の45+6分に決まった直接フリーキック。約30メートルの距離から右足を振り抜き、ゴールネットを揺らした。「中途半端なクロスでカウンターを食らうより、思い切って狙った方がいいかなと思って蹴った結果だと思います」という見事な直接フリーキックを振り返ってもらった。

取材・文=三島大輔(サッカーキング編集部)

――まずは9月の『明治安田生命Jリーグ KONAMI月間ベストゴール』受賞おめでとうございます!
鈴木 自分の得意なフリーキックで決めたゴールが、評価していただけてすごく嬉しいです。

――長崎戦で決めた素晴らしい直接フリーキックを改めて振り返っていただけますか?
鈴木 長崎のGK波多野豪選手はすごく身長が大きく、距離もあったのでゴールが小さく見えていました。ただ、一歩、二歩ですけど波多野選手がゴールラインから前に出ていたことによって、今回のコースで決めることができたと思います。蹴った瞬間、波多野選手が少しだけ左に傾いていると思うのですが、これは壁に入った選手たちがうまくボールを隠してくれていたからです。また時間帯が前半アディショナルタイムということで、中途半端なクロスでカウンターを食らうより、思い切って狙った方がいいかなと思って蹴った結果だと思います。

――決まった瞬間はどんな感情でしたか?
鈴木 距離もありましたし、壁もあったので、最初見えなくて(笑)。少し遅れて「あっ、入った!」という感じでした。最近はフリーキックの練習もしていたので、本当に嬉しかったです。

――名手・鈴木選手は、フリーキックの際にまずどこを見るのでしょうか?
鈴木 まずは直接狙えるか、狙えないか。次にGKの意識です。直接か間接か、ポジショニングを含めてどう動くのかを見ています。直接狙うとなればボールをセットして、GKが見えづらいように壁を調整して、蹴るコースを決めるという流れです。

――鈴木選手はキックの精度が非常に高いですが、学生時代はどのような練習をしていたのでしょうか?
鈴木 自分が小さい頃はフリーキックの名手がたくさんいたので、そういった選手たちを見て真似をしていました。海外だとロベルトカルロスベッカムロナウジーニョ。国内だと中村俊輔さん、小野伸二さん、小笠原満男さん、遠藤保仁さん、中村憲剛さん。「フリーキックといえばこの人!」という選手がたくさんいたので、その蹴り方を自分で真似して「こういう蹴り方だから、この軌道になるのか!」と、遊びの中でも考えて練習していました。

――特に参考にしていた選手はいますか?
鈴木 中村俊輔さんは結構見ていましたね。セルティック時代のマンチェスター・ユナイテッド戦の直接フリーキックは「どうしてこの距離で、この軌道になるのか」と見て研究していました。

――右利き・左利きの違いはありますが、今回の直接フリーキック後のフォームは中村俊輔さんを彷彿とさせるものがありました。
鈴木 蹴った後に少し横にジャンプして軌道を見る姿ですよね。蹴った後に前に行ったり、後ろに行ったり人によって全然違います。中村俊輔さんは意識していたのかもしれないです。

――その鈴木選手から見て、今までのチームメイトで「この選手のキックはすごかった!」という選手はいますか?
鈴木 FC東京のレアンドロ選手はすごかったです。僕は全身を使って蹴るのですが、レアンドロ選手は軽々と突き刺さるようなボールを蹴っていました。セットプレーの練習など一緒にやりましたけど、再現性が高い。自分とは違う蹴り方でボールの質も違って、スパスパ決めていく姿を見ていたので、すごいなと思いました。

――ちなみに右サイドバックというポジションになったのはいつ頃なのでしょうか?
鈴木 プロに入ってからです。大学時代まではセンターバックの選手でした。ただ、身長もそこまで高くはないので、屈強で大きい選手と勝負していくのは難しいと感じていて、自分の中でもプロになるならサイドバックと思っていました。

――鈴木選手はロングスローも得意としていますが、投げ始めたのもプロに入ってからでしょうか?
鈴木 大学時代に部活で体力テストがありました。50メートル走や立ち幅跳びなどある中で、スローインがあって、1年生の時に全学年の中でトップになりました(笑)。「飛ぶんだな〜」とは思っていましたけど、ポジションがセンターバックだったので投げる機会もなく。ブラウブリッツ秋田ではロングスローを戦術の一つとして取り入れていて、「投げられる?」と聞かれて、そこからですね。

――いよいよリーグ戦は最終盤です。自力でJ1昇格・J2優勝を決められるポジションにいます。
鈴木 J1昇格・J2優勝が頭の中をよぎらないかと言われたら、決してそうではありませんが、まずは次の試合で勝つこと。試合に出場することを目標に、日々の練習に臨んでいます。町田は目の前の一つひとつの試合に臨んでいくという気持ちが強いチームです。本当にそこに尽きると思います。

――秋田時代にJ2昇格・J3優勝を経験しています。プロの中でもタイトル獲得は限られた選手しか体験できないことだと思います。
鈴木 今回J1昇格・J2優勝を成し遂げることで、人生が変わる可能性が大きくなります。秋田でJ2昇格・J3優勝を経験し、J2で試合に出続けていたからこそ、FC東京から獲得オファーをいただけました。FC東京ではなかなか試合に出ることはできませんでしたが、J3で戦っている当時は、その後J2、J1でプレーできるなんて考えてもいませんでした。よりレベルが高いところでプレーすれば、人生が変わるチャンスがあることを経験しました。簡単なことではありませんが、その可能性を自分自身が感じたので、それをもう一回掴みに行きたいですし、若い選手も多いので感じてほしいと思っています。そういった意味でも、J1昇格・J2優勝はなんとしてでも達成したいと思っています。

――では、最後にファン・サポーターへメッセージをお願いします。
鈴木 残り試合は少ないですけど、チームとファン・サポーターの皆さんが一体となり、町田らしく戦うことで目標達成に近づき、それを成し遂げられると思います。共闘して、今まで以上の力強さを見せていきたいです。僕自身もフリーキックだけではなく、アシストや守備で体を張るプレーで、チームを勝たせられる存在になっていきたいと思います。みんなで力を合わせていきますので、応援よろしくお願いします!

[写真]=J.LEAGUE