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注目あつめる日本版ライドシェアリング

ライドシェアリングといえば、アメリカのウーバーやリフトを筆頭に、世界各国で普及が進んでいる交通手段である。

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ここへきて、日本版ライドシェアリングの議論が一気に高まってきた。

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岸田首相が2023年10月20日に招集される臨時国会の所信表明で、日本版ライドシェアの検討について明らかにすると、一部報道。この記事ではライドシェアの基本を解説する。    シャッターストック

岸田首相が2023年10月20日に招集される臨時国会の所信表明で、日本版ライドシェアの検討について明らかにすると、一部報道があった。

また、大阪府の吉村知事は2023年10月17日に、大阪・関西万博を見据えて2024年から府内でライドシェア導入を準備するとの発表をしている。

その他、河野デジタル担当大臣もオンライン会見で日本版ライドシェア導入検討に対して積極的な姿勢を見せたり、また一部の市町村の首長でつくる会などでも日本版ライドシェア導入に向けた提言をしているところだ。

一方で、タクシーやハイヤーの事業者でつくる協会や団体などでは、日本版ライドシェアの早期導入に対して慎重な姿勢を見せたり、または反対の姿勢を示す場合もある。

なぜこのタイミングで日本版ライドシェアの議論が盛り上がっているのか?

また、そもそもライドシェアとはどういうもので、その「日本版」とはどういうこと指しているのか?

ライドシェアとカーシェア 違いと共通点

概念としてのライドシェアは、ライド(移動)をシェアするのだから、日本でも地方部などで普及している「乗り合いタクシー」などもライドシェアリングの仲間である。

また、国や地域によっては、日本ではカーシェアリングカーシェアと略されることが多い)と呼んでいる分野をライドシェアと呼ぶ場合もある。

その上で、日本での、カーシェアとライドシェアの違いがわからない人もいるかもしれない。

これら2つの(日本における)最大の違いは、カーシェアは自分で運転するが、ライドシェアは乗客として乗るので自分では運転しないことだ。

だが、カーシェアとライドシェアで共通点もある。

それが、ユーザーは、スマートフォンのアプリでサービスが完結できることだ。

見方を換えると、スマートフォンというパーソナルユースの情報端末が普及したことで、
ライド(移動)をシェアする様々な手段が一気に広まったと言えるだろう。

ライドを求める需要側と、ライド用のハードウェアを持つ側を、サービス事業者がスマートフォンやパーソナルコンピューター上のアプリやソフトウエアを使って、マッチングするモデルなのである。

移動のみならず、民泊やレンタルオフィスなど、シェアリングエコノミーという概念の中にライドシェアリングが含まれる形だ。

ライドシェア アメリカではどう拡大?

こうした中で、2010年代始めから半ばにかけて、アメリカで個人が所有する車をタクシーのようにして使うタイプのライドシェアが始まった。

最初は、一種のボランティア活動の部類という形態で、乗車の対価を支払う営業行為ではなく、乗車した人が運転してくれた人に対する寄付としていた。

この時点で、アメリカのタクシー事業者の中では、実質的な違反行為という反対の声が上がった。

当初は、「Lyft(リフト)」や「Uber(ウーバー)」がカリフォルニア州サンフランシスコ周辺で活動を始め、その後に全米各地の都市の警察を直接交渉しながら、活動のエリアを段階的に拡大していった。

その過程で、ボランティア活動から事業化への転換を各都市の行政から許可を得ていくというプロセスであった。

ただし、カーシェアに参加するドライバーの運転の質の問題、賃金を含めた労働環境の問題、そして地域によってはタクシー事業者からの反対が強くライドシェアが禁止になるなど、ボランディア活動から事業化を経たこれまで約10年間で、ライドシェアを取り巻く環境はいろいろ変わってきたと言える。

また、中国、インド東南アジア、そして欧州等でもライドシェアが急速に広まったが、それぞれの国や地域でライドシェアに関する規制などは違いがある。

こうした海外でのライドシェア普及の動きを受けて、日本でも2010年代後半頃からライドシェア導入に向けた模索が始まっていた。

日本版ライドシェアとは何か?

日本では短期間の実証実験を行ったり、または国土交通省が旅客に関する法律に対しての一部解釈を変更する通達を出すなどして、複数のベンチャーが個人所有のクルマを使う日本版ライドシェア事業の準備を進めたが、現状ではほとんど普及してないのが実状だ。

背景にあるのは、現行での自家用有償旅客運送とのすみ分けの難しさだ。

交通手段がほとんどないような交通空白地域や、福祉を目的として、地域住民・交通事業者・自治体などが協議会をつくり、各方面の合意があり、それを国が認める場合、いわゆる白ナンバーで運賃を取り、二種免許がないドライバーが運転することが可能となる。

これが、自家用有償旅客運送だ。

コロナ禍後の観光需要拡大が、日本版ライドシェアを求める大きな声であり、自家用有償旅客運送の目的である地域の過疎化・高齢化とは、目的が全く違う。

また、地方部で日本版ライドシェアを求める声もあるが、自家用有償運送を地域によってどこまでカスタマイズするのかが、今後の論点になるだろう。

いずれにしても、それぞれの地域が真剣に地域の未来について考えることが、日本版ライドシェア導入の議論の前提であるべきだ。


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