不動産選びにおいて、物件視察は最も重要なプロセスです。実際に自分の目で視察し、その不動産を購入すべきかどうかを判断する必要があります。なかには、インターネットの情報だけではわからない「穴場物件」が見つかることも……。本記事では、不動産投資家のアユカワタカヲ氏による著書『1000年使える不動産投資最強成功術 失敗しない人だけが知っている不動産経営の定番』から、よい不動産を購入するために物件視察でチェックすべきポイントについて解説します。

不動産投資用物件の現地調査、5つのポイント

いい不動産業者と出会うことができ、数多くの物件資料に目を通し、数字上の分析を行い、いい物件と出会うことができたら、さあいよいよ現地調査に向かいます。現地調査のポイントをお伝えいたします(略して「現調」ともいいます)。物件視察のポイントは5つあります。順番に見ていきましょう。

1.物件視察は1人で行う

是非、物件視察は1人で行ってください。これはご夫婦で視察してはいけないということではありません。不動産業者と一緒に行かないでくださいという意味です。もちろん業者はあなたに物件を売ることを目的にしています。ですから、あなたに全身全霊を捧げて物件紹介するでしょう。

不動産会社の会議室で、まずは珈琲を飲みながら当日の視察予定を説明。担当者が運転する専用車で、いくつか視察物件を回ります。そして数時間後、不動産会社の会議室に戻ってきて、珈琲とケーキをいただきながら、「どの物件がお気に召されました?」となります。これでは、冷静に物件を判断することはできません。

もし、不動産会社の担当者による現地視察を断れなかったとしたら、後日ご自身で改めて現調するようにしてください。その場合、まず何を見るのか? 物件から見るのではありません。

2.まずは、駅を視察する

最初に見るのは、「駅」です。何故ならば、不動産は必ず「駅」がシンボルになっているからです。不動産はどんな物件であっても、「〇〇駅の物件」という見方をされます。ですから、その駅がどんな駅なのかを調査してください。

24時間のスーパーがあれば、24時間動いている駅だと分かります。駅前にネイルサロンが多くあれば、女性に支持されている街だということも分かります。あなたの物件の入居者をイメージしてください。

3.物件まで自分の足で歩いてみる

駅の視察が終ったら、ご自身の足で物件まで歩いてみてください。マイソク(販売図面)には駅から徒歩〇分と書かれています。その徒歩〇分というのは、駅から物件までの距離を単純に1分80メートルで割ったものです。ですから、実際に歩いてみると遠く感じるかもしれません。逆もあるかもしれません。

ですから、ご自身の足で歩きながら、物件の近所に何か変な建物がないか? 住環境にマイナスをきたすものはないかをよく視察してください。いよいよ、購入検討物件が見えてきました。

4.物件の外部、内部を視察する

さあ、物件の外装、内装をチェックしましょう。

「掃除は行き届いていますか?」「外装はどうですか?」「廊下は?」「階段は?」「エレベーターは?」「掲示板にどんなお知らせが掲示されていますか?」「部屋の中に汚れは?」「水まわりは?」「セキュリティーは?」「監視カメラは?」「オートロックですか?」といった細かいところまでチェックしてください。

そして最後に忘れてはならないのが……

5.最後は、郵便ポスト全調査!

郵便ポストをチェックしてください。ポストの有無を調べるのではなく、マンション、アパートすべてのポストを見てください。どこかガムテープが貼ってある部屋はありませんか? このガムテープが意味するものは、「空室」です。

ポストを見て、ガムテープの数を数えることで、その不動産の大まかな現在の入居率を知ることができます。この入居率の把握が大切です。その入居率で掛け目を入れたとしても、その物件はいい数字の物件でしょうか? 

そして余裕があれば、あなたが購入を検討している物件以外の隣の物件、隣の隣の物件のポストもチェックして、そのエリアの入居率を調べてください。あなたが投資しようとしている街の平均入居率はどのぐらいですか? あなたは、その街の成長に投資いたしますか?

空室率80%の木造アパートを購入したワケ

ここで私の体験談をお伝えしたいと思います。2014年、私自身が現地調査に行ってきた木造アパートの話です。場所は、神奈川県川崎市です。川崎駅国立駅を結ぶJR南武久地駅から徒歩6分の物件で、南武線の線路沿いの物件でした。

インターネットの不動産情報サイトで物件情報を見つけ、問い合わせたところ、少し魅力を感じ、実際に視察へ足を運びました。

まずは、駅視察、南武線久地駅」。何もない、実に閑散としている駅でした。24時間営業のスーパーもコンビニもありません。ネイルサロンの影形もありません(笑)。ちなみにウィキペディアで「久地駅」を調べてみると、1日の乗降客数が3万人を切っていました(汗)。

次に、実際に1人で物件まで歩いていきました。物件周辺の環境はどうなのか? 嫌悪施設はないか? 歩き進むと、幹線道路があるは、高速道路が走っているわ、閑静な住宅街とは程遠い街並みでした(笑)。

そして建物視察。昭和53年築、大規模修繕の記録もない木造アパートです。外壁は剥がれ落ち、廊下にはゴミが散乱。階段のコンクリートもひびが入っています。「昭和のボロアパート」という称号を与えたいです(笑)。

最後のチェック項目、ポストです。マイソクによると、このアパートは1階7室、2階7室の計14室。現在空室は3室。14室中の11室が入居している、はずでした。ポストを見て目を疑いました。14個あるポストのうち10ポストにガムテープが貼られていました。つまり、14室中、空室が10室、4室に入居者がいると推察できる物件だったのです。

結論から申し上げます。私はこの「昭和のボロアパート」を購入いたしました。「え? なんで?」と思われるかもしれません。

この後、隣接するアパート、近隣のマンション全てのポストを見て回りました。いずれの物件の入居率も、90%から100%の成績だったのです。

「何故だ? 線路沿い、古いというだけで、そんなに悪い成績になるだろうか?」

私は原因を追究いたしました。すると地元の客付け不動産会社から貴重な情報を得ることができたのです。「あのアパート、ずっと空室になっているけど、ずっと募集もされてないよ」という話。

つまり、前のオーナー様が募集活動を全くやらず、空室になってもほったらかし状態だったのです。ということは、安く買えるということが前提にはなりますが、「この物件を手に入れてリフォームてしっかり入居者募集をすれば、周りの物件のように90〜100%の入居率を獲得することができる」という仮説が成り立ちました。

そこで私は指値を入れた買付証明書を入れ、ほぼ希望額でこの物件を手にすることができました。所有権を手にして半年後、不動産管理会社、客付け会社のおかげで見事満室物件に生まれ変えさせることができました。物件を最初に視察する瞬間から、あなたの不動産賃貸業の仕事はスタートしているといっても過言ではありませんよ。

※本記事は『1000年使える不動産投資最強成功術 失敗しない人だけが知っている不動産経営の定番』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

(※写真はイメージです/PIXTA)