プロ野球セ・リーグクライマックスシリーズ(CS)の「ファイナルステージ」が、10月18日から始まります。今年は18年ぶりにセ・リーグ優勝を達成した阪神タイガース日本シリーズ進出に大きな期待が寄せられています。

 一方、阪神タイガースリーグ優勝を決めた9月14日、20人超が大阪・道頓堀川に飛び込んだと新聞やテレビが報じました。クライマックスシリーズの結果次第では、道頓堀川に飛び込む人が出てくるかもしれません。

 そもそも、川に勝手に飛び込んだ場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

場合によっては「軽犯罪法違反」などの可能性

Q.川や沼などに勝手に飛び込んだ場合、法的責任を問われる可能性はありますか。

佐藤さん「川などに飛び込むことを禁じる法律はなく、道頓堀川への飛び込みが問題視されることが多い大阪市でも、川などへの飛び込みを禁じる条例はありません。従って、単に川に飛び込んだだけであれば、通常、法的責任を問われることはありません。

ただし、飛び込み方によっては、罪に問われることもあるでしょう。例えば、全裸で川に飛び込むような場合には、公然わいせつ罪に問われる可能性があります(刑法174条)。また、警察官の制止を聞かずに、近隣に迷惑をかけるほどの異常な大声を出しながら飛び込むような場合には、軽犯罪法違反に問われる可能性も考えられます(軽犯罪法1条14号)」

Q.阪神タイガースセ・リーグ優勝を決めた9月14日、警察の警備をかいくぐって道頓堀川に飛び込んだ人がいたようです。この場合、公務執行妨害罪に問われる可能性はありますか。

佐藤さん「公務執行妨害罪は、『公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行または脅迫を加える』と成立します(刑法95条1項)。そのため、暴行や脅迫を用いることなく、単に警備をかいくぐって川に飛び込んだとしても、公務執行妨害罪に問われる可能性はありません。

ただし、警備をかいくぐろうとした際に、警察官を突き飛ばすなどの暴行を加えると、公務執行妨害罪に問われる可能性があります」

Q.川に飛び込もうとしている人がいたときに飛び込むようにあおった場合、あおった人が法的責任を問われる可能性はありますか。

佐藤さん「先述のように、川に飛び込む行為自体が、法律や条例で規制されていないため、川に飛び込むようにあおったとしても、法的責任を問われることはないでしょう。

川に飛び込んでも法的責任が生じる可能性は低いですが、命を落とすケースがあり、非常に危険です。注意が呼び掛けられている川には決して飛び込まないことはもちろん、川の周辺にいる人は飛び込みを促すようなあおりをしないことが大切です」

Q.川などに勝手に飛び込んだことで法的責任を問われた事例について、教えてください。

佐藤さん「川に勝手に飛び込んだケースではありませんが、男が泥酔した知人を川に投げ落として死亡させたとして、殺人容疑で逮捕された事件があります。その際、男と一緒に現場にいた男女2人も知人を救助しなかったとして、重過失致死などの容疑で逮捕されています」

 川に飛び込むと命を落とす危険があるので、絶対にやめましょう。

オトナンサー編集部

大阪市の道頓堀川に架かる戎橋に集まった阪神ファンと警備する警察官(9月14日、時事通信フォト)